“美人”北川景子の印象を変えた『探偵の探偵』 ボコボコにされながらも立ち上がる不屈のヒロインを熱演

2025年4月16日(水)11時0分 マイナビニュース


●最新作『あなたを奪ったその日から』と共通する「シリアス」「復讐劇」
春ドラマの第1話が次々に放送されているが、多彩なラインナップのなかで異彩を放っているのが、21日スタートの『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系、毎週月曜22:00〜)。「食品事故で3歳の娘を失った主人公が復讐相手の子どもを誘拐する」というシリアスな物語であり、北川景子が主演を務める。
北川と言えばドラマデビューは『美少女戦士セーラームーン』(CBC・TBS系)だが、その後は『太陽と海の教室』、『ブザービート〜崖っぷちのヒーロー』、『月の恋人〜Moon Lovers〜』、『謎解きはディナーのあとで』、『独身貴族』、『HERO』(第2シリーズ)と出演作の大半がフジであり、“美人”の印象が強い役柄でヒロインを務めてきた。
そんな北川の転機になったのが、主演を務めた2015年の『探偵の探偵』(フジ ※FODで配信中)。以降、『家売るオンナ』(日本テレビ)、『リコカツ』(TBS)など、美しさではなく個性を前面に押し出した主演女優としてのオファーが増え、現在に至っている。
『探偵の探偵』はその北川が「美しい」だけでなく「カッコイイ」「強い」という印象を加えた作品。今春と同様の「シリアス」「復讐劇」でもあることから、ここで作品の魅力を掘り下げていきたい。
○執念を感じさせる北川景子の役作り
そのタイトルから誤解されがちだが、『探偵の探偵』はよくある“探偵モノ”ではない。探偵の推理で事件を解決する一話完結ドラマではなく、妹の仇討ちに執念を燃やす主人公と“悪い探偵”たちとの戦いが描かれた。
物語は、主人公・紗崎玲奈(北川)が調査会社「スマ・リサーチ社」の探偵学校で2年間にわたる修業を積んだあと、悪徳探偵業者を調査・追及する“対探偵課”の調査員となるところからスタート。玲奈の目的はストーカーに惨殺された妹・咲良(芳根京子)の事件に関与した探偵を探し出すことであり、社長・須磨康臣(井浦新)が連れてきた新人探偵・峰森琴葉(川口春奈)とともに悪徳探偵との戦いに挑んだ。
“対探偵課”の仕事は、良く言えば“業界の自浄”につながるが、悪く言えば“同業者潰し”となるだけに、その攻防はまさに死闘。謀略の頭脳戦と格闘の肉弾戦がノンストップで連続していく緊張感で視聴者を引きつけた。原作は探偵業を徹底的に取材したという松岡圭祐の小説だけに、調査方法などの実情や悪事などの闇がリアルに描かれたことも特徴の1つ。探偵と警察の緊張関係も含め、ハードボイルドな世界観が作り上げられている。
ただ最大の魅力は北川が演じた玲奈で間違いないだろう。愛する妹を惨殺されて絶望の淵をさまよう中、自らを徹底的に鍛えることで踏み留まり、悪徳探偵を相手に孤軍奮闘する姿は圧倒的なインパクトがあった。
なかでも特筆すべきは壮絶なアクションシーン。玲奈は鍛え上げているものの孤独な戦いだけに、とにかく相手の攻撃を受けまくってしまう。放送当時は「主演女優をそこまでボコボコにしなければいけないのか?」「ここまで暴力を受けるモデル出身女優を見たことがない」と驚かされた。
しかも玲奈は視聴者に「さすがにもう立ち上がれないだろう」「今ので死んだのでは」と思わせながらも、妹の仇を討つために執念で立ち上がり、反撃していく。ピンチの連続でも絶対にあきらめず活路を見いだす……という展開は『週刊少年ジャンプ』のテイストを思い出すほどだった。
玲奈を演じた北川はプロテインなどを飲んで身体を作り、アクションを徹底的に練習し、本番も含めアザだらけになりながら格闘シーンを体当たりで熱演。痛々しさを感じさせるほどであった一方で、全身全霊で役に挑んでいる様子は視聴者に伝わり、細身の身体から気迫が伝わってくるようなすごみを感じさせた。
やはり『探偵の探偵』は北川の美しさをフィーチャーしたヒロインではなく、彼女が強くタフな主人公を演じられることを世に示した作品と言っていいだろう。
●北川、川口、芳根、門脇の豪華共演
当作は北川景子、川口春奈、芳根京子、門脇麦と、今をときめく主演女優たちが共演した作品としても価値が高い。
しかも北川と川口はバディ、北川と芳根は姉妹、川口と芳根は……、北川と門脇は……(※ネタバレを回避)と、いずれも濃い関係性の役柄であり、劇中にDVシェルターが登場することも含めて女性メインの物語と言い切っていいだろう。そんなハードボイルドかつ壮絶な作品を女性メインで作り上げたことも希少性の高さを物語っている。
一方、男性俳優に目を向けると、目を引くのがブレイク前のディーン・フジオカ。日本の連続ドラマ初出演作であり、同作終了後に入れ替わる形でスタートした朝ドラ『あさが来た』(NHK総合)でのブレイクにつながった。
ディーンが演じたのは同じスマ・リサーチ社の調査員・桐嶋颯太。「探偵業における非合法行為は必要悪」と考える現実主義者の一方、自分の人生を投げ打って戦い続ける玲奈をサポートするなど、やはりカッコイイ役柄だった。
その他では、井浦新、三浦貴大、ユースケ・サンタマリアに主要キャストとしての見せ場が多かったほか、見逃せないのが“他社の探偵”を演じた俳優たち。岩松了、石井正則、宅間孝行、山中聡、松尾諭、三浦誠己、池田鉄洋、梶原善、葛山信吾、袴田吉彦らが演じたクセ者探偵たちが怪しげな世界観を作っていた。
北川のターニングポイントとなった上に、彼女を取り巻くキャスティングにも一見の価値がある。さらに、最終回の迫力も十分なだけに、未視聴の人には勧めておきたい。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。
木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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