37年ひきこもる男性に小雪が願う“自分らしくいられる場所”、高齢の母に感じた強い精神力
2025年5月3日(土)18時0分 マイナビニュース
●『ザ・ノンフィクション』で痛感するコミュニケーションの難しさ
女優の小雪が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00〜 ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、4日に放送される『ひきこもって37年〜母と息子の小さな食卓〜』。15歳からひきこもって37年になる、52歳のまさきさんと、80歳になる母親の生活を追った作品だ。
「ひきこもり」という状況を、必ずしも悲観的な感情だけで捉えていないという小雪。まさきさんに“自分らしくいられる場所”にたどり着くことを願い、彼を支える母親には極めて強い精神力を感じながら、この親子を見つめていた——。
○「このまま自分が動けなくなったら」…抑えてきた本音が爆発
荷物であふれかえる部屋の中で、1日のほとんどをテレビの前で過ごす、まさきさん。中学生まではサッカー選手を目指していたが、膝を痛め断念。追い打ちを掛けるように学校でいじめに遭い、15歳で自宅にひきこもるようになった。以降、音楽にのめり込み、CDや音楽雑誌を買い集め、小さな食卓にも荷物が積み上がり、家の中は足の踏み場もない。
生活のすべては、一緒に暮らす79歳の母親に頼りきり。「このまま自分が動けなくなっ
てしまったら息子はどうなってしまうのか」…母は不安ばかりが募っていた。
そんな中、母が自宅で倒れ、救急車で病院に搬送された。誤嚥性肺炎により、意識を失
ったまま生死の境をさまようことに。なんとか退院したものの今度は足を痛め、今では思うように体が動かせず、家事もままならない状態に。母は、家中に積み上がった荷物の
隙間を縫うように暮らすことに限界を感じ始めていた。そしてついに、今まで抑えてきた本音が爆発してしまう…。
○深い心の部分で感じるものを発信できれば…
『ザ・ノンフィクション』では、大きな話題を集めた『結婚したい彼と彼女の場合 〜令和の婚活漂流記2024〜』(24年2月4日・11日放送)でもナレーション務めた小雪。こちらは、結婚相談所に入会して婚活に苦戦する姿などを追いかけており、今回も踏まえて様々な形のコミュニケーションの難しさがあることを改めて痛感したそうだ。
一方で、夫・松山ケンイチと手がけるブランド「モミジ(momiji)」では、ひきこもり生活を送るアーティストともコラボレーションしており、「学校に行けなくなってから40年くらい経つけど、時々絵を描くのが好きで、アートのイベントに参加する方がいて、そういう人たちが社会に出るきっかけを作る試みを個人的にもしているんです」という。
「“ひきこもり”という言葉が、世の中にすごく認知されてきたのを肌で感じています」といい、その生き方を決してネガティブな要素だけで捉えていないことを語る。
それだけに、今回のナレーション収録を終えて、「ひきこもりは本当に誰でもなり得る。だからこそ、いろんな枠の中の一つになればいいなと思うんです。まさきさんを見ていても、“繊細”という一言では片付けられないいろいろな感情や思い、そして人生がありますよね。そういう人たちだからこそ深い心の部分で感じられるものを、社会に発信していく機会があったらいいのに」との思いを強くした。
そのチャンスは、インターネットやSNSの発達に、さらにはコロナ禍を経て、確実に増えたと感じている。
「ブログやインスタで自己表現をしたら、まさきさんもすごく共感を得られると思うし、そういったコミュニティが出来上がってくるのではないかと思います。打ち合わせだってオンラインで行うのが普通になりましたし、例えば何か自分の作品が発表される会が開催されれば、そこが自分らしくいられる場所になるはずですしね」
●まさきさんに抱く変化への予感
今回の番組では、学校に行けなくなった時に、あらゆる音楽を聴いていた、まさきさんの造詣の深さがうかがえる場面も。「自分が生きる場所さえ見つけられれば、どんな小さなことでも認められる世の中になってきたと思うんです。だから、まさきさんの音楽評も発信してみてほしいですね」と期待を示す。
一方で、「本人はやっぱりつらいと思います。どうしても比べられる世の中で生きていかなきゃいけないという思いがありながら、心ない言葉があふれる場所で、それに真っ向から戦おうとか、自分と違って当たり前だと思えないからこそ、ひきこもってしまうと思うので」と、その心情を想像。
それでも、まさきさんには、「とても優しい人ですよね。お母さんの心の機微を感じたり、自分を理解してくれる人に出会うたびにアクションを起こそうとしていましたから」と、変化への予感を抱いた。
○「優しすぎる」母に甘えがあるかもしれない
まさきさんに寄り添いながら、母親の目線にもなって見つめていたという小雪。「まさきさんが中学生の頃から、37年も今の生活を送るというご苦労は本当に計り知れないですが、すごい精神力だと思います。それなのに、とっても穏やかな口調なのが印象的でした」と感服する。
「息子は優しすぎるんです」と言う母親だが、その人間性は彼女から引き継がれた印象も。小雪は「お母さんの懐が広いがゆえに、もしかしたら、まさきさんにも甘えているところがあるかもしれませんよね」という印象も持つだけに、「今後、例えばお母さんに介護が必要になって、まさきさんが自分で生きていかなければいけないとなった時に、彼は大きく変わるかもしれない」と思いを馳せていた。
●小雪1976年生まれ、神奈川県出身。モデルとしてデビューし、98年にドラマ『恋はあせらず』で俳優活動を開始。以降、映画『ラスト サムライ』『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、ドラマ『全裸監督』『サンクチュアリ -聖域-』『ブギウギ』『SKYキャッスル』など、数々の作品に出演。現在放送中のフジテレビ系ドラマ『Dr.アシュラ』に出演している。
中島優 この著者の記事一覧はこちら