TOBの「あや」で地盤を供した:大東建託の強さを改めて振り返る
2025年4月22日(火)9時27分 財経新聞
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上場廃止の引き金は、大東建託(1878、東証プライム市場)によるTOB・完全子会社化。大東建託はアスコットのTOB・完全子会社化を「不動産開発事業の強化」とし、具体的に「大東建託グループ開発エリアは都心郊外縁が中心で、両社の開発エリアに競合が生じないため、不動産情報の共有により双方の開発エリア拡大に貢献できる」とシナジー効果謳っている。
大東建託は「賃貸住宅の建築請負から一括借り上げで、圧倒的な存在感」とされ、周知のとおり賃貸住宅の管理戸数/供給戸数で最大手。そんな大東建託がアスコットとの間で目指すという、シナジー効果の発現を見守っていきたい。
今回のTOBを知り、大東建託のエポックメイキングとなった出来事が頭に浮かんだ。大東建託はTOBに絡む「あや」の中で、今日のベースを構築してきたと言って過言ではない。
2007年末のこと。そう、リーマン・ショックの影響で世界の金融市場が大混迷に晒された最中である。大東建託の創業者:多田勝美会長が個人資産管理会社での持分を含め、大東建託株の約3割を売却し経営から身を引く旨(非公開化)が報じられた。
多田氏の「経営から身を引く」「非公開化」の何故について真意を私は知らない。噂の類を記すのは、軽々だと思う。並行し多田氏の動向に呼応するかの様に伝えられたのが、投資ファンドによる売却株の引き受けの流れだった。
ちなみに2009年3月期の大東建託は厳しい時代の真っただ中でも、「6.2%の営業増益(703億8900万円)」の小幅ながらも切り返し/踏ん張りを見せている。
しかしリーマン・ショックで株式市場は大きく下振れを起こした。投資ファンドの資金調達難で、大東建託株の売却は見送られた。多田氏の個人資産管理会社:ダイショウが保有していた全株(議決権比率32%弱)は、2011年3月の自社株公開買い付けに応募し売却された。と同時に消却されたのである。
大東建託のこの間の収益動向はご確認いただくとして、至2027年3月期の中計は「売上高2兆円(24年3月期比15.5%増)、営業利益1400億円(33.56%増)」を掲げている。ちなみに「配当性向50%」は「不変」計画。
本稿作成中の株価は1万5600円余水準。予想税引き後配当利回り3.23%余。IFIS目標平均株価は算出者7人中4人が中立の、1万7751円。好配当利回り享受の姿勢で中計の進捗を見守るべきということか・・・