中国でトランプ関税見込んだ駆け込み需要、1~3月期GDP5・4%増…不動産市場は泥沼続く

2025年4月16日(水)23時19分 読売新聞

多くのバイヤーが訪れた広州交易会の会場(15日、広東省広州市で)=遠藤信葉撮影

 【北京=照沼亮介、広州=遠藤信葉】中国国家統計局は16日、2025年1〜3月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表した。物価変動の影響を除いた実質で前年同期比5・4%増と、24年10〜12月期から横ばいだった。トランプ関税を見込んだ駆け込み需要で高い伸び率を維持したが、関税引き上げの影響が本格化する4月以降は、経済の下押し圧力がより強まることになる。

 1〜3月の主要経済指標のうち、輸出は前年同期比6・9%増と堅調で、GDPの伸びに貢献した。

 中国は、合成麻薬フェンタニルの米国への流入が続いていることを理由に、2月と3月に計20%の追加関税を課されていた。ただ、トランプ米大統領が4月以降も対中関税を引き上げるとの見立てから、輸出企業が出荷を急いだとみられる。

 中国国家統計局の盛来運ションライユン副局長は記者会見で、「短期的には米国の高関税が貿易と経済に一定の圧力をかけるだろうが、長期的には中国経済の良好な流れを変えることはできない」と強調した。

 だが、1〜3月の不動産開発投資額は前年同期比9・9%減、新築販売面積は3・0%減と、不動産市場は泥沼から抜け出せていない。

 広東省広州市で15日に開幕した中国最大の貿易商談会「広州交易会」では、米国の「相互関税」に対する危機感が広がっていた。

 福建省アモイに本社を置く、ある家電メーカーの顧客のほとんどは欧米企業だ。5割以上が米国で、コストコやウォルマートなど米小売り大手のOEM(相手先ブランドによる生産)も手がける。トランプ氏の就任を警戒して生産量を減らしたが、追加関税は想像を超えた。4月に入り、取引先の要請で製造ラインの半分を止めた。

 新たな販路開拓も考えるが、営業マネジャーの張瑜坤ジャンユークンさんは「得意とする欧米向けの高級ラインは東南アジアやアフリカの消費者に好まれず、顧客獲得は簡単ではない」と肩を落とす。

 米国に対し、中国は徹底抗戦の姿勢を崩さない。第1次トランプ政権との貿易戦争を経て、米国への輸出依存度を下げ、東南アジア諸国連合(ASEAN)などへの輸出を増やしたことへの自信がある。

 ただ今回は、不動産不況がまだ回復していない状態で米国との対決を強いられており、国内対策に重点を置く。3月には5000億元(約9兆円)の特別国債を発行して大手国有銀行に資本注入すると発表した。アジア通貨危機後の1998年以来の対応だ。

 みずほリサーチ&テクノロジーズの月岡直樹氏は、現状の関税水準では米国向け輸出の8割が喪失する可能性があると指摘し、「喪失分の全てを内需への転換や米国以外への輸出で補うのは困難だ。政府目標である成長率5%前後の達成は難しくなる」と話す。

中国進出の日本企業、消費減退に苦悩

 中国に進出する日本企業は、長引く不動産不況を背景とした消費減退に頭を悩ませている。

 サイゼリヤが9日発表した2025年2月中間連結決算で、アジア事業の営業利益は前年同期比4%減の53億円だった。稼ぎ頭の上海、広州、北京で営業利益が最大2割落ち込んだことが大きい。松谷秀治社長は「中国の景気悪化の影響が出ている」と話した。

 ショッピングセンターなどを展開するイオンは、中国の既存店売り上げで前年割れが続くなど苦戦する。25年2月期に中国での閉店にかかる費用などとして520億円を特別損失に計上するなど、立て直しを急ぐ。

 中国を成長市場として注力してきた資生堂は、不採算店舗の閉鎖など改革を進めている。ただ幹部は、これ以上消費減退が続けば、「施策が焼け石に水になりかねない」と懸念する。

 米トランプ政権と中国は、互いに関税引き上げの報復を繰り返している。今後、影響が本格化すれば、景気はさらに悪化しかねない。

 ファーストリテイリングが展開するカジュアル衣料品店「ユニクロ」は、海外店舗の半分を中国が占める。柳井正会長兼社長は「関税合戦みたいなことを続けていくと、周辺国と発展途上国にとっては大災害になる」と憤る。

 日系自動車メーカー各社は、電気自動車(EV)への移行の動きに出遅れ、販売の大幅な減少が続いている。関税による景気悪化が広がれば、中国事業の縮小を強いられる恐れがある。

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