劇場へGO「薫風歌舞伎特別公演」(25日まで、大阪松竹座)
2025年5月21日(水)18時2分 スポーツニッポン
「薫風歌舞伎特別公演」(25日まで、大阪松竹座)
大阪・関西万博開催記念をうたった歌舞伎特別公演。国内外から大阪に来る観光客もみすえ、親しみやすい演目とそれぞれの上演時間を短く設定した3部制で、それぞれに趣向を凝らした新作、舞踊コラボに、人気狂言がそろった。
上演前から注目していたのは第二部の「千夜一夜譚 荒神之巻(せんやいちやものがたり あらじんのまき)」。タイトルから察しがつくとは思うが「アラジンと魔法のランプ」をもとに、舞台を中国・長安に移して新作歌舞伎として作り上げた。
父を亡くし母と暮らす安羅仁(アラジン)が、冒険の末に不思議な力を持つランプを手に入れ…という冒険活劇にしてラブロマンスを組み合わせたファンタジー。
この安羅仁にふんしたのが、上方歌舞伎界の若きプリンス・中村虎之介だ。クルクルした大きな瞳に上がった口角、劇場の隅々まで通る透き通った声…。生まれながらに“陽キャラ”を持ち合わせる虎之介には、アラジンがよく似合った。
物語の筋立てとしてもう少し、アラジンが「正直でいいヤツ」キャラとして書き込まれていれば、最後の“めだたし、めでたし”が歌舞伎的でもっと入り込めたかも、と思う。どちらにしても今回のような趣向の特別公演にはぴったりだし、今後も上演を重ねていってほしい。
第三部の「鯉つかみ」は、もはや安定の面白さ。愛之助が早替わりで11役、宙乗りに本水を使った立ち回りとエンターテインメント性は抜群。ラスト15分、大きな鯉と格闘する愛之助の立ち回りは、客席にも水が降ってきて劇場中が大騒ぎの楽しさ。早替わりも油断大敵で「あれ?いつの間に?」とだまされる瞬間が多々あり、まるで遊園地のアトラクションのようで理屈抜きに楽しかった。
第一部は歌舞伎の発祥とされる「歌舞伎踊り」から上方歌舞伎の「吉田屋」の一場面から気振りも見られる新作舞踊「今昔歌舞伎草紙」に「西遊記」をベースにした「夢窓西遊記」の2本立て