中古車の一括査定サイトには「落とし穴」がある…悪徳中古車店を見分ける"担当者のひとこと"

2025年4月22日(火)18時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/deepblue4you

中古車市場が拡大する中、売買をめぐるトラブルも発生している。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんは「大手の一括査定サイトを利用した約20人が総額1億5000万円の『買取詐欺』の被害に遭った。高値を提示してくる業者は警戒したほうがいい」という——。
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■良い中古車を選ぶには、良い店を選ぶ


2024年の中古車市場規模は4兆8285億円と推計され、ここ数年で最大規模となっている(「中古車購入実態調査 2024」リクルート調べ)。


同調査によると、平均購入価格は155.9万円だが、多くの人にとって不動産に次ぐ高額な買い物である。


また、車は国の管理下で登録され、定期的に車検などで厳格に管理されながら日々使うものであるから、買った後も法定点検や車検、故障や修理などにおいて購入した中古車販売店との付き合いが長く続く。高い中古車も安い中古車も、これらのメンテナンスや修理代は新車と変わらないお金がかかる。


だからこそ、中古車を選ぶ際には店選びが重要になってくる。良い店で売られる中古車は、まずほとんどハズレがない。万が一、ハズレにあたったとしても良い店ならしっかりとフォローするはずだ。一方、客を騙す悪い店の車はハズレも多く、あとでトラブルになる危険性も高い。良い中古車を選びたいならまずは良い店を選ぶこと。そこに尽きる。


■大手中古車サイトの評価は信用できる?


では、どんな店が「良い店」なのか。それを知るための一つの手段として、中古車雑誌等に掲載される「店のレビュー」がある。しかし、一度でも調べてみたことがある人ならわかると思うが、カーセンサーやグーネットなど大手中古車情報媒体における中古車店の評価は、どれもほぼ満点である。


実際、筆者が取材をしてきた悪い中古車店は、「入金したのに納車されず夜逃げ」「保険の不正契約で保険業法違反」「保険修理代の不正請求で大手損保出禁」「車検不正で国交省から行政処分」などなど、確実に悪いことをしているにもかかわらず、ほぼ満点に近い。


お店の状況を知りたいユーザーにとって全く役に立たないどころか、本来とてつもなく悪い店なのに「良い店」として紹介することは優良誤認させることになる。


■Googleマップの低評価は役に立つ


ちなみに、中古車情報誌のクチコミがひどいことに関しては、日本の自動車取引業者で構成される一般社団法人「自動車公正取引協議会」(公取協)も問題視しており、対策を講じている。2023年10月1日から「事業者(中古車店)が関与したクチコミは『不当表示』で景品表示法違反になる」ことを公表したのである。


「やらせ」のクチコミについて警告する自動車公正取引協議会のプレスリリース

これで、少しは良い方向に行くかと思いきや、現在も不当表示は続いている。相変わらずどの店も満点に近いし、10台以上の「修復歴車」(法的に告知義務あり)の中古車を「修復歴なし」として販売していた中古車店の中にも、5点満点4.8以上の高得点を得ている店がある。


このように、中古車情報誌の店評価はほとんど信用できないが、まあまあ信用できるのがGoogleマップの店単位のクチコミだ。


中古車販売店の中には、評価を高めようと“ずるい手”を行う店もある。過去には最大手のネクステージが「星5のクチコミを今目の前で書いてくれたら特典があります」として、折り畳み自転車や高級和牛肉などから客に選ばせて、全員にプレゼントしていたという情報もある。


そのため、☆5のサクラクチコミも多いが、役に立つのは☆1〜2の低評価クチコミである。詳細に写真付きで投稿されているものもあるので、しっかり読んでみてほしい。


また、「みん評」というサイトも参考になる。ここは店単位ではなく会社単位ではあるが、大手中古車店の口コミを掲載しているので、警告として参考になることも多いと思う。ちなみに、口コミ評価1位のネクステージでさえ「3.23」、2位のガリバーは「3.17」、3位のグッドスピードは「2.96」と、全体的にかなり辛口評価になっている。


■オプションで儲ける「錬金術」


良い店選びの重要な条件に、購入時の見積もりを正しく出しているかどうか、がある。大手中古車店では当たり前のように行われてきた、あくどい「錬金術」(車両価格は安価に設定し、オプションで儲けるやり方)には要注意だ。


例えば、「車両本体価格+諸費用で55万円」と掲示されているのに、実際に見積もりを出してもらうと、納車整備、ボディコーティング、タイヤコーティング、スクラッチガード等が「必須のオプション」として計上されて、支払額が100万円を超えてしまった——といったケースである。


悪徳業者が全国各地に存在している


問題はこれらの費用を「必要な作業代」「見積もりから外せない」「このオプションをつけないと販売できない」としていることだ。


こちらも公取協が2023年10月1日に「支払総額表示」を中古車販売業者に義務付けたことで「オプションで大儲け」という行為は激減した。罰則(違約金として100万〜500万円)も設定されていることから、悪質な業者に対してはだいぶん効果はあった。


しかし、実は現在もこの「錬金術」をやっている大手中古車店が各地に存在する。


禁止されているので「外せない」とは言わないが、オプション購入や3年保証などを激しく勧めて、客が応じなければ何時間も「軟禁」状態にするのだ。自動車メーカーの新車保証がまだあと3年も残っているのに、保証継承を教えず自社の保証を強引につけさせようとする手口もある。


犯罪まがいのこれらの行為をする中古車販売店では絶対に買わないでほしい。


■買取一括査定サイトで起きた「事件」


中古車を買う時だけでなく、売る時にも注意が必要だ。


インターネットの普及とともに2000年代に入って一気に広まってきた「ネットで車一括査定」。利用したことがあるという人もいるだろう。今や一括査定サイトは30社以上あるが、これを介した買取でもトラブルが続出している。ここでは、大手査定サイトの「MoTA」(モータ)で起こった「買取詐欺」について紹介しておく。


MoTAの特徴は、依頼者から情報が入るとまず登録している買取業者に入札をさせ、価格上位の3〜4社だけが客との交渉権(電話をかけて対面での査定のアポを取る)を得るという仕組みだ。客は3社からだけの電話に出ればよいので、一般的な一括査定サイトを利用した際にありがちな凄まじい電話攻勢に悩まされることはない。


このMoTAに登録していた中古車店「グランドアップ」(本店・岩手県盛岡市)をめぐり、約20人が総額1億5000万円の被害に遭ったのだ。


被害者たちは2024年11月下旬〜12月下旬にかけて、MoTAを介してグランドアップに買い取りを依頼。売買契約を締結して車と名義変更のための書類などを渡したが、予定日を過ぎても入金がない。入金を待つ中、今年1月に突然、先方の弁護士から破産手続き開始の連絡を受け取った。つまり、グランドアップは車の引き渡しを受けながら未払いのまま「夜逃げ」状態となった。


■愛車を奪われただけで、何も得られず


これは「買取詐欺」と言える状況だ。被害者への取材によると、3カ月以上経過した現在も、グランドアップから連絡はないという。


被害に遭った全員、グランドアップと取引するのは初めてだったそうだが、なぜこの会社に愛車を売却したのか?


それは、MoTAで高額買い取りを提示されたからである。グランドアップは最初からお金を払う気などまったくなかったのだろう。例えば、ほかの買取業者が180万〜220万円を提示するところ、280万〜320万円を提示していた。100万円も高値で買ってくれるなら迷わず、グランドアップに買い取ってもらうだろう。


しかし、結局は車だけ奪われて入金はなし。グランドアップでは客から「300万円」の契約で引き取った翌日に、別業者に200万円程度で売却していたといったケースも多数あったという。


このような買取業者に騙されないために以下のことを知っておいてほしい。


異常なほどの高値を提示された際は、「なぜこんなに高く買い取ってもらえるんですか?」と尋ねてみることだ。


「この車を買いたいという客がすでに待っている」
「今日決めてくれればこの値段で買い取ります。減額は絶対にしません」


こんな一言を言われたら断ったほうが無難だ。もしくは、入金が確認されてから車を引き渡す。そうすればまず安心と言っていいだろう。


写真=iStock.com/Jay_Zynism
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■新車業界にも「闇」が広がっている


4月10日、驚きのニュースが入ってきた。トヨタモビリティ東京が遅くとも2023年6月ごろ〜2024年11月ごろ、新車販売でオプションやローン契約を強要する「抱き合わせ販売」を行っていたとして、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで再発防止を求める警告を行ったのだ。


同社は、実際に抱き合わせ販売を強要された顧客に対して個別に連絡し、返金対応をし始めているという情報が筆者の元に入っている。


トヨタモビリティ東京は、事実上唯一のトヨタ自動車の直資本ディーラーである。今年1月に保険金の不正請求を多数行っていた可能性が指摘され、保険業法違反で関東財務局から業務改善命令を受けている。


なお、抱き合わせ販売やローンの強要、現金一括支払いでも最低1年間はディーラー名義をマストにする——といったことはほかのトヨタディーラーでも行われてきた。


消費者からの苦情・相談を受け、2024年11月15日に公取協から「新車の不適切な販売について」という注意喚起が出されており、さすがに現在は抱き合わせ販売などやっていないと思うが、もっとも信頼できるはずのトヨタ直営ディーラーでこんなことが起こってしまうと、ユーザーはどこで車を買えばいいのか、本当に混乱してしまうだろう。新車販売の闇についてもいつか書いてみたい。


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加藤 久美子(かとう・くみこ)
自動車生活ジャーナリスト
山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難・詐欺・横領・交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。
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(自動車生活ジャーナリスト 加藤 久美子)

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