クオリティベーカリーの挑戦。タカキベーカリーの石窯パンシリーズ 発売20周年記念座談会1:工場でつくるパンの常識をくつがえす ~発売からこれまで~
2025年4月28日(月)11時0分 PR TIMES STORY
スーパーマーケットでも、本場ヨーロッパの伝統的なおいしさのパンをお買い求めいただきたい。そんな思いから生まれたタカキベーカリーの石窯パン。2005年の発売から20年を迎え、おかげさまで売上も拡大し、今ではタカキベーカリーの主力品群になるまで成長しました。開発当初、工場で作るパンの常識をくつがえすといわれた挑戦の裏側には、どんな思いと試行錯誤があったのか。当時の担当者が語りました。
出席者(写真左から)
開発担当:吉水 昭公/㈱タカキベーカリー 生産本部 研究開発部 パン開発部
生産担当:森本 雄一/㈱タカキベーカリー 生産本部 生産企画室
営業担当:大場 雅和/㈱タカキベーカリー 営業本部 岡山営業部
企画担当:豊嶋 朋子/㈱アンデルセン・パン生活文化研究所 広報室
工務担当:岡田 倫定/㈱タカキベーカリー 生産本部 広島工場 工務課
原点に返る。すべてがゼロからのスタート
(吉水)岡山工場を建て替える際に、石窯を導入するということになったのですが、正直、最初はどうしたらいいかわかりませんでした。工場に石窯なんて今までありませんでしたから。
(豊嶋)まさにゼロからですね。
(吉水)まず石窯の特徴は何かというところから入って、そもそもパンのおいしさというのはどういうことかを勉強し直しました。しっかり水を抱き込んで、じっくり発酵させた生地を石窯の豊富な熱でしっかり焼き込む。すると、皮がパリッと薄く、中がしっとり、もっちりという食感が生まれる。この石窯の特徴を最大限に活かせるというところを商品設計にすると、パン作りの原点につながったので、そこから始まったと思いますね。
開発担当の吉水
(森本)水をたっぷり含んだ生地を作るために、今まで横型ミキサーが主流だったところに、縦型ミキサーが導入されました。工程も全然変わってくるので、私たちがこれまで正しいと思っていたものがちょっと違ってくるわけですね。開発の人たちがそれを試行錯誤して作り込んだものを、今度は工場のラインで製造する我々が引き継がなければいけないと、やはりそれが一番の苦労だったかなと思います。その日だけ、その時だけというのは、開発の人が立ち会ってくれれば同じようにはできるんですが、それをいち早く習得すること。気温、気候全部変わった時にそれに対応できるような技術や経験値というのを、いかに早く習得して従業員一人一人に伝え、教え、実践してもらうか。そこまでが非常に大変でした。私も初めてなので、工務にも聞きながら。工務の人も、わからない中でもいろいろやってくれましたよね。
(岡田)そうですね。初めて見る機械が、仕込みから焼成まで並んでいるので。生地をこういうふうに作りたくて、こういう制御したいからどうしたらいいのかって聞かれても、そのミキサー自体の取り扱いもはじめはわからないから、設定から覚えるというところからまず大変でしたね。あと、トラブルがあった時の対応もすべてがゼロな状態から始まったのが、すごく苦労したなという印象がありますね。
工務担当の岡田
「お前はパンの焼き方を知らない」
(吉水)石窯はドイツ製を導入して、ドイツから技師も来たんですが、ドイツパンの焼き方と私たちがめざす商品の焼き方って、全く違うんですよね。ドイツパンっていうのは、高い温度でしっかり長時間焼き込んで、どっしりと重たいものを焼くのがいいと。でも我々がめざすパンはそうじゃないので、こっちが設定を変えると「いや違う」と喧嘩になって。「そうじゃない。お前は焼き方を知らない。パンを知らない」と言われながらも(笑)、細かな設定方法を聞きながら、自分たちの焼き方を作っていきました。
(岡田)ドイツの取扱説明書があるんですけれど、まずそれが理解ができなくて、焼成条件を変えたいけど、どうしたらいいかっていうこともなかなか分からなかったですよね。
作りたいパンのために自分たちを変える
(吉水)工場は24時間稼働ですから、新工場でも新しくその設定を全部決めないといけない。しかも一気に機械が入ったわけじゃなくて、旧工場からの移設もあり、それが終わるのを待っていたら間に合わなかったので、テストしながら新しい機械を入れていったんです。工場、工務の人たちはすごく苦労したと思います。
(岡田)立ち上げたばかりのラインを、責任があるからどうにかしたいってなるんですが、次にまたラインを作らないといけないとか、その繰り返しがずっと続くので、少ない人数の中で頑張ったと思います。
(吉水)試作した商品を共有して、そのフィードバックをもとに、次はどうしようということを工場の人に相談したりしてましたね。石窯をはじめ機械も自分たちでゼロから細かく設定して、データを蓄積してノウハウになっていった。その積み重ねでした。
(森本)新しい工場は何のためにできて、何を目的として動かそうとしているのかというのを、働いている人たちに知ってもらうことも大切でした。石窯のテストをしているのと同時に、こちらでは人の教育をひたすらずっとやりました。ここに非常に時間を費やしたというのはよく覚えています。工務も生産も、誰もかれもが、本当にいろんなことへのチャレンジをみんなで同時にやっていましたね。開発は生産を知っていたし、生産も開発から知見を得ようとよく話をしていましたよね。その先に営業がいるから、やっぱり営業が求めていることに対して生産が何をどこまでできるかっていうところを橋渡しをするような。
(豊嶋)それぞれの役割で、コミュニケーションを密に取っていましたよね。
(吉水)製造ラインになると、なかなか水が生地に入らない、やわらかいから流れにくいとなって。そこで知恵を出してくれるのは生産の人。すごく助けられた思いがあります。それと工務の力がないと石窯パンはできていない。すごくパワーがあったというか、すごく真剣に取り組んでもらったというか。
(森本)今までなら「うまくラインに流れないからこれしかできません」という考えが、「この商品を作りたいからどうしたらいいか」というふうに変わりましたよね。開発の人はそれにすごく応えてくれたので、こちらも助けられた思いです。みんなの知恵というか、経験値というか発想力というか。
生産担当の森本
売り方もゼロからつくる
(大場)発売開始の半年前から、広島の横川アンデルセン(現在は閉店)の石窯でパンを焼いて、十数店舗のスーパーでテスト販売しました。当時は何が売れるのか、どういう売り方がいいのかもわからないので、いろんなパターンの売り場を試して、毎週POSデータを検証していきました。その結果、石窯パンを販売することで全体としても売上げの底上げにつながったことがわかって、自信になりましたね。
(豊嶋)商品化のためのパッケージで言うと、グラフィックデザイナーの方から、派手な包装はかえって売場で他社商品に埋もれてしまうから、あえてシンプルなほうがお客さまに届くのではとご提案いただいて。たしかにそのほうが際立つんですよね。
企画担当の豊嶋
(大場)当時、石窯をどうやって売ろうかと本当に悩んで。ただ、いい商品はできたけれど、今までの売り方ではなかなか広がらないだろうなというのも感じていました。営業の資質の向上をしないといけないということで、営業の勉強会、あと、外部講師に来ていただいて、プレゼン資料の作り方とか仕方であったり、そういった勉強会も営業部員全員が参加していました。
(吉水)外部の方を招いてビジネスマナーなどの厳しい勉強会もあり、営業も大変でしたね。
(大場)勉強会を通じて営業の考え方も変わりました。自社の商品を売るだけじゃなくて、タカキベーカリーの石窯パンを入れることで、お店やパンコーナー全体の売上向上に貢献できます、というような提案の仕方に変わっていったと思います。
(豊嶋)営業のスタイルも大きく変わりましたね。
(大場)もうできることは全部やろうと思って。冊子を作って取引先に毎月毎月情報発信をすることを考えたり。そして展示会ですね。取引先様やバイヤー様を全国からお招きして、石窯パンをはじめ、タカキベーカリーのフルアイテムを見ていただいて、商談の場を作りました。これがきっかけで、展示会での商談という私たちのスタイルが生まれたんですね。関連販売やレシピの紹介など、それまであまり他社がしていないような提案をしてきました。石窯パンをずっと定価販売しているのも、そういった違う価値を伝えることができたから、今まで続いているのかなと思っています。
営業担当の大場
発売、そこからが本当の勝負
(大場)石窯パンの売れゆきは、想定内ではありましたが、最初は厳しいスタートを切ったかなと感じました。やはり食事用のパンをいきなり発売して、おいしいからといってもすぐ売れるわけではありませんよね。その後の試食販売や食べ方提案、売場作りであったり、そういった細かいコツコツとした営業活動を続けたことが良かったと思います。 取引先のPOSデータを見ると、石窯パンを買われるお客様というのが、ワインやナチュラルチーズを買われたり、オリーブオイルを買われたり、ちょっといいお肉を買われたり、そういう方が多かったので、食生活の質の面でもお店の役にも立つし、パンコーナー全体の売上が上がっていくというので、徐々に広がっていったかなと。
どうやってお客様に良さを知ってもらうかという活動をずっとやっていました。
(森本)新たなラインで新たな市場に新たな商品を届ける。これを一から生産がやるんだということで、始まった時よりも半年後の方が大変でしたね。生産量が増えれば現場の人も増える。そこでどうOJTして、始まった時の思いをどう受け継いでいくか、同じものがちゃんと半年後にもできているのかという。自分自身のマンネリが一番怖いのもあるので、そういうところもやはり苦労していました。ひと月に1回ぐらい開発の人が来るので、その時に生地の変化はないか、季節の変化はないか、こういう時はどうすればいいかというのを、とにかく根掘り葉掘りよく聞いていましたね。そこからが本当に勝負だなと思いました。
(岡田)手応えが出てきたのはどれくらいからですか?
(大場)やはり関西市場で受け入れられた時期からでしょうか。最初の開発自体も関西向けにやっていましたし、当時はまだ関西は新しい市場で、それに向けて石窯パンというちょっと高品質な商品を出して、高級スーパーを中心に広がっていったと。
(森本)狙い通りになりましたね。
(大場)関西である程度認知されて、それがまた波及していった。関東の売り場でも広がっているのは、やはり石窯パンのおかげだと思いますね、石窯パンだったらマーケットに入れるんじゃないかと。
(森本)価値を分かってもらえるということですね。
(大場)これも本当に石窯パンがあったおかげで、そういう仕事ができたと思いますね。
石窯パン20年を振り返って
(森本)20年経ったんだなというのが感慨深いですね。20年前にがむしゃらにやって、そこから今を迎えられたという。私たちがやってきたことは、今の後輩たちにも役に立っているのかもしれないというところが、やはり一番の私の思いです。またこの先、40周年、60周年と続くために、私も継続して力になることができればいいなと思います。
(岡田)工場の縁の下の力持ちとして、石窯ラインを支えてきたという20年間でした。石窯パンがタカキベーカリーの顔になっているということで、さらにタカキベーカリーの工場、石窯ラインを、これからも工務として長く支えていきたいとあらためて思いました。
(豊嶋)よく焼き込んだ石窯パンが今こんなふうにお店に並んでいるのを見て、本当に頼もしく思っています。タカキベーカリーが苦しかった時代に、パッと突破口を開いたのが岡山工場であり、代表的な商品となった石窯パンなんだなと思うと、なんだか感無量という感じです。ありがとうございました。
(大場)石窯パンが今年で20年ということは、人間でいうと20歳。成人になってまずはひと安心したという感じです。20年前と言えば自分はまだ31歳。そんな若い世代にチャンスを与えてくれた会社にも感謝したいですし、さらにこういったチャンスをどんどん次の世代にも与えていくべきだと思うので、また20年後に同じようなことを語れる人を育てていきたいですね。
(吉水)立ち上げからずっと石窯パンを開発の方を携わらせていただいたんですけれども、本当に一つの分岐点でしたね。パン作りの基本、パンのおいしさというのは何かというところを考え直させられました。石窯パンというのは、石窯で焼いているからおいしいのではなくて、石窯の最大の特徴を引き出すためにどうするかということを考えてきた商品だと思います。製法も技術もまだまだ最終形ではないので、圧倒的においしいパンを作るために、開発として引き続き挑戦していきます。
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パンのある豊かな暮らしを提案するクオリティベーカリーとして、
私たちタカキベーカリーはこれからも、すべてのパンづくりを通して
おいしさの可能性に挑み続けます。
The Quality Bakery
タカキベーカリー
https://www.takaki-bakery.co.jp/
株式会社タカキベーカリー
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