『べらぼう』田沼意次&長谷川平蔵の共闘に視聴者最注目 第13話画面注視データを分析
2025年4月6日(日)6時0分 マイナビニュース
●タッグを組んで既得権益にメスを入れる胸アツ展開
テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、30日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(総合 毎週日曜20:00〜ほか)の第13話「お江戸揺るがす座頭金」の視聴分析をまとめた。
○意次の屋敷では田沼の一派が集結
最も注目されたのは20時29〜31分で、注目度73.8%。田沼意次(渡辺謙)が率いる田沼一派に長谷川平蔵(中村隼人)が合流するシーンだ。
意次の屋敷では田沼の一派が集まり、松本秀持(吉沢悠)が検校や当道座の財についての報告を精査していた。秀持の調べによると検校はすさまじい蓄財をしており、その額はまともな方法で得られるものではなかった。続いて西の丸について、長谷川平蔵宣以の報告書を確認しようとしたところで、平蔵本人が急ぎの知らせを持ってやってきた。
平蔵の知らせとは、西の丸小姓組の森忠右衛門(日野陽仁)が逐電した恐れがあるというものだった。忠右衛門は勤勉で西の丸にも目をかけられている人物だという。意次はただちに忠右衛門の捜索を秀持に依頼すると、秀持は平蔵に助力を求め2人は即座に捜索に向かった。
後日、第十代将軍・徳川家治(眞島秀和)のもとへ、長男・徳川家基(奥智哉)が呼び出された。家基は意次が同席していることを不快に感じたが、家治は意次から家基へ進言したい儀があると告げた。渋々承諾する家基に意次は頭を下げると、意次は2人の人物を部屋へ招き入れた。その内の1人はなんと、僧形となった森忠右衛門であった。
○「田沼意次の密偵っていうのが熱い」
注目された理由は、意次と平蔵という人気キャラクターの共闘に、視聴者の注目が集まったと考えられる。
秀持の調査した検校の蓄えた財は想像をはるかに超える額だった。また、家督の乗っ取りというとんでもない手段で利益を得ていることが明るみに出た。さらに、家基の信任も厚い忠右衛門が、借金が原因で逐電(※逃げて行方をくらます)するという問題まで浮上。座頭金の毒牙はすでに将軍家の身近なところに迫っていた。
SNSでは、「平蔵、いい仕事したね。田沼意次の密偵っていうのが熱い」「当道座という、不可侵の領域に触れる意次。ほんとに大博打に出たな」「追いつめられている田沼派だけど、人材は優秀!」と、意次と平蔵がタッグを組んで巨大な既得権益にメスを入れる胸アツ展開にコメントが集まった。今後の2人の活躍が楽しみだ。
今回その実態がクローズアップされた盲人だが、江戸幕府の開祖・徳川家康の意向によって保護されてきた。家康が盲人を保護したのは、土屋円都や、側室・西郷局が深く関わっている。家康は幼少期に駿河・今川義元のもとで人質生活を送っていた際、円都と出会い親交を結んだ。円都は幼少時に眼病で失明している。1541(天文10)年の生まれで、1542(天文11)年生まれの家康とは同年代。のちに検校のトップである惣検校を務めた。西郷局は極度の近眼ということもあり、盲目の人々に同情し、衣服や飲食を施し生活を援助する。二代将軍・徳川秀忠と松平忠吉の生母として、徳川家の発展に尽くした。
そして当道座は幕府から盲人の生活を支えるための経済的な手段として金融業が認められていた。それが座頭金だ。幕府公認の制度であったため信頼性があり、庶民だけでなく旗本や大名など幅広い層が利用した。しかし非常に取り立てが厳しく、しかも返済期限が短く高利だった。
森忠右衛門は実在の人物。作中では座頭金に手を出してしまった様子が描かれたが、史実では、他からも金を借り多重債務に陥っていたようだ。家族とともに逐電すると、従兄弟が住職を務める唯念寺に逃れ、出家して医者に身分をあらためる。当時、医者には現代のような医師免許制度は存在せず、誰でも医師を名乗ることができたのだ。しかし、幕医・須磨良川が盗賊騒ぎを起こして捕らえられるという事件が発生し、その一味ではと疑われることを懸念して、上役だった小姓組番頭・森川俊清の元へ出頭した。その後の町奉行の捜査で逐電の理由が明らかとなり、座頭金の実態が注目された。忠右衛門は出頭後、牢でほどなく病死する。
学問に明るく、達筆でもあった忠右衛門だったが、その最期を知った人々は「学問も役に立たないものだ」とうわさしたそうだ。息子の森震太郎(永澤洋)も逐電の罪に問われ、改易の上、追放となった。いつの時代も借金は恐ろしいものだ。
●鳥山検校の刃を自分に向けさせる
2番目に注目されたのは20時42分で、注目度73.4%。鳥山検校(市原隼人)が刀を持ち出し、お瀬以(小芝風花)と蔦重を引き離そうとするシーンだ。
鳥山検校の頭から、蔦重と話すお瀬以の明るく弾んだ声が離れない。嫉妬に駆られる鳥山検校はついにお瀬以を書庫に監禁。使いを出して蔦重を自邸に呼び出す。鳥山検校は刀を用意して、なりゆき次第ではお瀬以と蔦重を不義の罪で刺し殺すつもりだった。
鳥山検校から執拗に蔦重との関係を追及されたお瀬以は、「そう。仰せのとおりでござりんす。重三は、わっちにとって光でありんした」と、蔦重への想いを白状しつつも、同時に自分を誰よりも大事にしてくれる鳥山検校への気持ちも伝える。「けんど、この世にないのは四角の卵と女郎のまこと。信じられぬというなら、どうぞ…ほんにわっちの心の臓を奪っていきなんし!」鳥山検校を苦しめてしまうばかりの自分が許せないお瀬以は、そう叫びながら鳥山検校に抜いた刀を持たせ、その刃を自分に向けさせた。
○「小芝風花さんの演技にもらい泣き」
このシーンは、小芝風花の鬼気迫る演技に視聴者が惹きつけられたと考えられる。
鳥山検校の蔦重への嫉妬心は、刃傷沙汰も辞さないところまで燃え上がっている。お瀬以への愛情が強すぎるがゆえにここまでの事態に発展した。渦中のお瀬以は自分の本心を取り繕うことなくさらけ出す。そこにいたのは、お瀬以ではなく、花魁・瀬川だった。泣きながら、蔦重と鳥山検校への想いを訴えるシーンは強く視聴者の目に焼きついた。
SNSは「小芝風花さん演じる瀬川、鳥山検校に対しての毅然とした態度、かっこよかった!」「魅力的な登場人物が多いけど、小芝風花さん演じる瀬川が1番! 登場するたびに圧倒される」「小芝風花さんの演技にもらい泣きしちゃった」といった小芝風花の演技力を絶賛する声であふれた。すでに小芝はクランクアップしているそうだ。お瀬以がどのように退場するのか、最後まで見逃せない。
不義とは、男女の道義に外れた関係を指し、密通とは、既婚・未婚を問わず、男女がひそかに通じ合うことを意味する。つまり不義密通とは、夫のある女性が他の男性と性的関係を持つことを指す。
江戸時代の不義密通は、現代の不倫よりもさらに、重い罪として扱われていた。江戸時代は家父長制が強く、家の存続が重視されたため、家の存続を脅かす重大な罪とされた。妻の不貞が発覚した場合、夫は妻と相手の男性を殺害しても罪に問われなかった。同様に娘の不貞を父親が発見した場合には相手だけではなく、娘の殺害も認められており、これは親権の侵害と侮辱行為にもあたると考えられたからだ。
しかし実際には死罪はあまりにも重すぎるため、離縁や金銭による解決が一般的だった。罰金は首代(くびしろ)と呼ばれ、江戸では約7両2分が相場だった。現代の貨幣価値になおすと約72万5千円になる。現代の不倫の慰謝料の相場が50万〜300万ほどだから、かなり近い金額だ。
作中では幕府が札差の高利貸しを禁じ、そのために座頭金に手を出したという経緯が説明された。札差とは、江戸時代の武士、特に御家人や下級武士に対して、俸禄である蔵米の受け取りと換金、さらに高利貸しなどを行っていた金融業者で身分は商人。武士が給料としてもらえる米の量は変わらず、米の値段自体が下がれば、結果的に手にできる金額は減る。現代の日本も給料の額は変わらず、円そのものの価値が下がっているから同じ状況だと言える。
●何を言ってもすれ違う鳥山検校とお瀬以
3番目に注目されたシーンは20時26分で、注目度73.3%。何を言ってもすれ違う鳥山検校とお瀬以のシーンだ。
鳥山検校はお瀬以を書庫に連れ出した。本が好きなお瀬以は、たくさんの本を前にして喜んでいるが、以前、屋敷を訪ねてきた吉原者たちと笑いあっていた時とは全く違い、その口調はよそよそしい。
自分の元にいるよりも吉原にいたほうが幸せなのかと勘ぐる鳥山検校に、お瀬以はそのような女がいるはずがないと否定するが、鳥山検校はなぜ吉原者たちといる時のように声が弾まないのかとさらに追及した。
「吉原の者と話す声が弾んでおるとすれば、親兄弟に似た親しみがあるからかと。それは旦那様をお慕いする気持ちとは別のものにございます」「所詮、わしは客ということか? どこまで行こうと女郎と客。そういうことだな」「旦那様、それは違います」「もうよい。嘘ばかりの女郎声など聞きとうない!」激昂し叫びながら足をもつらせその場に倒れた鳥山検校は、あわてて寄り添うお瀬以の手をも払いのけ自らの力で立ち上がると、そのまま部屋を出てしまった。そして、お瀬以を一人部屋に残し、外から鍵をかけた。
○「嫉妬の爆発した鳥山検校が怖すぎる」
ここは、お瀬以に対して激しい愛憎の念を抱く鳥山検校に、視聴者の注目が集まったと考えられる。
蔦重と楽しく談笑するお瀬以の姿を認めて以来、鳥山検校はお瀬以に強い嫉妬心を持つようになった。鳥山検校はお瀬以のために金や権力を惜しみなく使うが、お瀬以の心を得ることはできず、お瀬以に対する愛憎の念を増幅させていく。
SNSでは、「嫉妬の爆発した鳥山検校が怖すぎる」「嫉妬にかられた鳥山検校がモラハラ夫になっちゃった」と、闇落ちした検校に驚がくする視聴者のコメントが集まった。その一方で、「お瀬以がどれだけ頭で鳥山の愛に報いようと思っても、鳥山には心にずっと蔦重がいるのが聞こえるんだよね」「尽くしても尽くしても報われない、鳥山検校の気持ちも分かる」と、鳥山検校に同情する声も上がっている。男女関係はいつの時代も複雑だ。
余談だが、鳥山検校や今回登場した座頭たちはみな坊主頭だが彼らは僧ではない。当道とは、平安時代にあらわれた琵琶法師が自分たちの芸道・集団を当道と名乗ったのが始まり。琵琶法師は、琵琶を演奏しながら物語を語る盲目の僧侶、または僧侶の姿を模した芸能者のことだ。7〜8世紀頃に中国から伝来した琵琶が盲目の僧侶と結びつき、経文や物語の伴奏楽器として用いられるようになったのが始まりと言われている。当道は、当初は仏教の経典を琵琶の伴奏に合わせて唱える盲目の僧侶だった。その後、物語を語るようになり、特に平家物語の語り部として知られるようになる。
鳥山検校を演じる市原隼人は、熱演で観る人を魅了する実力派の俳優として知られている。2017年『おんな城主直虎』では、主人公・井伊直虎の兄弟子であり、武芸の達人でもある傑山を、2022年『鎌倉殿の13人』では、常陸の豪族・八田知家を荒々しく野性的に演じた。着物の胸元をはだけさせたくましい胸筋を覗かせる知家は、当時「セクシー八田」と呼ばれ大いに話題になった。『べらぼう』での鳥山検校は知家とは違い、知的でミステリアスな面を見せてくれている。そのたたずまいに魅せられる視聴者も多いようだ。
●借金に翻ろうされる人々が登場
第13話「お江戸揺るがす座頭金」では1777(安永6)年から1778(安永7)年の様子が描かれた。
今回のテーマはずばりカネだった。鱗形屋や森忠右衛門、屋敷や娘を売った武家など、借金に翻ろうされる人々に焦点が当てられた。また一方で、彼らから暴利をむさぼり巨万の富を蓄えた鳥山検校が、お瀬以の愛を得られず苦しむ様子に注目が集まった。そして幕府パートでは、カネを扱う当道座をめぐり、田沼意次が長谷川平蔵宣以とともに起死回生を図る。
注目度トップ3以外の見どころとしては、前回、またもや足抜けを図った小田新之助(井之脇海)とうつせみ(小野花梨)の行く末を示唆するシーンが挙げられる。蔦重は絶対何か知ってるはずだ。そして、それはあまり良くない情報である雰囲気が濃厚である。また、松葉屋の女将であるいね(水野美紀)が平賀源内(安田顕)のもとへ押しかけ、担保としてエレキテルを持ち去る一幕もあった。
華々しく(?)再登場したカモ平にも注目が集まった。SNSでは、「平蔵がさらりとイケメン公言してるのウケた」「平蔵、再登場するたびにできる男になってる」「みんなのカモ平が帰ってきた!」と、人気キャラの言動に盛り上がりを見せた。前回登場した際は御書院番士だったが、今回は進物番を務めていた。進物番は大名や旗本などからの献上品や、将軍からの下賜品などを管理する役職で、書院番・小姓組から選抜された人員で任命され、選ばれるのは名誉とされていた。なにげにエリートコースを突っ走る平蔵はさすがだ。
そして今回、蔦重の新たな協力者として北尾政演(古川雄大)、のちの山東京伝が登場した。美人画をうまく描けた褒美に、吉原で遊ぶことを要求していたが、すでに女郎のリサーチを入念に進めており、冒頭で蔦重と常富が制作していた『娼妃地理記』にチェックを入れていた(笑)。「山東京伝がついに顔見せ!」「やっと山東京伝が出てきた」と、SNSでも話題となっている。
きょう6日に放送される第14話「蔦重瀬川夫婦道中」では、鳥山検校の屋敷に幕府の取り締まりが入り、その場にきた蔦重も巻き込まれてしまう。また、平賀源内のエレキテルには何の効果もないと疑いがかかる。