600円以下の味噌は「裏面」を見たほうがいい…見た目は同じでも栄養価がレベル違い「本当に効く味噌」の選び方

2025年4月11日(金)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

心身ともに健康で長生きするには何を食べればいいのか。「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さんは「味噌がおすすめだ。季節やシチュエーションによって、効果的な味噌の種類や食べ方がある」という。ライターの笹間聖子さんが聞いた——。
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■季節の変わり目で不調を感じるときは…


前編から続く)


待ちかねた桜が花開く一方で、春は卒業、入学、転勤、転職など環境の変化が多く、心身に不調をきたしやすい時期だ。発酵食品の正しい知識や楽しみ方を広める「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子先生は、そんな不安定になりやすい時期におすすめの食べ物は断然味噌だと言い切る。


「特に白味噌がおすすめです。京都の西京味噌もいいですね。白味噌にはGABAが多く含まれ、ストレス緩和やリラックス効果を発揮してくれます。ブドウ糖も多く、シャキッと脳を働かせてくれる効果もあります」


イチオシの調理法は、定番の味噌汁。具材は、神経伝達に関与する「グルタミン酸」が多く含まれる、昆布やトマト、玉ねぎ、ブロッコリーがおすすめ。自律神経を整え、よりリラックス効果が高まるという。また、「疲れている」と感じたときは、ビタミンやミネラルが豊富で、疲労回復や免疫力向上のサポートをしてくれる春野菜と合わせるのもいい。


ちなみに味噌ではないのだが、春の不調の代表格である花粉症には、「にごり酢」をぜひと藤本先生。酢の中でもにごり酢に多く含まれる酢酸菌が、花粉症やアレルギーに有効な免疫細胞の働きを高め、症状を和らげることが近年わかってきたという。おすすめの調理法は、味噌と合わせる「酢味噌」だそうだ。


画像提供=藤本さん
「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さん - 画像提供=藤本さん

■夏、秋、冬に「おすすめの味噌」


では、春以外の季節にぴったりの味噌や味わい方はどんなものか。聞いてみたところ、まずこれからの暑い時期には、汗をかいて塩分が不足しがちなので「減塩でない味噌」を選ぶのがポイントだという。そして、秋も最近は暑いので、「減塩でない味噌」を選ぶのに加えて、「ぜひ味噌蔵に足を運んで欲しいですね」と藤本先生。


なぜなら秋は、暑い夏に発酵・熟成が進んだ香りのいい「蔵出し」味噌が出てくる季節。一年で一番おいしく、身体にもよい味噌に出会いやすいタイミングなのだそうだ。


寒い冬はというと、「代謝を上げる」という意味で、アサリ、シジミ、ハマグリなど貝類を使った味噌汁がおすすめだという。貝類に含まれる「コハク酸」という成分に、食べたものをエネルギーに変える際に働くアミノ酸が含まれているため、代謝促進につながるからだ。


味噌汁の具材というところから、季節に関係なく、特に女性におすすめの味噌汁の作り方も教えてもらった。美容を意識するなら、細胞が生まれ変わるときに必要なイノシン酸、ジメチルアミノエタノール(DMAE)を含む具材を味噌汁に入れると良いそうだ。例えば、カツオ、イワシ、煮干しなど魚出汁を使ったり、鮭やサバを味噌汁に入れたりしてもおいしい。


■現在の形になったのは室町時代


ここまで、季節に合わせた味噌の摂り方を解説してきたが、そもそも味噌とは、どんな食べものなのだろうか。味噌のルーツは、紀元前の中国・周の時代、肉や魚を保存するために塩を混ぜた「肉醤(ししびしお)」「魚醤(うおびしお)」などの発酵食品だといわれている。


その後、農耕が主流になるにつれて、穀物と塩を混ぜた「穀醤(こくびしお)」が誕生。この製法が奈良時代、仏教とともに日本に伝わったのが日本の味噌のはじまりだ。「穀醤」は、今でいう醤油と味噌が一体となったものだったが、室町時代、底に溜まる液体が醤油、個体が味噌として製造が分かれたそうだ。


また、日本では奈良時代から蒸した米に麹菌を付着させ、繁殖・発酵させた「米麹」から酒を作る文化があったため、これを味噌、醤油作りに応用することで、現在につながる、日本独自の味噌文化へと発展していった。


画像提供=藤本さん

味噌は1300年にわたって日本人の食生活を支えてきた


- 画像提供=藤本さん

■「スーパーフード」と称されるワケ


現在の日本の味噌は大きく4種類に分類される。大豆と米麹をあわせて発酵する米味噌、大豆と麦麹を合わせて発酵する麦味噌、水、豆、塩だけを長期発酵する豆味噌、これら3種類の味噌をアレンジする調合味噌だ。


いずれの味噌にも発酵の過程で乳酸菌と酵母菌が含まれており、これらの菌が腸内の免疫細胞を刺激、免疫力を高めてくれる。同時に大豆が、便のかさを増やして排便を促したり、腸内細菌の餌となって善玉菌を増やすなど、腸内環境を整える働きをする。かつ、発酵することで粒子が細かくなっているため、腸に負担をかけずに消化・吸収されやすい。


これらすべての特徴を持っていることから、味噌は健康に欠かせない「スーパーフード」と称されるのだ。


少し味噌のことがわかってきただろうか。しかし、いざ、味噌を購入へスーパーに出向くと、種類も価格も実にバラエティ豊かな商品があることに気づくはずだ。購入の際には、どんなことに気をつけたらいいのだろうか。


■購入時に注意したいポイント


藤本先生のおすすめは、麹の割合が多い味噌を選ぶこと。麹の割合が多い=味噌の中にいる微生物の割合も多くなるからだ。麹の割合は、「○割味噌」という表記でされているそうで、そのなかでも「10割以上」の数字が入っているものを選ぶといいという。


「10割」とは、発酵する素材(米味噌なら大豆)と同量の麹が入っているという意味。「20割」だと、素材の2倍麹が入っているということになる。数字が高くなればなるほど、麹由来の栄養が高くなるそうだ。


一方で、スーパーでは、「2年熟成」「3年熟成」などの味噌も見かける。少し割高な印象もあるが、選ぶべきなのだろうか。


「味噌は発酵期間によって栄養分も変わっていきます。一般的な味噌の発酵期間である1年ものに比べて、2年、3年熟成すると、アミノ酸やペプチドが多くなるので旨味が強くなり、疲労回復もしやすくなります。お財布に余裕があればおすすめですね」


写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mizoula

■違いは「生きた微生物の量」


また、2年以上発酵した味噌には「熟成ペプチド」という成分が多く、放射性物質を体内から排出しやすくする効果も確認されているそうだ。


さらにもうひとつ、購入時に注意したいポイントがある。米、大豆、麦、麹、塩以外の添加物がなるべく少ないものを選ぶということだ。添加物が入っているものは、発酵の時間が短いものが多く旨味が少ないため、出荷前に旨味を添加していることが多いという。このため発酵による栄養成分も少ない可能性が高いのだ。ただし、酒精、焼酎なら大丈夫。この2つは、なるべく発酵のスピードを緩めるために添加しているものだからだ。


加えて、そのような添加物の多い味噌の中には、加熱殺菌して発酵自体を止めてしまっている商品も。加熱殺菌をされているかを見分けるコツは、値段だ。現在、手作りや昔ながらの製法の味噌の価格は1パック400g、小さくて300gで600円〜700円だ(あくまでも目安にしてほしい)。それ以下のものは、素材表記に注意して購入しよう。添加物が多いものは避けたほうがいい。


付け加えて、値段が安くても、流通が少なく地元でしか買えない「いい味噌」はある。出張先や旅先で味噌蔵に立ち寄り、そういった地方味噌を買ってみるのも、味噌の楽しみのひとつかもしれない。


■健康への第一歩は「毎日食べること」


ここまで、季節によっておすすめの味噌や味わい方、選び方を伝えてきたが、藤本先生によると、「大前提としてどんな味噌であれ、毎日摂ることが健康には重要」だそうだ。そして、その味わい方としては、具材を変えて楽しめる味噌汁がやっぱりおすすめとのこと。


実際、京セラ・KDDI創業者であり、90歳で逝去した稲盛和夫氏は生前、シンプルな食生活を重視し、朝食に味噌汁を欠かさなかったことで知られている。もしかしたら味噌汁が、稲盛氏の健康長寿と卓越した経営判断を支えていたのかもしれない。


写真=共同通信社
京セラやKDDIを創業し、日本航空を再建した稲盛和夫氏。「経営の神様」と呼ばれた=2011年1月、東京都品川区 - 写真=共同通信社

毎日の味噌汁には、飽きがこず、がんばらずに続けられる味を選びたいもの。そうなると、「自分が食べ慣れている味噌」が一番だそうで、だいたいは実家で両親が使っていた味噌に原点回帰するのだとか。


味噌汁を作るのが面倒な人は、お湯で溶かして飲むだけでもOK。もし味が物足りなく感じたら、顆粒出汁を入れたり、だしも面倒な人は、「米麹」と「麦麹」など、2種類以上の麹で仕込んだ味噌を使ったりするとよい。微生物が増え、旨味も多くなるので、出汁なしでも味わい深くなる。忙しい人にうれしい時短テクニックだ。


■コレステロール値を下げ、がん予防にも効果的


また、味噌汁をつくる際に注意したいのが鰹だしを使う場合。鰹だしと味噌を合わせて時間をおくと、カツオの栄養と旨味を分解してしまう。鰹だしはなるべく食べる直前に味噌と合わせるのがおすすめだ。鰹だしと味噌を一緒に摂ると、細胞の生まれ変わりを促進する効果も発揮してくれ、味の相性も抜群だという。


和食ではなく洋食を味わいたい日には、味噌とマヨネーズを混ぜるだけの「味噌ディップ」に野菜をつけて食べるのも手軽でおすすめ。とにかく、楽に毎日食べ続けよう。


「毎日の味噌汁はがん予防にも効果を発揮するといわれており、エビデンス(※1)となる論文がたくさんあります。味噌に含まれる脂肪酸エステルに発がん抑制効果が期待されるのです。ほかに、味噌に入っている脂肪成分が、血中コレステロール濃度を下げる(※2)という研究もあります」


※1 1981年、国立がんセンター研究所の故・平山雄博士が発表した、「みそ汁が胃がんの死亡率を減少させる」という大規模疫学調査結果ほか多数
※2 辻啓介「血中コレステロール値を改善する大豆・7つの成分」みそ健康づくり委員会『みそサイエンス最前線』1999年、pp.46-52より


■味噌をおいしく食べるコツ


少し手間がかかっても「おいしさにこだわりたい」という人に藤本先生のおすすめの方法がある。1つのタッパーに6種類ぐらいの味噌を並べて保存するのだ。そこから毎日気分に合わせ、数種類の味噌を混ぜて味噌汁に入れると、毎日違う味が楽しめる。「白味噌で甘みを足す」など、自分好みの味にも調節しやすい。


前述の通り、味噌は複数を合わせることで、微生物も旨味も増えるので、いいこと尽くしである。もちろん、面倒くさい人はあらかじめ5種類を混ぜておいても大丈夫だ。


加えて、味噌をおいしく食べるための冷凍についても知っておきたいところ。味噌は加熱殺菌しているものでない限り、冷蔵していてもどんどん発酵が進んでいく。するとだんだん甘みが消えて旨味が強くなる。この「旨味と甘味のバランス」は人によって好みがあるので、「この味が好き」と感じたところで冷凍するといいそうだ。味噌は冷凍しても凍らないので、調理時は普通に使える。


■塩分を気にして飲まないのは「もったいない」


奥深い味噌の世界。最後に、藤本先生にアドバイスを求めたところ、「味噌汁一杯には乳酸菌、ビタミン、ミネラル、たんぱく質、食物繊維などが含まれ、消化しやすい。離乳食から寝たきりの方まで食べられる、ほぼ完璧な食品です」と改めて強調した。続けて、こんなエピソードを教えてくれた。


味噌は昔、「飲みすぎると血圧が上がって良くない」と言われていた時代もあったそうだ。しかし、味噌汁一杯に塩は約1.2g(だし汁130ccに味噌大さじ1/2程度の味付けの場合)と、意外と量は入っていない。現在では、「まったく根拠がない」と証明されているそうだ。「どうしても気になる方は、塩分を体内から排出する働きをするワカメを具材に入れたり、減塩味噌を選んだりしてください。塩を気にして味噌汁を飲まないことは、健康への大きな損失ですから」と微笑んだ。


健康で長生きするために、まずは、「味噌のお湯割り」からはじめてみてはいかがだろうか。


写真=iStock.com/cosa4
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笹間 聖子(ささま・せいこ)
フリーライター、編集者
おもなジャンルは「ホテル」「ビジネス」「発酵」「幼児教育」。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で17年執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。編集者としては、発酵食品メーカーの会員誌を10年以上担当し、多彩な発酵食品を取材した経験を持つ。「東洋経済オンライン」「月刊ホテレス」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆中。大阪在住。
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(フリーライター、編集者 笹間 聖子)

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