青果卸トップ企業・東京青果に反旗!株主提案した仲卸社長が暴露する「役員の横領を隠蔽」疑惑と市場改革の覚悟
2025年5月27日(火)4時50分 ダイヤモンドオンライン
青果卸トップ企業・東京青果に反旗!株主提案した仲卸社長が暴露する「役員の横領を隠蔽」疑惑と市場改革の覚悟
おおたけ・やすひろ/1973年東京都生まれ。96年東海大学卒業後、大果大阪青果入社、98年東京青果入社、2000年祖父が1948年に設立した東京促成青果に入社、05年東京促成青果代表取締役に就任、17年一般社団法人ChefooDo(シェフード)を設立、代表理事に就任。日本の食材や日本の食文化に対してこだわりのあるシェフを組織化し、 日本の食文化や食産業の活性化に取り組んでいる。 PhotobyHirobumiSenbongi
青果物卸売り最大手の東京青果が揺れている。筆頭株主である東京促成青果からガバナンス不全を指摘され、株主提案を受けているのだ。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#21では、東京促成青果の大竹康弘社長のインタビューをお届けする。東京青果の株主対応の問題点や、卸売市場のDX構想について余すところなく語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
対話を拒否する東京青果は「企業の体を成していない」
——株主提案に至った理由を教えてください。
発端は、東京青果の社員から「社内で横領をした取締役がいるのに、経営陣がその説明責任を果たしていない」という声が私に届いたことです。この不祥事について、東京青果の従業員組合が(経営陣に)文書で説明を求めましたが、会社側は「文書での回答は行わない」という姿勢で、納得のいく対応をしていないとのことでした。
訴えを受けて、私は1月14日、東京青果の川田光太社長を訪ね、「取締役による不祥事はあったのか。どのような対応をされたのか」を確認しました。不祥事があったことを認め、「降格処分にした」「報酬を返上させた」などの説明があるものと期待していましたが、明確な説明はなく、社長自身が「1カ月以内に回答する」と約束したにもかかわらず、期限が過ぎても何の連絡もありませんでした。その後、(光太社長の父の)川田一光会長にも面談を申し入れましたが、「会えない」の一点張りでした。
一方で、東京青果の監査役に確認したところ、「不祥事は確かにあった。監査役として執行側に意見は伝えた」とのことでした。つまり、不祥事の存在自体は東京青果内で共有されていたのです。
にもかかわらず、今に至るまで当該取締役への具体的な処分内容は公表されず、従業員や株主への説明もないままです。
こうした経緯の中で、中堅社員の皆さんからは、「このままでは若手の優秀な社員たちが会社を見限って辞めていく」「中間層のマネジャーとしても、組織への信頼を保てなくなる」といった声が寄せられ続けました。
一光会長と光太社長は、(東京青果の議決権を14.2%保有する筆頭株主である)われわれとの接触や、株主提案に関する説明会への出席を禁止するだけでなく、説明会の動画配信などを部下に見させないよう指示したそうです。私は率直に、自由な議論などを封じられている東京青果の従業員の皆さんのことをふびんに思います。そのような環境で、会社のことを思って働けるものなのか、仕事で社会に貢献しようと思えるものなのか、と疑問に感じざるを得ません。
ただし、そういった状況下でも、会社を良くしようと勇気を持って私に話をしにきてくれる社員がいることは本当に頼もしいですし、そのような社員がいる限りは、筆頭株主として、何としてもガバナンスを正常化したいのです。今回、株主提案を行うに至ったのは、当たり前のことを当たり前にできる、自由闊達に議論ができる会社にしたいと考えたからです。
——大竹さんが5月10日に開いた説明会では、株主提案の中で取締役候補として推薦されている女性経営者が、東京青果が筆頭株主との対話を拒んでいることについて「会社・経営の体を成していない」と厳しく批判しました。日本を代表する東証プライム市場上場企業の社外取締役を務めたこの経営者の指摘は重いと思います。
その通りです。東京青果はわれわれに誠意ある回答をしないだけでなく、ガバナンスを立て直そうという意思も見受けられません。6月3日の株主総会の招集通知を見ると、前述の横領を行った役員が再び取締役候補者として挙げられている他、ハラスメントを行い、処分を受けた別の役員も取締役候補者として残っています。
これら2人の取締役に対して会社がどのような説明責任を果たすのか、どのように対処するのかが、東京青果のガバナンスの本質を示すことになると考えています。
「信賞必罰」は組織運営の基本です。とりわけ、経営幹部の不祥事には極めて厳正な対応が求められることは言うまでもありません。それを怠れば、従業員は経営陣の言葉を信じなくなります。まさに“組織の信頼の土台”に関わる問題だと思っています。
東京青果の規律が揺らいでいることは、大田市場自体の風紀の乱れにつながっています。将来的に、市場の信頼を大きく損ねるような事件、不祥事が起こるのではと危惧しています。