『ここは退屈迎えに来て』橋本愛インタビュー|原作と作品への深い愛情、想い描く“未来の自分”とは

2018年10月18日(木)12時30分 映画ランドNEWS

映画『ここは退屈迎えに来て』橋本愛インタビュー


橋本愛

映画『ここは退屈迎えに来て』は、東京で就職した後に地元へUターンした「私」が、退屈な日常に変化を求め、高校時代に憧れていた「椎名くん」に会いに行くさまを描いた青春物語。何者かになりたくて東京で就職したものの、10年経って何となく地元へ戻ってきた主人公「私」役の橋本愛をはじめ、元彼「椎名」を忘れられない「あたし」役に門脇麦、青春時代にみんなが恋焦がれた「椎名くん」役に成田凌が扮する。監督を『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『伊藤くん A to E』『ママレード・ボーイ』などで知られる廣木隆一が務める。


映画ランドNEWSでは、主演を務めた橋本愛に、原作への思い入れや撮影時のエピソード・作品の魅力、役とリンクした今の心境などを伺った。


──原作は以前からご存知でしたか?


橋本愛

橋本:はい、発売当時だったので、恐らく16〜18歳くらいかその辺の時にお風呂で読みました(笑)。好きな小説の映画化に自分が関われるっていうのが本当に嬉しくて。今までは、お話いただいてから原作を読んで「すごい好き!」ってなることはあったんですけど、“原作の方が先”っていうのは珍しくて、嬉しいなって思いました。廣木監督の現場にも興味があったので、どちらも嬉しかったですね。


──この作品が、このタイミングで映画化されたことも良いなと思いました。


橋本:そうですね。だから、「あ、今なんだ〜!」と思って。懐かしく思いましたね。


──それも巡り合わせですよね。


橋本:この感動が嬉しかったので、もうちょっと本をいっぱい読んで“映画化が来た時の喜びを体験したい!”と思って(笑)。現場でも、いち読者の感覚が半分くらいあって。作家の方がゼロから作り上げていて、実写映画は1から始まる創作。山内マリコさんに一番の敬意を持ってやっていたので、その気持ちは好きな小説だからこそ強度がありましたね。


──記憶に焼き付くような心に残るシーンが多く散りばめられていますが、橋本さんが感じた心に残るシーンや人物を教えてください。


橋本愛

橋本:私は、小説を読んで門脇麦ちゃんが演じた「あたし」っていう子が一番心に残っていて。夜明け・早朝の誰も居ない道で「誰かー!」って叫んで、「誰でも良いんだけど」って言ったらロシア人が来る、みたいな(笑)。あの情景が、小説で読んで受け取った情景と本当にマッチしていて。“空気の匂い”が同じだったんです。原作は真冬でキンとした冷たさだったんですが、撮影は5月〜6月だったかな。ちょっとシンとした澄んだ“空気の匂い”がすごく印象的で、「あぁ良いなー」って思いました。


──門脇麦さんが「茜色の夕日」を歌う場面もすごくグッときましたよね。


橋本:「茜色の夕日」がもう良い歌だから、どうやっても良くはなるだろうと思っていたんですけど(笑)。ただ、あれは結構サプライズというか、脚本にも書いてなかったので。監督からインの直前に、歌詞のページを渡されて「これどうなるんですかー?」って聞いたら、「お楽しみに!」みたいな感じだったから(笑)。どう繋がるんだろうなと思っていたのですが、やっぱりすごく良かったですね。


──小説を読んだ時は「あたし」への共感の方が強かったのでしょうか?


橋本愛

橋本:そうでしたね。だから「あたし」をやりたいと思ったんですけど(笑)。でも「私」という人がこの作品の中心になる時に、どうすれば粒立てられるのか悩みました。前にやった『桐島、部活やめるってよ』の時にも感じた悩みにすごく似ていて。脚本や小説に一番信じられるものがあったから、最終的には「やっちゃえ!」という感じでしたが。


──原作を16〜18歳の青春真っただ中で読んでいた時と比べ、地元・熊本を離れ東京に住んでいる今、改めて原作を読んでみた時に何か感じ方に変化はありましたか?


橋本:もっと客観的に見れるし、今は小説の構成とかに驚いたりしますね(笑)。あの時は一文一文が単独で景色のように見えていたというか。それが繋がる瞬間の感動を今の方がすごく感じるし。私は、東京に憧れて来た人たちと全く真逆で、来たくなかったけど連れてこられたみたいな感じだったから(笑)。自分の地元が好きで、改めてすごく良いとこだなあと思うんですよね。どんどん客観的に物事や土地の良さをフラットに発見できるようになったので、(原作の)存在自体が“尊いな”と思いました。


──橋本さんにとって“東京”はどんな街ですか?


橋本愛

橋本:前よりは楽しめるようになったと思うんですけど、突如「つまらない」って思う時と、「すごく楽しい!」って時と、波があります。ただやっぱり、焦りますね、何か。地元に居る時より“焦ってるな”とすごく感じます、潜在意識で。“焦らせる街”なんでしょうね、きっと(笑)。


──タイトルに関してはどう思いますか?


橋本:東京に居る今の自分の方がこのタイトルに近くて。「迎えに来て」じゃなくて、「どうやったら抜け出せるんだろう、自分で」という考え方の方が近いかもしれません。この小説を手にとったのも、タイトルの“詩的な響き”が素晴らしくて手にとったので、すごく大事にしたいなと思います。こう思っている人たちが、少しでも救い上げられるような作品作りをしていきたいなってすごく思いますね。


──この作品を手にとった時、もう東京でお仕事されていましたからね。


橋本:そうですね。だからあの時は「わたし退屈、迎えに来て欲しい・・・!」って読んだわけじゃないんですけど、心の奥深くで何かがリンクしていたんでしょうね。お風呂で読んでたし(笑)。お風呂で読む本、大事!


──先程、廣木監督の現場に参加してみたかったとおっしゃっていましたが、実際に廣木監督とはどのようなお話をされましたか?


橋本愛

橋本:初日の最初に廣木監督から、「『私』っていう人は“迎えに来て”っていう人じゃないから」と言われて。待つというより、能動的に動いていく人だからと言われました。それ以外は本当に何も言われてなくて、廣木監督の映画を観ていて、特に女優さんがすごく輝いている姿を見てきたので、「私も魔法かけられちゃうかも!?」と思っていたんですけど、何もなかったです(笑)。


──魔法かけられてましたよ!後半の横顔のカットとか。


橋本愛

橋本:嬉しいです(笑)。でも、(廣木監督から)何も言われないから「大丈夫かな?」と不安になるわけでも、見捨てられているとか、「問題無いから言われないんだ」と自信を持つわけでもなく。その中間の“わからない”部分をお互い共有していた感じが、すごく心地良かったですね。終わったあと「あ〜楽しかった!」って思いました。


──具体的に「こうして」って言うよりも、お互いに考えることが重要なのかもしれませんね。


橋本:“無言のコミュニケーション”みたいなものがあったのかもしれないですね。柳ゆり菜ちゃんとか、渡辺大知くんとかには「今のはどんな気持ちで言ったの?」みたいな“演出らしい演出”を横でされていて。「いいな〜」「言われたいな〜」と思いながら(笑)。でも面白いのが、そうして役者さんが思ったことを言ったときに、「それも良いけど、こうしよう」とかでもなく、スーッと帰っていかれるのが面白くて。


──今後もご一緒される時が楽しみですね。


橋本:次はもっと監督を解剖したいですね(笑)。


──今回、主題歌をはじめ音楽全編フジファブリックさんが担当されていますが、映像と音楽が重なった本編を観ていかがでしたか?


橋本愛

橋本:本当に素晴らしかったです!特に、主題歌で物語が底上げされて。この音楽を聴くためだけの90分でも有り得るなと思ったくらい素晴らしくて。私は元々、昔の4人の頃からフジファブリックさんの曲が好きなので、「茜色の夕日」もすごく好きで聞いていた曲だったから、ご縁が重なってすごく大事な映画にしたいなと思ったきっかけでもあります。劇中の音楽も最高でしたね!


──音楽が色んなシーンにマッチしていて、物語に深みを与えていました。


橋本:すごく豊かでしたよね。フジファブリックさんの曲の解釈が豊かだから、悲しいとか切ないとか、それだけじゃない、ある意味肯定されたような感じがしました。


──原作者の山内マリコさんとはお会いできましたか?


橋本愛

橋本:現場で初めてお会いして、この作品の“核”の部分をお互いに共有出来ていることを感じられて。それがあったから、現場で“自分の信じるもの”を持ったまま終わることができました。今まで、そんなに原作者の方と深いものを共有したことが無かったので、すごく心に残る経験でした。


──今作の物語のように、青春時代に想い描いていた“未来の自分”はありましたか?


橋本:特になかったです。ただ、この仕事をしているとは全く思っていなかったので、勉強して良い大学に行って、適当に暮らしているだろうと思っていました(笑)。この仕事をし始めた頃は、25歳になっても続けているかわからないなあと思っていたんですが、今は“おばあちゃんになっても続けているイメージ”が自分の中にあって。腰が悪かったらどうやって現場に行くんだろう?とか(笑)。でも傍ら、いつどうなるかわからない、いつ人生が終わってしまうかわからないという観点も捨てられないので、常に「今日・明日」を考えることの方が今は強いですね。



映画『ここは退屈迎えに来て』は10月19日(金)より全国公開


(C)2018「ここは退屈迎えに来て」製作委員会


取材:矢部紗耶香/写真:ナカムラヨシノーブ


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