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「GMARCH」「関関同立」というくくりが消え失せる…大学激変期に私立一貫校が有望と言える「合格実績」以外の理由

2025年4月24日(木)10時15分 プレジデント社

立教大学モリス館(写真=phosphor/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons)

2024年度の大学受験生総数は約64万人だったが、18年後は40万人を大きく割り込むと見られている。塾経営者の矢野耕平さんは「今は、中学受験する際に、その学校の大学合格実績が重視されているが、今後は他の尺度がチェックされるようになる」という——。

※本稿は、矢野耕平『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


■学問の入口としての中学受験①


「学歴観」が大きく変容する⁉

「私立中高一貫校 近年のトレンド」で触れましたが、国内の少子化が進行するなか、大学は相当な危機感を抱いています。


その証拠に、2024年度の大学入学者ですが、4年制の私立大学の中でどれくらいが定員割れ(入学者総数が大学の募集する定員に満たない状態)を引き起こしているのでしょうか? 正解は59.2%です。そして、驚くべきはたったの2年前、2022年度については47.3%でしたから、大学の学生募集状況が急速に冷え込んでいることがわかります。


日本全体の18歳人口は減少傾向にあり、残念ながらこの流れはいまのところ変化する兆しはありません。このままでいくと、定員割れの状態の大学の割合が6割、7割……あるいはそれ以上になっても何ら不思議ではありません。


追い打ちをかけるようですが、ショッキングなデータをもう一つお見せしましょう。


2024年度の日本の大学定員総数は約63.6万人に対して、大学受験生総数は約64.7万人、18歳の大学進学率は約59.1%です。


そして、2024年の日本の出生数は72万人程度です。現状の大学進学率に変化がなければ、18年後の大学受験生総数は約42万人となります。そうなると、日本の大学地図が激変することが考えられます。


いまの「GMARCH(学習院大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)」だったり、「関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)」だったり、「日東駒専(日本大学・東洋大学・駒澤大学・専修大学)」だったり……そういう括りそのものが消滅する可能性だって考えられます。


わたしはこれから先、従来の日本の「学歴観」が大きく変容するのではないかと考えています。いままではどのブランドの大学(学部)に入学したか、そればかりが重んじられる傾向にありました。しかし、大多数の大学が定員割れを起こす状況下、学士そのものの価値は軽くなり、「学士」より「修士」、「修士」より「博士」という「大学院」で何を専門に研究してきたかが問われる時代が到来するかもしれないのです。


つまり、「学校歴」ではなく、字義通り「学歴」に価値が置かれるようになるということです。実際、海外に目を向けるとこういう学歴観がもはや当たり前になっています。日本は否応なしにグローバルスタンダードに近づいていくのではないでしょうか。


立教大学モリス館(写真=phosphor/CC BY-SA 3.0/Wikimedia Commons

■中学受験は今後緩やかな世界になる?


さて、大学の危機的な状況をお伝えしましたが、もちろん少子化が中学受験におよぼす影響が数年後にははっきりと感じられるようになるだろうと睨んでいます。


少子化とはいえ、中学受験の盛んな首都圏、とりわけ都心部ではこれまで児童数は横ばい、あるいは、やや増加傾向にありました。しかし、東京都であってもあと数年経ったら、一気に児童数が減少すると予測されています。


たとえば、2024年3月に公立小学校を卒業する東京都の児童数は約9万8000人とされています。このあと3年間の東京都の小学校卒業生数は10万人前後で推移するとされていますが、この2025年4月に東京都の公立小学校に入学する児童数は約9万2000人とされていて、さらに、今年3歳児になる東京都在住の児童数は何と約7万8000人と予測されています。


こう考えると、いまは激戦が繰り広げられている首都圏の中学入試の様相が数年後には大きく変わる、すなわち緩やかな世界になっていくのかもしれません。


加えて、先の大学入試状況の話でもわかることですが、いわゆる「大学合格実績」の価値がいま以上に低下し、中高一貫校を選定する尺度として「弱く」なることだって考えられます。


それでは、今後どういう中高一貫校が好まれるようになるのでしょうか。


先に述べた「学歴観」の変容に対応した学校ということになるのかもしれません。中高時代にわが子が何かしらの分野において専門性を持つ、その礎(いしずえ)を構築するような試みを講じる学校が人気を博すのではないでしょうか。そして、この点では多くの私立中高一貫校がすでにさまざまな試みをおこなっているのです。


それらの一端を次に説明していきましょう。


法政大学市ヶ谷キャンパス(写真=Unagi special/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons

■学問の入口としての中学受験②


中高一貫校の「中学卒業論文」

先ほどの「中学受験で得られる財産」にて、中高一貫校に進学すれば、受験からしばらくの間は解放され、部活動や趣味などに専念できると申し上げました。


さて、多くの私立中高一貫校では中学校三年生のときに「卒業論文」(この名称は学校によってさまざまです)に取り組ませるという試みを講じています。卒業論文と言いましたが、これは「中学卒業」を指しているのですね。


わたしの手元にも数々の中高一貫校から頂戴した「卒業論文集」がありますが、それらを読んでいると実に膨大な時間をかけて在校生たちが執筆していることがよくわかります。


その大半が、自身の興味を抱くテーマについて先行研究を参照しつつ、持論を展開するというものです。一例を挙げてみましょう。


新宿区にある男子校・海城中学校の社会科卒業論文集(2021年度)に掲載されている論文の一部のタイトルを紹介しましょう。


●「終末期医療における自己決定の尊重を実現するためには—尊厳死法制化論争やACP導入を通して」


●「ヤングケアラー支援に向けて—スクールソーシャルワーカーの配置と法整備の重要性」


●「商店街衰退とその再生—丸亀町商店街の事例と商店街の地域コミュニティ機能から考える」


●「東京における農的空間の保全・創出—農サービスと農業体験農園から考える農地の活用方法」


●「外国籍児の教育サポートと多文化共生—横浜市飯田北いちょう小学校と浜松市の例から」


いかがですか。タイトルだけでも歯応えのある論文であることが理解できるでしょう。実際、これらの論文に目を通してみると、その緻密な出来栄えに驚嘆させられるものばかりなのです(もちろん、担当教員の指導の下で執筆していくのでしょうが)。


そういえば、千代田区の女子校・三輪田学園で校長を務める塩見牧雄先生に話を伺っていたときに、中学の卒業論文で選んだテーマがその子の将来を決定づける事例がよく見られると口にしていました。


こういう取り組みは、前述した、これから日本の標準的な「学歴観」に対応するものになるとは言えないでしょうか。


中高一貫教育は「高校入試」がない分、「余白」があると先に述べましたが、こういう時間を活用して、子どもたちの知的好奇心、探究心を刺激するような実践がおこなわれることがあるのです。中高一貫校の魅力の一つと言えるでしょう。


■大学入試で隆盛を誇る「総合型選抜」


昨今は大学入試の在り方が大きく変わってきています。その一つとして、「一般入試」という従来の科目試験で選抜する方式ではなく、「総合型選抜」(旧AO入試)が数多くの大学の入試方式として登場しました。この方式を採択した日本の国立大学は、約8割とされています。



矢野耕平『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)

これは、受験生たちにエントリーシートを提出させ、加えて、論文や面接、プレゼンテーションなどを課して合否を決めるというものです。


この「総合型選抜」で受験生たちが問われるのは、「この大学でどういうものを学び、その専門性を深めたうえで将来にどう活用していきたいのか?」ということです。大学側が求める生徒像にふさわしいか審査しているとも形容できるのです。


先ほどの「卒業論文」だってそうですが、中高一貫校は6年間という時間を存分に活用して、科目学習にとどまらないさまざまな学びを提供しています。


たとえば、野外体験授業、卒業生などの社会人による講演会やキャリア教育、海外研修や短期・中期・長期の留学制度、理科実験講座、ICT教育、日本語のみならず英語を用いたプレゼンの機会、高大連携によるアカデミズムに触れる機会……。


これらはほんの一例に過ぎませんが、保護者の皆様はわが子の志望する可能性のある中高一貫校のWEBサイトを閲覧する際には、「大学合格実績」のところばかりでなく、その教育内容をくまなくチェックしてみてください。各校独自の取り組みをたくさん発見することができるでしょう。


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矢野 耕平(やの・こうへい)
中学受験専門塾スタジオキャンパス代表
1973年生まれ。大手進学塾で十数年勤めた後にスタジオキャンパスを設立。東京・自由が丘と三田に校舎を展開。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。主な著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校vs.新名門校』』(SB新書)など。
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(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)

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