萩原利久「河合さんに、大切なことに気付かされた」河合優実「萩原さんとは壁を感じなかった」旬の若手俳優2人が初共演『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』【インタビュー】

2025年4月25日(金)14時21分 エンタメOVO

萩原利久(左)【スタイリスト:TOKITA、ヘアメイク: Emiy(Three Gateee LLC.)】、河合優実【スタイリスト:髙山エリ、ヘアメイク:秋鹿裕子(W)】(C)エンタメOVO

 作品ごとに大きな注目を集める若手俳優、萩原利久と河合優実。今最も旬な2人の初共演がついに実現した。それが、コント職人“ジャルジャル”の福徳秀介の小説家デビュー作を原作にした恋愛映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(4月25日公開)だ。

 さえない日々を送る平凡な大学生・小西徹(萩原)はある日、孤高の同級生・桜田花(河合)のりりしい姿に目を奪われる。思い切って声をかけたところ、偶然が重なりたちまち意気投合。急速に距離を縮める2人だったが、突然、小西の前から桜田が姿を消してしまう…。

 平凡な日常に芽生えた平凡な大学生の恋物語は、若き名優2人によって“最高純度のラブストーリー”に昇華。その舞台裏を聞いた。



−ドラマチックな後半とは対照的に、小西と桜田の出会いを描く前半は大きな事件が起きるわけでもないのに、2人の日常のやりとりが魅力的で、思わず引き込まれてしまいました。そういう関係性を、お2人の間でどのように作っていったのでしょうか。

萩原 小西は全体的に、自分からアクションを起こすよりも、桜田さんや親友の山根(黒崎煌代)の言動によって心が躍ったり、落ち込んだりして、次の行動の理由が芽生えていることが多いんです。だから、どちらかというと、「聴く」ということを強く意識していた気がします。

河合 私は、小西が桜田に一目ぼれに近い感じで引かれることが、最初の大きな軸だと思ったので、「桜田はどんな人なのか?」ということよりも先に、「小西が興味を引かれる相手」という印象を与えられたらと、まずは外見から作っていきました。自分自身のたたずまいや衣装、メイクなどをそれぞれつかんでいく感じで。

萩原 河合さんの言う「大きな軸」には、僕も同意です。それが全ての原動力なので、そこにうそがあると小西を演じることが難しくなってしまいます。だからこそ、小西の中で桜田さんを絶対的な存在として捉えるため、現場でちゃんと聞いて、見て、感じて、その場でキャッチしたものを漏らさないようにしたいなと。

−もう少し詳しく教えてください。

萩原 極端な話、台本があるので、言葉は音さえ聞こえれば、話を先に進めることはできるんです。でも、日常会話では相手の話をきちんと聞いて咀嚼(そしゃく)しないと、次の言葉が出てこないはずなんです。だから、お芝居でも「聴く」を意識しないと、見逃してしまうこともあるんじゃないかと思って。

河合 そのせいか、実際に萩原さんとお芝居をしてみたら、脚本や原作から想像していたものと、ほとんど齟齬(そご)を感じなかったんです。おかげで、スムーズに盛り上がりを作っていけた感じがあって。1日の中で、2人の間にキラキラした時間が生まれ、それがだんだん濃くなっていき…という変化がすごく自然でした。

萩原 現場で段取りなどを重ねながら、言葉を交わしていく中で、自然とできあがっていった感じですよね。待ち時間に「こうしよう、ああしよう」と相談することも、ほとんどなかったですし。小西と桜田さん同様に、僕らも初対面だったことが、いい方向に作用したのかもしれません。

−大九明子監督からは、2人の関係についてどんな指示がありましたか。

萩原 言葉のトーンやニュアンスについて、監督のイメージと合わなかったときは「もっとこういうニュアンスで」といった指示はありましたが、「こういうシーンにしたいから、こうしてほしい、ああしてほしい」という話はありませんでした。本番前の段取りのときから、自由を与えていただいた印象です。

河合 大九監督の心に響いているときは、笑ったり、泣いたりしてくださるんです。そういうリアクションを見て、私たちは「この空気感で、大九監督が目指しているものと合っているんだな」と答え合わせをしていた感じでした。







−普通の大学生でありながら、個性が埋没しない小西と桜田のキャラクターのバランスも絶妙でした。お2人はそれぞれの役に、どのようにアプローチしたのでしょうか。

萩原 小西は、“さえない大学生”というキャラを立てる要素として、常に持ち歩いている“傘”がありました。でも今回は、そういうところからキャラを立てない方がいいのかなと。そこから入ると、どうしても「傘を持った不思議な男の子」という印象が強くなってしまうんです。それはもったいないな、と思って。だから、傘は持っているだけで十分と考え、余計なことをするのは控えました。

河合 桜田の特徴は「お団子頭」ですが、脚本に「お団子頭で武装している」というせりふがなかったら、原作通りの「お団子頭」に寄せるよりも、今の私が持っているものを生かした方が、学生としてのリアリティーは出せるんじゃないかな…と考えていたかもしれません。でも今回は、大九監督のポップな作風や事前の衣装合わせを踏まえると、人物像としても重要だし、キャッチーでいいかも、と思いました。何の変哲もない2人の話だけど、どこかにそういうスパイスをしのばせた方が、面白いんじゃないかなと。

−先ほど「外見から作っていった」というお話もありましたが、2人が距離を縮めるシーンで桜田が着ているベージュのシャツに模様の入ったベストというファッションも印象的です。

河合 ちょっと変わっていますよね。あの服は、衣装の宮本茉莉さんが用意してくださったもので、桜田のファッションは衣装部の皆さんを含め、みんなで作っていった感じです。トレンドを追う女子大生だったら、絶対に選ばないような服だけど、山根ほど強い個性を主張するわけでもなく、ただ、自分のセンスでかわいいと思ったものを身につけている。でも、絶対にマジョリティーではない。そんな服を選ぶことに、自意識はあると思うんです。お化粧もして、わざわざお団子頭にしているくらいですから。その桜田の“外れ具合”が面白かったです。

−お話を伺って、劇中のお二人の魅力の一端が分かった気がします。ところで、初共演の感想はいかがでしたか。

萩原 言葉を届ける能力がものすごく高い方だな、というのが河合さんの印象です。演じている中で、小西を通じて河合さんの言葉がものすごくスムーズに入ってきたんです。それを聞いていたら、言葉には人をあやめる力もあるし、人を元気にする力もある大きなもの、ということを思い出して。大切なことなのに、言葉は日常の中にあまりにも当たり前に存在しているので、忘れてしまっていたんです。河合さんとのお芝居を通じて、そんな大切なことに改めて気付かされました。

河合 私の方こそ、萩原さんとはお芝居する中でまったく壁を感じることがなく、すごくやりやすかったです。どこかに違和感があると、せりふを言うとき、自分の中で言葉がノッキングを起こしたりするんですけど、今回はそういうことが一切なくて。考える間もないほど自然に、小西と桜田でいさせてもらえた感覚がありました。

−それはなぜでしょうか。

河合 多分、萩原さんが「自分を良く見せたい」という意識があまり強くないからなのかなと。私もこのお仕事をしている中で時々、そういう余計な自意識みたいなものが出てしまうことがあるんですけど、お芝居をする萩原さんにはそれを一切感じなくて。それはやっぱり、「小西を演じること」だけに向かっているからなんだろうなと。それがすごく心地よかったですし、完成した映画を見たときも、それが萩原さんの魅力だと感じました。

萩原 僕の方こそ、小西を演じる上では、桜田さんを通じた河合さんの発信ありきだったので、常に助けられていたと言っても過言ではないくらいです。それほど、僕にとっては絶対の存在でした。ご一緒できて本当によかったです。

(取材・文・写真/井上健一)

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