相場展望5月1日号 米国株: NYダウは重要な位置まで戻り、上昇・下落の転換点に到達 トランプ関税の緩和発言で一喜一憂してはいけない 日本株: 海外短期投機筋の先物主導で上げてきたが、胸突き八丁

2025年5月1日(木)10時31分 財経新聞

■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
 1)4/28、NYダウ+114ドル高、40,227ドル
 2)4/29、NYダウ+300ドル高、40,527ドル
 3)4/30、NYダウ+141ドル高、40,669ドル

【前回は】相場展望4月28日号 米国株: 相互関税の緩和発言で上昇も転換点、トランプ氏の豹変に注目 日本株: 順調に回復途上にあるが、海外短期投機筋の動向に注意

●2.米国株:NYダウは重要な位置まで戻り、上昇・下落の転換点に差し掛かる トランプ関税の緩和発言で一喜一憂してはいけない

 1)NYダウは重要な位置まで戻り、上昇か下落かの転換点に差し掛かった
  ・NYダウの推移
    1/30 44,882ドル トランプ大統領就任後の高値
    4/08 37,645   相互関税発表で下落
    4/09 40,608   相互関税の「上乗せ関税」一時停止を好感
    4/10 39,593
    4/14 40,524
    4/21 38,170   FRB議長「解任」発言で、米国売り
    4/30 40,669   上乗せ関税の緩和発言が相次ぎ好感
             自動車部品と鉄鋼アルミの「二重関税」解消
             決算発表を好感した買いが押し上げた

  ・トランプ大統領就任後の1/30に最高値を付けたが、相互関税発表で4/8までにNYダウで▲7,237ドル下落、下落率は▲16.1%。その後、反発し4/230比で+3,024ドル上昇・上昇率は+8.03%。下落幅に対する戻り率は+41.78%。戻り率が4割程度というのは、トランプ氏の政策に対する市場の警戒心がまだ強いという表われであろう。

  ・4/30のNYダウは、1〜3月期の米国GDPが前期比年率で▲0.3%とマイナスとなり、市場予想の+0.4%増を下回った。NYダウは一時▲780ドル下落した。その後、FRBによる利下げ観測が浮上し、株が買い直されNYダウは+141ドル高で終えた。

  ・なお、この「FRBの利下げ観測」の情報元が不確かなため、注意が必要である。

 2)トランプ関税の緩和発言で一喜一憂してはいけない
  ・トランプ関税の中身
    (1)関税の基本税率10%  : 世界各国が対象
    (2)関税の上乗せ     : 米国との貿易利益の60カ国以上が対象
    政権から緩和発言が相次いでいるが、(2)「上乗せ部分」だけでの言及に過ぎない。

  ・関税による物価上昇(インフレ)の影響は今後、表面化する。

  ・トランプ氏は「ギャンブル」をしている。

  ・米国・中間選挙まで、18ヵ月しかない。
   ・共和党議員のなかからトランプ氏への反対の声が増大している。
    ・大統領令の権限に、議会が歯止めをかける法案を検討中。

  ・米国は対中国向け高関税に妥協を探る可能性がある。
   ・中国がレアアースの9割を占有しているが、関税対抗で輸出規制を実施。米国は中国のレアアースを輸入しなければ、防衛・産業が成り立たない。F35戦闘機で1機に400キロのレアアースが必要という。

 3)トランプ関税を理由に、世界企業は減益・業績予想撤回など身構えている
  ・米国・食品大手ハインツ、独メルセデス・ベンツ、スウェーデン家電メーカーのエレクトロラックス、自動車のボルボなど。
  ・国際貿易輸送大手のUPSは2万人削減を発表。
  ・著名投資家モビアス氏は、米国関税見極めで95%を現金保有とリスク回避。
  ・日本銀行は、トランプ関税の負の影響を考慮して利上げ見送り。

 4)4/30にNYダウは7日続伸は昨年7月以来⇒昨年7月の6日続伸後には大幅安
  ・昨年7月の下落の状況
    7/17高値 41,198ドル
    8/08安値 38,703  : ▲2,495ドル下落・▲6.05%下落

  ・昨年7月の下落時のチャートと波形はよく似ているため、警戒したい。

 5)トランプ関税の負の効果が早くも出現、1〜3月GDP成長率▲0.3%⇒株価下落懸念
  ・トランプ関税の負の効果は4月以降から本格的に表面化する。

  ・NYダウはすでに1/30から織り込み始めていた。そして、4/8を底に巻き戻していたが、4/9・4/14・4/30とトリプル・トップを形成し下落リスクを示唆している。

  ・そこに、(1)1〜3月GDPのマイナス成長と、(2)ADP民間雇用の減速が公表された。これがきっかけとなって、NYダウは4/8の下値37,645ドルを割り込むか否かの展開となる可能性がある。

  ・格言「5月に売れ」(セル・イン・メイ)もあり、1〜3月決算発表シーズン後となる5月3週以降は警戒したい。

●3.米国1〜3月GDP伸び率は前四半期比で年率▲0.3%、関税影響が色濃く(NHK)
 1)+2.4%のプラス成長だった前期から大きく減速して2022年1〜3月以来、12期ぶりにマイナスに転じ、トランプ政権の関税措置による影響が色濃く反映された。

 2)トランプ関税前の駆け込み輸入増、消費支出減少が響いた。

●4.米国ADP民間雇用、4月+6.2万人増に鈍化、予想+11.5万人、3月+14.7万人(ロイター)
●5.トランプ氏、就任100日の経済成果を誇示、FRB議長には金利下げで批判(WSJ)
●6.GMにトランプ関税の影、業績見通し撤回し自社株買いを保留(ブルームバーグ)
●7.米国財務長官、米国への回帰企業に税優遇(工場・設備の全額償却)も(ロイター)
●8.米国求人件数、3月は719.2万件、予想748万件、労働需要の減退示唆(ブルームバーグ)
●9.トランプ大統領、関税で政府歳入増えれば「所得税廃止できるかも」(TBS)
●10.トランプ氏の支持率は就任100日を前に歴代最低、失速が鮮明(読売新聞)
 1)ワシントンポスト調査で支持率39%と、1〜2期を通じ最低水準、不支持率は55%。
 2)トランプ関税支持率も34%、不支持率64%と不人気が浮き彫りとなった。

●11.米国財務長官、トランプ氏と中国国家主席との協議は「承知せず」(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
 1)4/28、上海総合▲6安、3,288
 2)4/29、上海総合▲1安、3,286
 3)4/30、上海総合▲7安、3,279

●2.米国財務長官、中国1,000万人の雇用喪失も、関税の影響で(ロイター)
●3.中国外務省、米国・中国首脳の電話会談を否定「関税交渉せず」(ロイター)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
 1)4/28、日経平均+134円高、35,839円  
 2)4/29、祝日「昭和の日」のため休場
 3)4/30、日経平均+205円高、36,045円  

●2.日本株:日経平均は、海外短期投機筋の株価指数先物主導で上げてきたが、胸突き八丁
 1)4/30、米国の自動車関税の負担軽減を好感し上昇し、36,000円台を回復。

 2)3月期決算発表で好業績・自社株買い・増配の銘柄が買われ日経平均を押し上げ。

 3)日経平均は、海外短期投機筋の株価指数先物主導で上げてきたが、胸突き八丁
  ・日経平均は昨年12/27高値から切り下げ、4/7底値から切り上げてきた。そして4/30に36,045円を付け、戻り目標を達成した。そのため、12/27から始まった下方支持線に接したため、上昇が続けられるか試されるポイントにある。

 4)石破首相、経済対策は公明党提案も与党として考えず、立民の消費減税案を疑問視
  ・石破首相の問題に対する認識
   ・トランプ関税による不景気、高騰するガソリンやコメの価格対策に対して石破首相は「まずはきちんと対策を講じることが大事だ」と強調。
   ・立民の消費減税案に石破首相は「事業者が短い期間でシステム変更できるか?事務負担はどうかという問題がある」と指摘した。

  ・石破首相の意識レベルは「官僚事務方レベルの問題認識」である。国民が今、困っていることの解決について真正面から向き合っていない。コメ価格は5/1からスーパーでは5キロ・5,000円を超える値段に引上げる。高価格となった昨年8月に比べても2.2倍程度に高騰している。農林水産大臣は、コメ価格引き下げるために、備蓄米を放出した。備蓄米を放出しながら、コメ価格が上昇するとはどういうことか。備蓄米の放出についても、入札方式だが、高値で入札した業者に放出している。しかも、最大の利益団体である農協に9割以上を放出した。農協から市中に出回るコメの量は4/13時点で放出量の2%弱という。これでは、コメ価格は下がらない。仕事ができない農林大臣の、任命責任は石破首相にある。スーパーなどは、すでにベトナムや米国からコメ関税を支払っても輸入して消費者の要望に応えようとすでに動いている。

  ・石破首相は、野党などの提案に対し、後から否定的発言に終始するばかりで、彼の前向きな提案を聞きたい。石破首相は、国民の生活に寄り添っていただきたい。

●3.三菱UFJ、2025年3月期純利益は前期比+24%増と上方修正、期末配当引上げ(ロイター)
●4.商船三井、今年純利益▲6割減を予想、米国関税と円高を織り込む(ロイター)
●5.5月の値上げ予定478品目、年間値上げ20,000品目ペース(テレ朝)
●6.コメ不足感「改善せず」、スーパーの平均価格は5キロ4,220円に(NHK)
●7.オリエンタルランド、昨年度は過去最高益、今年度は減益の見通し(NHK)
●8.日立、今年度最終利益は7,100億円と米国関税適用でも過去最高の見込み(NHK)
 1)米国関税で▲350億円の利益下押しされる。

●9.レーザーテック、前四半期から営業利益▲7割弱減、通期は据え置き(NHK)
●10.ソシオネクスト、2026年3月期営業利益▲44%減を予想、円高を前提(ロイター)
●11.ニコン、2025年3月期予想を▲115億円下振れ+45億円、半導体露光装置で減損(ロイター)
●12.コマツ、円高や関税で今期▲27%営業減益予想、市場予想下回る(ロイター)
 1)2026年3月期の営業利益は前期比▲27.3%減の4,780億円の見通し。予想6,278億円を下回った。
 2)トランプ関税の影響は2026年3月期で785億円。(ブルームバーグ)
  米国で販売する建機や部品の約半分を米国外で生産し輸入している。トランプ関税は年間1,400億円だが、今期は在庫が5ヵ月分保有しているため785億円となる。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でい願いします)
 ・2685 アダストリア  業績好調
 ・6367 ダイキン    業績堅調

財経新聞

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