「こんなに疲れたことはなかった」『オペラ座の怪人』デザイナーが衣装の秘密明かす
2024年5月25日(土)18時0分 シネマカフェ
『オペラ座の怪人 4Kデジタルリマスター』より衣装デザインを担当したアレキサンドラ・バインのコメントが到着。美しい衣装の秘密、制作の舞台裏について明かしている。
ガストン・ルルーの小説を基に、アンドリュー・ロイド=ウェバーが1986年に作曲した名作ミュージカルを、『バットマン・フォーエバー』などのジョエル・シュマッカー監督が映画化した本作。公開から20年の時を経て、新たにスクリーンに甦る。
自身も衣装デザイナーであったジョエル・シュマッカー監督が何よりこだわったのが、<1870年代パリの壮麗な世界を再現すること>だったという。監督はその想いを現実のものにするため『エリザベス』や『ハムレット』でアカデミー賞にノミネートされたほか、近年ではDCコミックス原作のヒーロー『ザ・フラッシュ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、『ドクター・ストレンジ』などの独自の世界観を持つ衣装を手掛けるなど活躍を続ける映画や舞台の衣装デザイナー、アレキサンドラ・バインに本作のための衣装デザインを依頼した。
バインは「<『オペラ座の怪人』の参考にするために>と彼が見せてくれたのは映画『山猫』だった。『山猫』の衣装は信じられないくらい美しくウィットに富んでいる。それは時代にとらわれないもので、いわゆる<博物館衣装>ではないもの。ストーリーを語るために作られているということ」と監督から明確なビジョンを渡されたことをふり返る。
実際にバインはこの映画の中のオペラ座の基となったパリ・オペラ座のリサーチのためパリに飛び、1870年代のパリの服装と雰囲気を研究し尽くしたという。
「物語は1870年のパリだけど、本作の衣装デザインは、時代に必ずしも沿ったものではない。これはミュージカルだし、音楽も当時のものではない」「この映画のスケールは、二人のデュエットからドラマチックで巨大なセットに移り、また戻るーというふうだから、ラブストーリーのスケールを強調し、観客を混乱させないようにその世界に引き込むため、バランスの取れたスタイルを生み出すところが難しかった」と独自のビジュアルスタイルを生み出すところから始めたことを明かした。
そして「眺めるための衣装じゃない。大掛かりな振り付けにも適応できる実用的な衣装でなければならなかった。だから、監督の要求を満たすのが大変だった」と苦労を語り、結果的にロンドンのパインウッド・スタジオに作られたスタジオからバインと彼女のチームは、本作のために300着の手縫いの衣装を送り出し、さらに、ヨーロッパ中の衣装室から手広く集めた2000着に修正を施すという膨大で途方もない作業をやり遂げた。
ジェラルド・バトラー演じる<カリスマ性に溢れる危険な男>ファントムのデザインについて「シルエット、シェイプ、セクシーさが全て」と、スタイルのテーマをバインは語る。「最初に手がけたのはシルエットで、衣装がどのように動きどのような形を作るか、それがどのように共鳴し合うかを考えた。ジェラルドのフィッティングを基にスタイルを作っていき、襟を見ながらそのバランスや形を彼の体に合うかどうか確かめながら進めて行った」とその繊細なプロセスに言及。
彼の象徴でもある<仮面>については、その下にバトラーが着けていた特殊メイクと同じように、映画版のためにイメージチェンジがなされたことを告げ「形、手触り、素材と付け心地について、数え切れないほどの試作品を作った」「ヘアメイクアーティストのジェニー・シャーコアと密に協力してデザインし、ファントムに相応しい上質な革の仮面を作り上げた」とその苦労を語った。
ファントムら主役陣以外、劇団の共演者や支配人たちの衣装も、当時の服の様式に当てはめたものになっている。例えば、厳格だが情に厚いオペラ座のバレエ教師、マダム・ジリーと言うキャラクターのために、バインは「暖かさ、優しさ、少々ボヘミアン的な要素を与えるよう」衣装をデザイン。
ファントムの運命を動かすきっかけにもなる、意欲的なオペラ座の新しい支配人、アンドレとフィルマンには、それぞれのキャラクターの異なる性格を出すよう、俳優たちの異なる体型を衣装デザインで強調。個性的なキャラクターそれぞれの衣装に加え、劇中で演じられるオペラ座の公演用の衣装も制作するなど徹底的なこだわりを見せた。
その上でさらに「どの衣装にとっても、一番難しいのは生地」と言う。「劇中で上演されるオペラの一つ『ハンニバル』に関する演出はとても派手、というものだった」。そのためバインは「19世紀の美しい生地を買い、それをスキャンしてスクリーンに落とし、それを高くない綿のカーテンの裏地に大量に印刷、コーラスガール用だけでも、この素材を何百メートルも使った」と笑顔を見せ、「どんなアイディアだって思い描けるけれど、動きに合った生地がなかったら、色やパターンや長さを考えるまでもなく、それはもう無理と決まっている」と力説。
本作の人気シーンの一つ、星のモチーフをあしらったティアラと宝石で飾り立てられた200人近くが参加する圧巻の仮面舞踏会のシーンについては、本作の冒頭にも登場する『オペラ座の怪人』の重要なキーワードの一つ、世界的に有名なクリスタルメーカー、スワロフスキーのシャンデリアの部品が組み込まれていることも明かした。
最後に、彼女とそのチームがこの映画のためにデザインし作り上げた何千という衣装をふり返り、「プロジェクトの終わりにこんなに疲れたことはなかった。なぜってスケールと範囲の広さが本当に巨大だったから!」と締め括った。
『オペラ座の怪人 4Kデジタルリマスター』は6月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。
ガストン・ルルーの小説を基に、アンドリュー・ロイド=ウェバーが1986年に作曲した名作ミュージカルを、『バットマン・フォーエバー』などのジョエル・シュマッカー監督が映画化した本作。公開から20年の時を経て、新たにスクリーンに甦る。
自身も衣装デザイナーであったジョエル・シュマッカー監督が何よりこだわったのが、<1870年代パリの壮麗な世界を再現すること>だったという。監督はその想いを現実のものにするため『エリザベス』や『ハムレット』でアカデミー賞にノミネートされたほか、近年ではDCコミックス原作のヒーロー『ザ・フラッシュ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、『ドクター・ストレンジ』などの独自の世界観を持つ衣装を手掛けるなど活躍を続ける映画や舞台の衣装デザイナー、アレキサンドラ・バインに本作のための衣装デザインを依頼した。
バインは「<『オペラ座の怪人』の参考にするために>と彼が見せてくれたのは映画『山猫』だった。『山猫』の衣装は信じられないくらい美しくウィットに富んでいる。それは時代にとらわれないもので、いわゆる<博物館衣装>ではないもの。ストーリーを語るために作られているということ」と監督から明確なビジョンを渡されたことをふり返る。
実際にバインはこの映画の中のオペラ座の基となったパリ・オペラ座のリサーチのためパリに飛び、1870年代のパリの服装と雰囲気を研究し尽くしたという。
「物語は1870年のパリだけど、本作の衣装デザインは、時代に必ずしも沿ったものではない。これはミュージカルだし、音楽も当時のものではない」「この映画のスケールは、二人のデュエットからドラマチックで巨大なセットに移り、また戻るーというふうだから、ラブストーリーのスケールを強調し、観客を混乱させないようにその世界に引き込むため、バランスの取れたスタイルを生み出すところが難しかった」と独自のビジュアルスタイルを生み出すところから始めたことを明かした。
そして「眺めるための衣装じゃない。大掛かりな振り付けにも適応できる実用的な衣装でなければならなかった。だから、監督の要求を満たすのが大変だった」と苦労を語り、結果的にロンドンのパインウッド・スタジオに作られたスタジオからバインと彼女のチームは、本作のために300着の手縫いの衣装を送り出し、さらに、ヨーロッパ中の衣装室から手広く集めた2000着に修正を施すという膨大で途方もない作業をやり遂げた。
ジェラルド・バトラー演じる<カリスマ性に溢れる危険な男>ファントムのデザインについて「シルエット、シェイプ、セクシーさが全て」と、スタイルのテーマをバインは語る。「最初に手がけたのはシルエットで、衣装がどのように動きどのような形を作るか、それがどのように共鳴し合うかを考えた。ジェラルドのフィッティングを基にスタイルを作っていき、襟を見ながらそのバランスや形を彼の体に合うかどうか確かめながら進めて行った」とその繊細なプロセスに言及。
彼の象徴でもある<仮面>については、その下にバトラーが着けていた特殊メイクと同じように、映画版のためにイメージチェンジがなされたことを告げ「形、手触り、素材と付け心地について、数え切れないほどの試作品を作った」「ヘアメイクアーティストのジェニー・シャーコアと密に協力してデザインし、ファントムに相応しい上質な革の仮面を作り上げた」とその苦労を語った。
ファントムら主役陣以外、劇団の共演者や支配人たちの衣装も、当時の服の様式に当てはめたものになっている。例えば、厳格だが情に厚いオペラ座のバレエ教師、マダム・ジリーと言うキャラクターのために、バインは「暖かさ、優しさ、少々ボヘミアン的な要素を与えるよう」衣装をデザイン。
ファントムの運命を動かすきっかけにもなる、意欲的なオペラ座の新しい支配人、アンドレとフィルマンには、それぞれのキャラクターの異なる性格を出すよう、俳優たちの異なる体型を衣装デザインで強調。個性的なキャラクターそれぞれの衣装に加え、劇中で演じられるオペラ座の公演用の衣装も制作するなど徹底的なこだわりを見せた。
その上でさらに「どの衣装にとっても、一番難しいのは生地」と言う。「劇中で上演されるオペラの一つ『ハンニバル』に関する演出はとても派手、というものだった」。そのためバインは「19世紀の美しい生地を買い、それをスキャンしてスクリーンに落とし、それを高くない綿のカーテンの裏地に大量に印刷、コーラスガール用だけでも、この素材を何百メートルも使った」と笑顔を見せ、「どんなアイディアだって思い描けるけれど、動きに合った生地がなかったら、色やパターンや長さを考えるまでもなく、それはもう無理と決まっている」と力説。
本作の人気シーンの一つ、星のモチーフをあしらったティアラと宝石で飾り立てられた200人近くが参加する圧巻の仮面舞踏会のシーンについては、本作の冒頭にも登場する『オペラ座の怪人』の重要なキーワードの一つ、世界的に有名なクリスタルメーカー、スワロフスキーのシャンデリアの部品が組み込まれていることも明かした。
最後に、彼女とそのチームがこの映画のためにデザインし作り上げた何千という衣装をふり返り、「プロジェクトの終わりにこんなに疲れたことはなかった。なぜってスケールと範囲の広さが本当に巨大だったから!」と締め括った。
『オペラ座の怪人 4Kデジタルリマスター』は6月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。