トランプ政権、為替と関税で軟化姿勢…狙いは「米国売り」懸念の鎮静化か
2025年4月26日(土)23時31分 読売新聞
トランプ大統領=AP
【ワシントン=田中宏幸】米国のトランプ政権が、為替や関税を巡る強硬姿勢を軟化させている。トランプ大統領の過激な言動で「米国売り」が加速するとの懸念が強まっており、金融市場の沈静化を図りたいとの思惑が透ける。
「日本とは非常にうまくやっている。合意がかなり近づいている」。トランプ氏は25日、関税措置を巡る日本との交渉について、記者団にこう強調した。根拠などは示さなかった。
前日に行われた加藤財務相とベッセント米財務長官の会談では、米国側から為替水準の目標などの要求は示されなかった。
ベッセント氏はかつて著名投資ファンドに在籍した市場のプロフェッショナルで、外国為替や債券市場を熟知する。ドルへの信認が揺らぐ中で強硬にドル高是正を迫れば、さらなる市場の動揺につながるとの判断があったとみられる。
トランプ氏の経済ブレーンである大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長も強硬な発言を控えている。
ミラン氏は昨年11月に公表した論文で、米国製造業の衰退は過度に高いドルと不公平な貿易システムが原因で、相手国と同率の関税をかけるところから始めるべきだと提唱。1985年に日米欧の5か国がドル高是正で協調した「プラザ合意」を参考に、再び各国がドル安で協調するよう迫る「マール・ア・ラーゴ合意」構想を披露していた。
だが、ミラン氏は16日、読売新聞の単独インタビューに応じ、「論文は私の考えではない。トランプ政権の方針を示したものでもない」と主張した。ニッセイ基礎研究所の窪谷浩主任研究員は「ミラン氏は、ドルの価値を下げる趣旨の同構想が意識され、米長期金利が急騰するリスクを懸念している可能性がある」と分析する。
米国では、株式・債券・通貨がそろって下落する「トリプル安」となる場面が目立っている。トランプ氏が22日に中国への追加関税の引き下げに言及するなどしたのも、市場重視の姿勢に傾いたためとみられる。ただ、円安・ドル高を嫌うトランプ氏の「本音」は変わっていないとみられ、今後、焦点として浮上する可能性も残っている。