【インタビュー】笠松将、役者としての“現在地”と私生活の“喜怒哀楽”

2022年2月26日(土)10時0分 シネマカフェ

笠松将『リング・ワンダリング』/photo:Maho Korogi

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笠松将の活躍が目覚ましい。作品においてスパイスとなるような人物でも、裏がありそうなあやしい人物でも、クールにたたずむ人物でも、それがどんなキャラクターであろうと、笠松さんはすべて生き生きと、どんなものだとやり切る。こちらが思わず見惚れてしまうほどに。

近々の出演作「ムチャブリ!わたしが社長になるなんて」、「岸辺露伴は動かない」、「青天を衝け」、「君と世界が終わる日に」、「FOLLOWERS」などざっと振り返ると、どこでミートしたかにより、彼の印象は大きく変わりそうだ。事実、「ムチャブリ!」の颯爽とした雰囲気の御曹子・野上豪からは、到底「岸辺露伴」の肉体改造に憑りつかれた橋本陽馬の姿は想像もできない。そのふり幅は大きな武器と言えるし、研鑽を積んだ演技力のたまもののはずだ。

「そんな風に言ってくださることは、すごく嬉しいです。 “よかったよ”“おもしろかった”という声をかけられることもありがたいんですけど、実は…自分ではよくわからないことも多くて。でも“笠松くんってこういう感じだよね、こういう芝居だよね”と思われると、真逆にしたくなる気持ちが湧いてくるんですよね」。

その言葉は、まだまだ可能性を秘めている自身の伸びしろ、自分のできることを探っていきたいという笠松さんの俳優としての渇望や挑戦心のあらわれと取れる。まだ見ぬ運命的な作品との出会い、毎回訪れる刺激的な人たちとの出会いへの期待。だからこそ、出演作については毎度担当マネージャーさんと「むちゃくちゃ話し合う」そうだ。

「時間は有限ですし、身体もひとつなので、どの作品をやるのかは本当に、もう…すごく迷います! たっくさん面白そうな作品があるから、マネージャーと毎回むちゃくちゃ話し合って決めます。結果、自分がやりたい作品が選ばれることもあれば、今の自分に足りないから選ぶ作品、というのもある。いろいろなパターンがありますね」。

ひとつひとつ真剣に選び向き合った作品の積み重ねで、キャリアが形成されてきた。「何人もの俳優がいて、ピンポイントで僕にこの役が合うと信じてくださる、それってすごいことだなと思うんです」と語る生き生きとした表情が、何よりも充実の今を物語っていた。



「共演者の皆さんや監督、いろんなスタッフの顔を見たら、何でもできる気になる」

そんな笠松さんが主演する映画『リング・ワンダリング』が、2月19日より全国にて公開中。漫画家を目指す主人公・草介(笠松さん)が、アルバイト先の工事現場で発見した遺物をきっかけに、同じ土地でかつて生きていた人たちの世界へ迷い込み、命の重さを知るという幻想的な物語。現実と過去、漫画という3つの世界が交錯し、静かに熱を帯びる展開に心が奪われる。笠松さんの丁寧で繊細な表情、演技も光った。

「僕が言うのもおこがましいんですけど、金子監督の魅力がつまった、本当に面白くて、いい作品だと感じています。完成作を観たとき、自分の過去も回想して、いろいろなことを考えたんです。メッセージを押しつけるわけではなく重くならずに、これからの自分の在り方を考えられるようなきっかけになる1本になっていて。観た方が、それぞれ違った感じ方ができる作品になったんじゃないかな、って」。

撮影したのは2020年の冬とおよそ2年前。撮影中は金子監督とコミュニケーションをよく取っていた。

「監督はすごく静かで、僕みたいに口数の多いタイプではありません。現場で“監督、僕はこうしたいんですが、どうですか?”と提案しても、譲らないところは絶対譲ってくれませんでした。監督が“いや、これでいきます。これが面白いです。笠松さん、大丈夫ですよ”とずっと言ってくださっていて。しっかり取捨選択してくださった結果、完成した作品を観て“本当にそうだ! 監督すごい!”と興奮しました」。

演じた草介は、強いこだわりを持ち漫画家を目指している青年。草介のための役作り、行ったことはと聞くと、特別なことはしていない、という。草介に限らず、ほかのどの役でも笠松さんは「事前に意識して感情は作らないし、その役というものもまったく作らないんです」と説明した。

「もちろん、その役に必要な特殊スキルは僕に足りないものだから習得する必要があるけれど、それは役作りでも何でもなく、セリフを覚えるのと同じだと思うんです。役については、何て言うか…脚本を読んだら勝手にその気持ちになるんです。少年漫画を読んだらワクワクするし、恋愛の映画を見たらちょっと恋したくなるじゃないですか? その感じに近くて。だから『リング・ワンダリング』の脚本を読んで、そのことばかりを考えて現場に行ったら、もうその気持ちなんです」

「あとは、僕がどんなに作っていったとしても、一朝一夕で作ったキャラクターなんて、お客さんに絶対バレるし、監督にも見透かされる。だったら、そこにいてくれる共演者の皆さんや監督、いろんなスタッフの顔を見たら、そういうモードになるんです。きれいごとっぽいですけど、本当にそう。その人たちの顔を見たら、何でもできる気になるから」。

おしなべて、どの作品においても、その人物になり切っている印象を受ける笠松さん。彼の演技のヒントが、その姿勢から少し見えたような気がした。



謎めいた私生活、最近の笠松さんの“喜怒哀楽”とは…?

本稿では俳優・笠松将について、自身の語るいくつかの言葉で、ほんの一部を覗かせてもらった。饒舌に話し続けてくれた笠松さんだが、スクリーンを離れたところの素顔はと言うと、意外に知られていない。素の笠松さんに迫るべく、最近の“喜怒哀楽”を尋ねると、「表で言える用ですよね(笑)?」と楽しそうな表情を浮かべ、次々に答えてくれた。最後にお届けしたい。

【喜】ネコを2匹飼っているんです。白い男の子がサメ、女の子がウニ。朝起きたとき、両隣りに美男美女がいてくれたときは、“俺、めちゃくちゃ幸せだな〜〜”と思います!

【怒】サメはお腹がちょっと弱いので、毎日薬を飲ませなきゃいけないんです。毎日サメくんと「ちょっと頑張ろうか」と話し合っています。頑張って錠剤を飲んだらどういうメリットがあるのか、飲まないと今後どうなるか、全部話してから飲ませるんです。…でも、口に入れたものを吐くのが、むっちゃうまいんですよ(笑)。そうしたら抱きかかえて、1回怒ります。毎朝やっていますから、大変です…。

【哀】そのサメくんが、うんちをするときに、お腹が弱いから苦しそうなんです。僕も近寄っていって、サメをさすりながら「頑張ろうねー」と言っています。本当に大変そうだから、「頑張って薬をあげよう、病院に連れて行こう」と思うので、ちょっと哀しくなるかな。

【楽】へったくそなんですけど、趣味でギターを今弾いています。ネコって、ギターの音や動きがめっちゃ好きみたいで、僕が弾いていると隣で2匹が「ニャー、ニャー」と歌ってるんですよ、まじで! やめると、「もっとやってー」という感じで言ってくるから、そのときはやっぱり嬉しいですね。

全部猫でまとめた軽妙なトーク。オンとオフのギャップも魅力の笠松さんから、今後も目が離せない。

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