聖子ちゃんヘア、ゴマキの金髪、まゆゆのツインテール…昔流行ったアイドルヘアはリバイバルするのか?
2025年5月5日(月)9時10分 オリコン
ツインテールで登場した、高嶺のなでしこ・松本ももな (C)CREATEs presents IRC 2025
■”聖子ちゃんカット”の効果「誰でも小顔に、目をパッチリさせて見える」
——現在まで、アイドルヘアにも様々なトレンドがあったように思います。それぞれの時代で流行ったアイドルヘアの特徴、一般層にどのような影響を与えていたと考えるかお聞かせいただけますか?
「アイドルヘアを語る上で、80年代に大流行した「聖子ちゃんヘア」は外せません。目の上ギリギリの前髪とサイドレイヤーを後ろに流したスタイルは『誰でも小顔に、目をパッチリさせて見える』と大流行しました。中高生から主婦層など幅広い年齢、またコンサバ系から不良系まで様々なテイストの女性たちがこぞって同じ髪型にしていた時代です。
聖子ちゃんヘア流行の影響で、サイドの髪をリバースにブローするための『くるくるドライヤー』が大ヒットしました。朝つぶれた髪をセットするために、『朝シャン』文化が生まれたきっかけにもなりました」
——90年代では、広末涼子、内田有紀、鈴木亜美など「シャギーボブ、ショートヘア」の清楚系アイドルが注目を浴びました。
「ボーイッシュでさわやかなショートヘアのアイドルたちに注目が集まると、ナチュラルな黒髪のショートヘアやシャギーの入ったショートボブがトレンドになりました。カラーやパーマの必要がないので学生でもトライしやすく、手入れが楽な上、人気アイドルたちのようにさわやかな好印象を得られることがブームの原因だったのではと思います。時代背景として不況になると女性の髪が短くなると言われてきましたが、このころのバブル崩壊も一因だったかもしれません」
——そこから180度変化したのが、00年代です。「茶髪、金髪、巻き髪」ブームが到来し、親しみやすいキャラクターの女性アイドルが増えた印象もあります。
「アイドルではモーニング娘。がブレイクし、デビュー当時13歳だった後藤真希の金髪シャギーヘアは鮮烈な印象を残しました。人気絶頂だった安室奈美恵や浜崎あゆみなどの影響もあり、茶髪や金髪などヘアカラーを楽しむ女性が増加。巻き髪や外国人風ヘアなど、景気の回復も後押ししてか、華やかなヘアスタイルがトレンドになった時期です。クレイツでも『エビちゃん巻き』がきっかけの巻き髪ブームに乗って、カールアイロンが大ヒットし、女性たちがパーマではなくコテで髪を巻くという文化がここから広まりました」
——2010年代以降ではAKBや坂道系といった大人数のグループアイドルが台頭してきました。ここでアイドルヘアにどんな変化が見られたと感じますか?
「元AKBで言うと、渡辺麻友さんのツインテール、小嶋陽菜さんのゆるふわロング、高橋みなみさんのポニーテールなど、メンバーたちも自分が一番可愛く見えるように、決まったヘアスタイルでそれぞれの個性やキャラクターを出したり、小顔に見せてくれる、コンプレックスを隠せる前髪や触角などのアレンジがアイドルたちに広まったのもこの時代からだと思います」
——自分がより一層かわいく見えるヘアスタイルを追求するようになったということですね。
「その一方で、ファッション誌のレギュラーモデルを務めるメンバーも多い乃木坂46、日向坂46、櫻坂46などは特に女性からの支持が高く、ヘアスタイルやメイクが雑誌で特集されるなど清楚系の『全方位モテ』するスタイルが女性たちの憧れの対象となっていきました。
この頃、アイドルの象徴であるまっすぐでツヤツヤの黒髪にスタイリングするのはもちろん、前髪や触角などのアレンジに欠かせないストレートアイロンの需要が非常に高まりました。当社でも、まっすぐに伸ばすだけでなく顔周りなどのアレンジもしやすい小回りの利くコンパクトなストレートアイロンがヒットし、現在も常に人気上位の商品となっています」
■”前髪”や”触覚”でアレンジされたツインテール「今も王道のアイドルヘア」
——様々な変遷があるアイドルヘアですが、過去のトレンドがリバイバルするケースはあるのでしょうか?
「例えば、聖子ちゃんカットそのものがリバイバルすることはこれまでありませんでしたが、そのポイントとなる“ミディアムのひし形カット”や“フェイスラインを隠す厚めの前髪”、“サイドのリバース巻き”など、小顔効果を狙ったテクニックは現代でも形を変えながら人気のヘアスタイルであり続けています。『不適切にもほどがある』のドラマのヒットで、ヒロインの聖子ちゃんカットがカワイイと話題になったのは記憶に新しいです」
——「昔流行ったな」という印象の髪形も、形を変えて現在のアイドルヘアにつながっているのですね。
「ツインテールやストレートヘアは、今もアイドルヘアの王道だと思います。プラス、前髪や触角でそれぞれ今風のアレンジになっていますね。
最近では2000年代のファッション、文化やヘアメイクが韓国アイドルのNewJeansをきっかけに「Y2K」ブームとしてトレンド化しました。当時流行したシャギーヘアが令和版の「レイヤーヘア」に進化して、今まさにバズっています。ロングのシャギーヘアを太巻きのカールアイロンでワンカールするスタイリングがSNSでも人気となり、カールアイロンの太さ40mmのものが今、売れているんです」
——アイドルヘアの立ち位置は、今と昔でどのように変化していると感じますか?
「私は初代巻き髪ブーム世代の人間なので、若年層むけの新製品を開発するにあたり、主に中高生から20代前半の方たちにヘアスタイルに関する調査やヒアリングを行ったのですが、そこでイマドキの『アイドルヘア』に対する概念が変わりました。
今の若い子たちは確かに『アイドルヘアになりたい』『前髪命』『触角にこだわる』なのですが、それはこれまでのように誰か1人のヘアスタイルをみんなが画一的に目指すということではなく、『自分にとってマックス可愛い髪』は、『アイドルの誰か』であるというそれぞれ異なるロールモデルを持っているのです」
——骨格、顔タイプ、肌色など診断できるからこそ、より自分に近しい対象を見つけやすそうです。
「前髪一つとっても、前髪の隙間の出し具合、ぱっつんorシースルーなのか、それぞれの持つ雰囲気や、顔のパーツや形などの素材によって似合うスタイルが異なります。そのため、自分に似た顔立ちや雰囲気、好みのテイストのアイドルをフォローし、髪型やメイクを真似るという事も日常的に行っているそうです。クレイツでもこの「前髪命」のニーズに応えるべく「前髪用アイロン」を今年発売予定です。
最近特に女性アイドルを推す女の子が増えた背景には、アイドルたちの『自分のカワイイを追求している』『アンチを気にせず自分の好きを貫く』という所への共感が広まっていることにあると思いました。人に可愛く見られることに対して努力する、芯の通ったスタンスがリスペクトされる時代にシフトしています」
——「CREATEs presents IRC2025」では、美容師さんたちとの協働で、これからの時代のアイドルヘアを作り上げていきました。イベントを経ての反響をどう受け止めましたか? 当初の想いやイベントを経て感じたことをあらためてお聞かせいただければ幸いです。
「髪に、“KAWAII”の魔法を」というコンセプトを掲げ、クレイツのアイロンで女の子みんなに魔法がかかったように可愛くなってほしいという思いでイベント協賛させて頂きました。準備段階でも、13名の出演アイドルの方々の魅力を最大限に引き出すヘアスタイルについてスタッフや美容師さんとも連日検討を重ね、当日を迎えました。
普段のヘアスタイルとは異なるアレンジになった方もいましたが、それぞれ本当に魅力的なスタイルに仕上がり、ステージでは光り輝いて見えました。見ている観客に元気を与える“KAWAII”のパワーはすごいなと改めて実感しました」
——今後どのように“かわいい”を作っていきたいですか? アイドルヘアを作っていきたいですか?
「“令和のアイドルヘア”は、誰かひとりのヘアスタイルをみんなが真似するというだけにとどまらない、包括的な意味を持つものに変わってきています。当社としては女の子たちそれぞれの「自分の一番カワイイ」を叶えられる製品や企画をこれからも提供したいと考えています。誰かにプロデュースされることが多かった過去の人気アイドルやモデルたちと比べて、いま売れているアイドルたちは非常に「情報分析力」や「自己プロデュース力」が強く、自分に何が求められているのか、自分をどう見せたいのかをよくわかっている方が多いと思います。そういう自立した行動力のあるアイドルたちとコラボして、新しい「カワイイ」を発信していけたら面白そうだなと考えています」