夢咲ねね「宝塚トップ娘役を姉妹で経験。今も家事を分担しながら、愛犬たちと一緒に暮らして。卒業から10年、ずっとニュートラルな自分でいたい」

2025年4月3日(木)12時30分 婦人公論.jp


夢咲ねねさん

宝塚歌劇団の星組で、2009年から6年にわたりトップ娘役として活躍した夢咲ねねさん。退団後は『1789−バスティーユの恋人たち』『グレート・ギャツビー』などの舞台に次々と立ち、この春はミュージカル『ホリデイ・イン』に出演する。今回の舞台は宝塚時代にコンビを組んでいた柚希礼音さんと退団後初共演。退団から10年目の節目を迎えた夢咲さんに、今回の作品にかける思いや宝塚時代の思い出、また、同時期に雪組の娘役トップを務めた妹の愛加あゆさんとの姉妹関係についてもお話を伺った(構成:内山靖子)

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ちえさんは「頼れるお姉さん」


4月1日から上演される『ホリデイ・イン』は1940年代の古き良きアメリカの香りが漂うハッピーなミュージカルです。悪人はひとりもおらず、私が演じるライラという女性もとってもポジティブ。

野心にあふれ、ショービジネスの世界で夢を叶えるためならどんなこともいとわずに、自分の欠点さえもプラスに変えていく。ささいなミスでくよくよしがちな私とはまったく性格が違うので、ライラを演じることは大きな挑戦になりそうです。

さらに、今回は宝塚時代に6年間コンビを務めたちえさん(柚希礼音さん)と、退団後初めてのミュージカルでの共演。2人で一緒に登場するシーンはそれほど多くはないものの、女性対女性として新しい形で共演できるのが嬉しいです。

男役でも女性の役でも、ちえさんは常に自然体。私にとっては頼れるお姉さんのような存在だと勝手に思っているので(笑)、今回もたくさん甘えさせていただこうと思っています。

退団後は見える風景が変わった


そんなちえさんと宝塚時代は一心同体のように過ごしていたので、娘役トップを務めていたときも、舞台の初日前に緊張することはまったくありませんでした。ちえさんという大船に乗っていればすべて大丈夫だろうと頼りきっていたんですね。

それが、宝塚を退団して自分ひとりだけの個人戦になったとき、初めて舞台の初日に緊張するようになりました。あれ? 宝塚時代はぜんぜん緊張しなかったのになぁって。それだけ、ちえさんに支えてもらっていたのでしょう。

その反面、それまで背負っていた重圧から解き放たれた感覚も味わいました。宝塚時代には、娘役トップの責任感とプレッシャーを常に感じて、自分で自分を追い込んでしまっていたので。それこそ、私がひとつミスをしたら組全体のマイナスになり、まるで「世界が滅びる」くらいの失敗に感じてしまって。

でも、退団してからは「自分のミスは自分自身の問題」だと、ある意味、肩の力が抜けたと言いますか。おかげで、舞台の上で自分がやるべきことに全力で集中できるようになり、この10年間で見える風景が変わってきたのだと思います。

自由な姉としっかりものの妹


振り返ってみれば、音楽学校時代も含めて、宝塚で過ごした12年間は私にとって激動の時代でした。目が覚めてから、夜、眠りに着くまで、宝塚のこと、舞台のことしか考えていませんでした。中学生の頃に憧れた大好きな世界に自分がいるのだと、「24時間じゃ足りない!」っていうくらいのめり込み、それこそ夢のような12年間だったと思います。

とはいえ、妹が「私も宝塚に入りたい」と言った当初は大反対しました。夢のように華やかな世界ではあるけれど、その世界を創り上げるためのレッスンはとても厳しいですからね。辛いこと、苦しいこと、泣きたいこともたくさんあります。その厳しさを、妹に味わわせたくなかったんです。それでも妹が本気で入りたいと言うので、私も全面的にサポートしようと決めました。

実は、私と妹はかなり性格が違います。子どもの頃から、私は自分の好きなことにしか興味がなくて、自分の希望をかなえてもらうために両親に直談判することもしょっちゅうで。たとえば、母とお買い物に行ったときに欲しい物を見つけたら、「買ってほしい!」と母が買ってくれるまで説得し続けて、それこそ泣くこともよくありました(笑)。で、妹はそれを見て「お姉ちゃん、もうやめたほうがいいよ」って、冷静に言うタイプ(笑)。赴くままの自由人な姉を見て、自分はいい子にしなきゃと思ったのかもしれません。

退団後に、2人でディナーショーのお仕事をしたときも、私は直前にならないと練習する気が起きないのに、真面目な妹は毎日練習したりとか。自由でワガママな姉と違い、優等生でしっかり者なんですね。

姉妹で励まし合って、娘役トップを務めて


それだけ性格の違う私たちが、2人とも娘役トップとして舞台に立たせていただくことになり、両親はとても喜んでくれました。姉妹が同時期に娘役トップになるというのは、宝塚史上でも初めてのことだと聞きました。恵まれたケースでありがたいと思う反面、私も妹も、自分に課せられたプレッシャーは並大抵ではなかったですね。

しかも、「トップは孤独」と言われるように、うかつに愚痴や弱音を吐くわけにはいきません。幸いなことに、その頃は妹と一緒に住んでいたので、他の誰にも相談できないような悩みを聞いてもらったり、お互いに励まし合い、支え合ってきたことで、なんとか頑張ってこられたのだと思います。

退団後は別々の家に住んでいたのですが、コロナ禍を機に再び妹と一緒に暮らすようになりました。性格は違うけど、とっても仲良し。ライバル心なんて、まったくありません(笑)。お互いの舞台を観に行ったり、新しい仕事の相談をし合ったり。姉妹と言うより、親友のような関係です。

家事の分担はとくに決めていませんが、お洗濯が好きなので洗濯や水関係は私が、こまめに掃除をする妹は掃除担当と自然と得意な分野が分かれています。地方公演のときなど何日も家を空けることがあるので、愛犬のチワワたちのお世話も、2人で住んでいれば安心ですしね。

ずっとニュートラルな自分でいたい


今年で、宝塚を卒業して10年目。目指しているのは、いくつになっても「白」でいられる女優です。その時々の役柄によって何色にでも染められる。そんなニュートラルな存在でいることを常に心がけるようにしています。

宝塚時代も、私にはロールモデルがいませんでした。もちろん、素敵だなと憧れる先輩はいましたが、その人の真似をしてみても、結局、「自分は自分」で上手くいかないことが多かったのです。

だったら、まずは自分自身を知ることが一番だと。自分のいいところも、ウィークポイントもきちんと把握して、それを演技に活かしていけばいいんだなって。この先、どんなお芝居と巡り合うかはわかりません。自分の可能性を広げていくためにも、ずっとニュートラルな自分でいたいと思っています。

婦人公論.jp

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