田中貴金属グループ・TANAKA未来研究所、「宇宙空間タンパク質結晶化実験」を開始
2025年4月16日(水)13時17分 PR TIMES
株式会社田中貴金属グループ(本社:東京都中央区、代表取締役:田中 浩一朗) の社内イノベーション組織・TANAKA未来研究所は、「Auのナノ構造形成技術を応用した宇宙空間分子結晶化実験ユニット」を開発しました(特許出願中)。2025年4月21日(アメリカ現地時間)にアメリカのケネディ宇宙センターより打ち上げ予定の国際宇宙ステーション無人補給機・SpaceX CRS-32へ本実験ユニットを搭載し、本実験を行います。
田中貴金属は、創業200年となる2085年の未来を想像し、持続可能な社会や超長期の企業経営をめざす「TANAKAルネッサンスプラン(TRP)」を2021年より開始しています。取り組みの一環として、よりよい未来を創造するための社内イノベーション組織・TANAKA未来研究所を発足し様々な研究開発を行っています。
宇宙空間でのタンパク質結晶化実験は、重力の影響を排除できるためタンパク質分子の詳細な構造解析に有用とされており、生物機能の解明や創薬に大きく貢献することが見込まれています。一方で、タンパク質結晶化実験は結晶の発生確率が非常に低く、コストの高い宇宙実験における課題となっていました。
TANAKA未来研究所が開発した「Auのナノ構造形成技術を応用した宇宙空間分子結晶化実験ユニット」は、Auのプラズモン共鳴(※1)を利用したタンパク質結晶化技術により、結晶発生確率を上げられるため、より効果的な宇宙実験が可能になることが期待されます。実験ユニットは打ち上げから約2ヶ月で地上に帰還し、宇宙での結晶発生率と品質を検証する予定です。
※打ち上げ状況は、下記NASAライブ配信をご覧ください。
https://www.nasa.gov/live/
「Auのナノ構造造形技術を応用した宇宙空間分子結晶化ユニット」の優位性
Auナノ粒子の表面にはタンパク質分子が吸着しやすく、また、Auナノ粒子間では可視光域内の波長でプラズモン共鳴を起こすため、タンパク質の結晶化が促進されます。TANAKA未来研究所では、Auナノ粒子間で光のエネルギーが凝縮されることで、タンパク質の結晶核の発生がさらに促進されることを発見しました。また、宇宙空間という微小重力環境下では、重力による対流や沈降の影響を受けないため、地上よりも質の高い結晶や大型結晶の生成が期待されます。
TANAKA未来研究所は、高コストで実験回数が限られた宇宙実験でこそAuのプラズモン共鳴を利用したタンパク質結晶化技術が貢献できると考え、Auのナノ構造形成技術と組み合わせて、カウンターディフュージョン法(※2)で使用する結晶発生能力の高いキャピラリー(ガラス製の筒状デバイス)(図1)を開発しました(特許出願中)。
内径0.5mm、長さ5cmのキャピラリーの内壁には、ナノレベルに粒子化したAu(直径の平均値は20nm)が、Au粒子の表面近傍でプラズモン共鳴がより発生しやすいナノレベル間隔(表面間距離の平均値は40nm)で整列しています。重力の影響を受けない宇宙空間で実験を行うことに加え、本ユニットを利用することで、困難とされていたタンパク質結晶を得られる確率が飛躍的に向上することが期待されます。その結果、生物機能の解明や創薬研究の発展に寄与できると考えています。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/31501/80/31501-80-839f42ebfd3d5781b1b160bb10986416-2178x550.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図1. a)ガラスキャピラリー写真 b)ガラスキャピラリー模式図 c)内壁の電子顕微鏡画像
今回の宇宙実験の実施体制
TANAKA未来研究所は、宇宙実験コンサルティングを行う有人宇宙システム株式会社の宇宙実験サービス「Kirara」を利用し、国際宇宙ステーション (ISS) 内でタンパク質結晶化実験を実施します。
https://www.jamss.co.jp/space_utilization/kirara/
(※1)プラズモン共鳴:ナノレベルまで粒子化したAu表面で特定の波長の光を吸収する現象。Auナノ粒子がナノレベルの間隔まで接近するとさらに増強されます。
(※2)カウンターディフュージョン法:タンパク質を結晶化させる手法の一つで、キャピラリーの中のタンパク質溶液と外部の結晶化溶液を双方向に拡散させて結晶を得る方法です。その際にキャピラリー内に濃度勾配が発生するため、幅広い結晶化条件を同時に探索することが可能になります。また、結晶化の最中にタンパク質が濃縮されないため、結晶の成長が穏やかに進みます。
会社情報
■TANAKA未来研究所について
田中貴金属は、創業200年となる2085年に向けた超長期の企業経営をめざす「TANAKAルネッサンスプラン(TRP)」をスタートしました。その取り組みの一環として、従業員一人ひとりが自ら考え、“ 誰も見たことがない未来を創る” ための活動を推進する社内イノベーション組織・TANAKA未来研究所を発足。創業以来130年以上にわたり培ってきた貴金属の価値に基づき、「貴少(貴重にして希少な)価値」から導き出される研究を行うことで、見えない未来を構想し様々な可能性を具現化することをミッションとしています。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/31501/80/31501-80-335939362922b17aea7bc207f4964093-350x315.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
■田中貴金属について
田中貴金属は1885年(明治18年)の創業以来、貴金属を中心とした事業領域で幅広い活動を展開してきました。国内ではトップクラスの貴金属取扱量を誇り、長年に渡って、産業用貴金属製品の製造・販売、ならびに資産用や宝飾品としての貴金属商品を提供しています。貴金属に携わる専門家集団として、国内外のグループ各社が製造、販売そして技術開発において連携・協力し、製品とサービスを提供しています。
2024年度(2024年12月期)の連結売上高は8,469億円、5,591人の従業員を擁しています。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/31501/80/31501-80-6214780cadeefc652393a6180d693e45-1803x1375.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
■公式ウェブサイト:産業用貴金属製品
https://tanaka-preciousmetals.com