食料安全保障への貢献を目指した、持続可能な水産養殖システムを開発~当社技術を生かし、食の安全・安心・おいしさを届ける養殖の実現に向け育成試験中~

2025年4月14日(月)11時0分 Digital PR Platform



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川崎重工は、これまでに培った当社の技術を活用し、食料安全保障への貢献を目指した、持続可能な水産養殖システム(以下、本システム)を開発しています。本システムは、当社がプラント開発で培ってきたろ過と殺菌に関する水処理技術や、船舶および舶用機器、鉄道車両の開発などで培ってきた流体制御のノウハウを活用しています。革新的な本システムにより、ウイルスや寄生虫などの侵入を防ぐとともに、消費地や物流拠点に近い港湾地区や海岸近くでの養殖が可能となり、消費者に食の安全・安心・おいしさをお届けすることができます。
本システムの活用を通じて、美しく豊かな海を守りながら、水産業に関わる方々にとっても、より安全で安心して働くことができる環境を提供することで、水産業の持続的発展にも貢献します。
なお、2022年からこれまで4回の育成試験を実施し、本年1月からは神戸港海域(当社神戸工場岸壁エリア)でトラウトサーモンの育成試験(以下、本試験)を実施中です。

■「MINATOMAE」システム
──食料安全保障への貢献を目指した持続可能な養殖技術 
2050年に向けて世界の人口は100億人に達すると予想され、気候変動などの影響もあり、タンパク質不足が深刻化すると想定されています。日本においても、先進国の中でも低い食料自給率や一次産業の担い手不足、地政学リスク、海洋資源の枯渇、物流課題や輸送コストの増加などの課題が想定され、食の面では持続可能な農業や水産業の構築が急務であると言われています。※1
そうした中、川崎重工は持続可能で環境負荷が少なく、赤潮や水温変化などの外的要因に強い海面閉鎖式の養殖技術を2021年から新規事業開発として進めています。消費地や物流拠点に近いものの、養殖生産地として活用されていなかった港や海岸の近くの海域でも養殖を可能にする技術を、「MINATOMAE」(ミナトマエ)システムと名付けました。本システムを通じて、港湾地区や海岸近くでの水産養殖業の新たな可能性を提案し、今後人類が直面する食料課題解決への貢献を目指します。
※1 参考:食料安全保障強化政策大綱(改訂版) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/nousui/pdf/20231227honbun.pdf

■「MINATOMAE」システムの特長
──環境負荷を抑え、海洋環境を改善し、海岸近くで持続可能な養殖を可能に

①当社保有技術の活用
・CFD解析の応用
当社が長年、船舶や舶用機器、鉄道車両、ガスタービンなどの開発で培ってきた流体解析技術を応用し、CFD(数値流体力学)によって、本システムの生簀(水槽)内の水の流れをシミュレーションしています。水槽内の流れを高い精度で予測したうえで最適な装置配置を決定し、実際の養殖に反映させることを可能としています。

・酸素供給のコントロール
水槽内の酸素濃度を安定に保つために、水処理プラントなどで培った制御技術を活かし、これまで実現が難しかった精緻な酸素供給のコントロール技術を開発しました。センシング技術を用いて水槽内の酸素状況をリアルタイムでモニタリングし、濃度変化に応じて酸素供給量を自動制御します。

・スロッシングの知見
閉鎖式生簀内部の水面挙動予測に、LNGタンクの開発で培った液化ガスタンク内の液体スロッシング(液体が揺れる挙動)の解析技術を活用し、魚の品質に重要となる安定した飼育環境を実現しています。

②占有領域を最小限に、管理された海面での養殖環境を実現
これらの当社の保有技術を活用し、新たに開発した本システムの海面半閉鎖式養殖技術によって、養殖場への外部からのウイルスや寄生虫などの侵入を極力防ぐとともに、海水の水質や酸素供給を最適化します。また、高密度飼育を実現することで、海面での占有領域を最小限に抑えることができます。

③環境への配慮
水質を管理することで無投薬養殖を実現し、環境負荷を最小限に抑えます。また、海水を汲み上げる際に、同時にマイクロプラスチックの回収を行うことで海洋環境を改善します。

④港湾や海岸近くでの水産養殖により輸送コストやエネルギー使用を削減、安定供給へ
本システムを活用することで、これまで海面養殖が行われてこなかった港湾地区や海岸近くでも養殖が可能になります。消費地に近い港湾地区から、安全かつ新鮮な魚を安定的にお届けすることができます。消費地近くで生産することで、輸送距離が短く、輸送中の温度管理や保存の負担が軽減され、輸送コストやエネルギー使用を大幅に削減でき、環境負荷の低減につながります。また消費地の近くで生産することで、消費地の需要に合わせて生産量を調整しながら安定した供給が期待できます。地元での養殖業が活発になると、地域の雇用が増え、経済活性化や地元ブランドの確立にもつながります。

⑤未利用の冷排熱を活用した通年養殖の実現
将来的には液化ガスなどの冷熱エネルギーや工場・プラントからの排熱・再生可能エネルギーなどの有効活用によって、魚に適した水温を保持し、通年養殖の実現を目指します。

⑥高い品質を兼ね備えた魚を提供
ウイルスや寄生虫を防ぎ、コントロールされた水質、水流によって品質が管理されることで、安全性とおいしさを兼ね備えた魚を育てることができます。さらに、様々な魚種へ展開することで、国内産で新鮮な高付加価値商品として通年での提供が可能になります。


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「MINATOMAE」システム イメージ図

■新たな養殖モデルの創出
──育成や流通はマルハニチロが支援
「MINATOMAE」プロジェクト(以下、本プロジェクト)における魚の育成や流通についてはマルハニチロ株式会社(本社所在地:東京都江東区、代表取締役社長:池見 賢、以下、マルハニチロ)の支援を受けています。2022年から協力パートナーのマルハニチロの漁場で技術開発を進め、計4回の実証実験を経て、神戸工場海域での本試験に臨んでいます。川崎重工のエンジニアリングや技術力、ガス・電力事業者とのネットワークなどの強みに加え、マルハニチロが持つ養殖ノウハウや流通・販売網、漁協や水産関係者とのつながりによる支援で、新たな養殖モデルを創出していきます。


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本プロジェクトに携わる川崎重工と、プロジェクトを支援するマルハニチロのメンバー


■神戸工場海域で養殖育成試験を実施中

事業化へのステップとして、2025年1〜4月現在、神戸港海域(当社神戸工場海域)で本システムによるトラウトサーモンの養殖育成試験を実施しています。


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神戸港(当社神戸工場岸壁近く)での育成試験




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1尾あたり1kg程度のトラウトサーモンを生簀に移す様子




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生簀の様子や水質などをモニタリング

魚種:トラウトサーモン
飼育期間:2025年1月〜4月
生簀サイズ:30トン
飼育密度:6%
飼育数:900尾(1尾あたり2〜3kgに育成することが目標)

■開発担当者コメント


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川崎重工業株式会社 技術開発本部
テクノロジーイノベーションセンター 事業化推進部
食料安全保障プロジェクトマネージャー 佐野 敦司

「2017年当時、液化ガス運搬船の技術者として参加した国際学会をきっかけに、『当社が保有する技術をもっと活用して、社会課題を解決できないか』という熱意で、『MINATOMAE』プロジェクトを立ち上げました。この思いに共感した社内外のさまざまな仲間に支えていただき、これまで着実に歩みを進めてきました。
本プロジェクトは、次世代の水産業をリードする試みであり、我が国の食料安全保障を担う新たな養殖方法として、市場や自治体への認知向上、地域経済への貢献、関係企業とのパートナーシップの強化を目指していきます。これらの新たな価値創出の取り組みを通じて、日本の水産養殖の中長期的な発展、競争力向上に貢献していきます。」


当社グループは、1896年の創立以来、120年以上にわたり、陸・海・空の幅広い事業分野において、常に最先端技術に挑み、社会課題の解決に貢献してきました。また、2030年に目指す将来像として制定したグループビジョン2030「つぎの社会へ、信頼のこたえを 〜Trustworthy Solutions for the Future〜」においても、持続可能な社会の実現に向けて、「安全安心リモート社会」や「エネルギー・環境ソリューション」などのフィールドに注力しています。当社は、今回開発した水産養殖システムを核とする通年養殖モデルの確立・提供により、食料安全保障を通じた誰もが安全安心に暮らせる社会の実現と、海と地球環境の未来に貢献していきます。
以 上

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