『ニモーナ』『異人たち』ほか、プライド月間に観たい映画&ドラマ5選

2024年6月19日(水)18時0分 シネマカフェ

『ニモーナ』© 2023 Netflix, Inc.

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毎年6月は「プライド月間(Pride Month)」。日本を含め世界各地で、性の多様性を称え、LGBTQ+の権利について啓発する活動やコミュニティへの支援活動・イベントが行われている。

「Pride」とは「誇り」や「自尊心」のこと。ありのままの自分に誇りを持ち、存在を透明化され、自尊心を傷つけられることのない社会への思いを込めて、劇場や配信サービスで観ることのできる映画やシリーズの中から、不器用ながらも一歩ずつ前に進んでいく多彩な5作品をセレクトした。


アカデミー賞ノミネートの
Netflix映画『ニモーナ』

本年度アカデミー賞長編アニメ映画賞ほか、アニー賞作品賞などにノミネートされたフルCGによるファンタジー・アニメーション。その舞台は、近未来的な発展を遂げた中世のような騎士たちが活躍する世界。

女王暗殺の濡れ衣を着せられ、投獄されていた庶民出身のバリスター・ボールドハートを助けたのは、サイからクジラまで自由自在に変身できる見た目はパンクな少女のニモーナ。バリスターはニモーナと渋々手を組み、真犯人捜しに乗り出すが、このニモーナこそ、自分が退治すると誓ったモンスターであることを知る。

ニモーナと迷コンビになるバリスターはゲイで、恋人同士だった騎士仲間のアンブローシャス・ゴールデンロインに追われることに。また、自由で痛快なまでに自己表現しつつも、迫害されてきたニモーナには原作者でトランスジェンダーであるND・スティーヴンソンの思いが投影されている。

英語版ではニモーナ役に『ミスエデュケーション』のクロエ・グレース=モレッツ、バリスター役に『FLEE フリー』のリズ・アーメッドほか、ユージン・リー・ヤン、ル・ポールなどが声の出演。

Netflixにて配信中。


知られざる人物に迫るNetflix映画『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』

「私には夢がある」——キング牧師が有名な演説を残した1963年8月28日、ワシントン大行進の立役者であるバイヤード・ラスティンを描いた伝記映画。

ガンジーに影響を受けて非暴力を提唱し、カリスマ性と優れた組織力で大行進を立案、成功に導いたバイヤード・ラスティン(コールマン・ドミンゴ)。だが、キング牧師やアダム・クレイトン・パウエル・Jr、エラ・ベイカーなどと共に自由への行進を先導しながらも、いつしか忘れ去られ長い間スポットライトを浴びることがなかったのは、彼がゲイだったから。

ラステインに脅威を感じる“当局”の白人たちは彼の性的指向を攻撃の材料にするが、彼も、そして彼らの支援者も屈しない。

製作総指揮はバラク&ミシェル・オバマ夫妻。監督はクィアのブルース歌手マ・レイニーのレコーディングの1日を描いた『マ・レイニーのブラックボトム』のジョージ・C・ウルフ。

同作や『カラーパープル』『グローリー 明日への行進』などに出演し、「ユーフォリア/EUPHORIA」でエミー賞を受賞したコールマン・ドミンゴは本年度アカデミー賞で初の主演男優賞候補に。同性パートナーのラウル・ドミンゴと様々な作品で共同製作も行っている。

Netflixにて配信中。



レズビアンの破天荒ロードムービー
『ドライブアウェイ・ドールズ』

イーサン・コーエンが妻トリシア・クックと共に手掛けた、予測不能のノンストップ・ロードムービー。

登場するのは、ガールフレンドと破局したばかりの自由奔放なジェイミー(マーガレット・クアリー)、自分の殻を破れずにいるマリアン(ジェラルディン・ヴィスワナサン)、そしてジェイミーの元カノで警察官のスーキー(ビーニー・フェルドスタイン)らレズビアンたち。

ジェイミーとマリアンは行き詰まった現実から逃避しようと、車の配送(=ドライブアウェイ)をしながらフロリダ州タラハシーへ。各地のレズビアンバーに立ち寄りながら目的地に向かう中で、謎のスーツケースをめぐって正反対な2人の関係性が大きく変化する。

「家族」の大切さを宣伝文句にする上院議員(マット・デイモン)にもきっちりやり返しつつ、ラストシーンはY2Kの流行が再燃している現在だからこそ余計にグッとくる晴れやかさ。マイリー・サイラスをはじめ、マット・デイモン、『ラスティン』のコールマン・ドミンゴ、「THE LAST OF US」のペドロ・パスカルなどの豪華な顔ぶれも見逃せない。

TOHOシネマズシャンテ、渋谷シネクイントほか全国にて公開中。


アンドリュー・ヘイ監督が見事な脚色
『異人たち』

「ふぞろいの林檎たち」や「岸辺のアルバム」などの脚本家としても知られる山田太一の小説「異人たちとの夏」が、イギリスで再映画化。『Weekend ウィークエンド』『荒野にて』などのアンドリュー・ヘイ監督が脚色し、メガホンをとった。

山田氏の自伝的要素を含む原作、および1988年公開の大林宣彦監督による日本映画では、主人公と恋愛関係になる同じマンションの住人は若い女性だったが、今作ではゲイをカミングアウトしているヘイ監督により男性に変更。主演のアンドリュー・スコットもオープンリーゲイの俳優として知られる。

他者とのつながりを求めながらも恐れや孤独に支配されてきたアダム(アンドリュー)が、隣人のハリー(ポール・メスカル)と恐る恐るながらも確かにつながりを深めていく過程や、30年前に亡くなった両親(ジェイミー・ベル&クレア・フォイ)と接することで自身の心の深部を見つめていく姿に注目。

ディズニープラス「スター」で見放題独占配信中。

デジタル配信中(購入)、7月3日(水)よりデジタル配信開始(レンタル)。
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン


四姉妹を育てた母にも悩みあり
「ドリームランド 渚の四姉妹」

シンガーソングライターのリリー・アレンがTV初出演、「ドクター・フー」のフリーマ・アジェマンらと個性豊かな四姉妹を演じた英国コメディドラマ。

物語の舞台は、観覧車が目印、「ドリームランド」という名の遊園地を有する古くからのリゾート地である海辺の街マーゲイト。近年では物価が高騰するロンドンから移住する人が増え、街自体が変化しつつあるという。

そこで暮らす一家に父親はおらず、パリのファッション業界で働く夢を叶えたものの突然帰郷する次女メルを筆頭に、それぞれが岐路に立ち、悩みや混乱を抱える女性たちばかり。

なかでも、四姉妹の母親(姉妹の父親はそれぞれ違う、らしい)シェリルは、家族に秘密でロンドンから越してきたアーティストのダイアンと交際中。誰もが顔見知りという保守的な街で、オープンに交際できない葛藤を抱える中年のレズビアンカップルにも注目してみてほしい。

「ドリームランド 渚の四姉妹」はAmazon Prime Videoチャンネル上 スターチャンネルEXにて配信中。

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