「不動産開発は今が踏ん張りどころ」東急とJR東日本のトップが明かした“東京改造計画”〈40年ぶり対談〉
2025年5月9日(金)9時30分 文春オンライン
東京で不動産価格の高騰が続く中、鉄道各社が大規模な不動産開発に力を入れている。東急の堀江正博社長とJR東日本の喜㔟陽一社長が「文藝春秋」6月号(及び 「文藝春秋PLUS」 )で 対談 。東京の魅力や国際競争力をさらに高めるために必要な施策について語り合った。

不動産開発は「今が踏ん張りどころ」
コロナ禍に伴うリモートワークの普及などで大打撃を受けた鉄道事業。いま、両社ともに不動産を含む非鉄道事業に力を入れている。JR東日本は3月27日に6000億円を投じる「TAKANAWA GATEWAY CITY」(高輪ゲートウェイシティ)をまちびらき。東急も渋谷・東急百貨店本店の跡地に地上34階建ての大規模複合施設を建設中だ。
一方で、大型開発のネックとなっているのが、人件費や資材費を含めた建設費の高騰である。この影響について、堀江氏は「コスト増がプロジェクト収支に大きなインパクトを与えることは間違いありません」としつつ、こう語った。
「ただ、私は今が踏ん張りどころだと思っているんです。例えば、中野サンプラザ跡地の再開発が資材費の高騰でストップしたように、今後もそういうケースは増えていくでしょう。すると結果として需給は逼迫していく。ここは歯を食いしばって、シェアを取りにいく局面だと考えています」
喜㔟氏も「まったく同感ですね」としたうえで、個別のセグメントの収益だけを考えていては駄目だと指摘した。
「私は、プロジェクト単独で考えるのではなく、鉄道事業との相乗効果も含めてプロジェクト判断をするべきだと考えています。高輪ゲートウェイ駅は、まちが開業する前の乗降客数は1日2万人弱でしたが、フルオープンすれば、24、25万人と10倍以上になることが見込まれる。さらに言えば、駅とオフィスビルが直結することで、賃料は周辺相場の1.5倍ほどに価値が上がります」
約40年ぶりのトップ対談
実は、両社のトップ同士の対談が活字になるのは、約40年ぶりとのこと。
堀江氏が語る。
「1982年に出版された『私鉄経営に学ぶ』(交通協力会)で、高木文雄国鉄総裁と東急社長の五島昇が鉄道事業と不動産開発のありかたを議論して以来だと思います」
喜㔟氏は前日までに『私鉄経営に学ぶ』を2回、読んで今回の対談にのぞんだという。
「対談というよりは、東急さんに学ぶ企画ですね。国鉄は、国営であるがゆえに、組織が硬直化し、巨額の赤字も抱えていました。収益力を高めるための、ビジネスモデルを教えてもらっている」
「文藝春秋」6月号(5月10日発売)及び「 文藝春秋PLUS 」(5月9日公開)に掲載された対談「 これからの東京改造計画を話そう 」では、共同開発を手掛けた渋谷スクランブルスクエアの第2期工事の展望や、羽田空港や成田空港へのアクセス向上策に加え、今後、人口集中が進むとみられる東京でイノベーションを起こすためのアイデアなども語られている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年6月号)