「しんじょう君」でゆるキャラ頂点、ふるさと納税で会社成長…「東京より稼ぐ」社訓に全国30か所展開

2025年5月19日(月)13時47分 読売新聞

新入社員らと伊勢神宮を参拝する守時社長(左から3人目、三重県伊勢市で)

 人気の高知県須崎市マスコットキャラクター・しんじょう君を運営する会社「パンクチュアル」(須崎市)が急成長している。ふるさと納税事業で業績が伸び、5年前の創業当時、従業員は数人だったが、この4月には約260人に増えた。全国30か所以上に営業所を設け、本当の地方創生を展開する。社訓はこうだ。「東京より稼げて、東京より楽しくて、東京よりかっこいい仕事をする。」(小野温久)

 「年齢や経験に関係なく、成果を正当に評価し、新卒2年目で管理職になることもある。みなさんに大きなチャンスがひらかれている」。4月中旬、同社が営業所を置く自治体の一つ、三重県志摩市で開いた入社式で、しんじょう君の生みの親である守時健社長(39)が新入社員60人を含む約200人を前に訓示した。

 今春、信州大学を卒業して入社した愛知県出身の男性(23)が「世界と戦える地域をつくる」と決意表明。大学時代、信州そばで知られる長野県安曇野市の土地柄にひかれ、この町を世界に広めたいと思うようになった。就活中、パンクチュアルの担当者にその思いを話すと、「じゃあ自分で作ろう。一緒にやろう」と気持ちを後押しされ、入社を決めたという。

 式に先立ち全社員が恒例の伊勢神宮参拝をした。高知市出身で愛媛大学卒の女性(22)は荘厳な雰囲気の参道を歩き、気持ちを引き締めた。「大企業は自分のやりたいことが実現できないように思える。パンクチュアルは社長との距離が近くてやりやすい」

 社員は若手が中心で大半が20歳代〜30歳代。設立当初から須崎市のふるさと納税業務を受託し、寄付額を増やす。23年度は過去最多の34億円に上った。実績に裏付けられたノウハウをうちにもと自治体から業務依頼が相次ぐ。受託1年後の寄付額は平均2・5倍を実現させた。

 守時社長は、ウェブ検索の特性を踏まえて上位に表示されやすくする「検索エンジン最適化」(SEO)や商品開発など独自のテクニックが必用だといい、「地元に密着しているので仕事のスピードも速くなる」と力説する。

 島根県出身で須崎市営業所で働く入社2年目の女性(25)は「地元の人と考えた返礼品に寄付が入った時の喜びは格別」とやりがいを感じつつ、「将来は古里の島根に営業所を設けたい」と夢を語る。

 「寄付額は15億円を突破した」。入社式に引き続いて行われた社員総会に来賓で出席した志摩市の村上圭一副市長が24年度のふるさと納税の見込み額を報告した後、「数年後は100億円を目指す」と宣言した。

 同市では23年度に過去最多の9億8139万円を達成したが、さらなる高みへと、同社と企業立地協定を結び、業務を委託すると、1・5倍にアップしたという。村上副市長は「あるモノを磨き上げて商品にし、クリエイティブに情報発信する手法は市役所ではできない。高単価な層だけでなく、商品を充実させ1万〜2万円の層を多く取り込むことができたことが大きい」と評価する。

 「市職員を経験していたから役所では難しいだろうなということがわかる」と守時社長。今後も挑戦の手を緩めない。地域おこし協力を活用した事業承継や、第3セクター運営など、相乗効果の出せる地方創生の仕組みをさらに広げていくつもりだ。

◆守時健(もりとき・たけし)=岡山県出身。大学の頃に須崎市を旅行したことがきっかけで市職員となり、自ら手がけたしんじょう君が2016年の「ゆるキャラグランプリ」で頂点に。ふるさと納税の寄付額も年間10億円に引き上げた。8年勤めた市職員を辞め2020年3月にパンクチュアルを設立。コロナ禍にはしんじょう君の知名度を生かし、消費が落ち込む特産品業者を応援するサイトは約2か月で約1億7000万円を売り上げた。昨年には、同社が第19回ニッポン新事業創出大賞の地方創生賞を受賞した。

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