前日に「イースターおめでとう」とあいさつしたばかり…サンピエトロ広場に多くの信者「全世界が悲しみに包まれる日」
2025年4月21日(月)22時24分 読売新聞
20日、バチカンのサンピエトロ広場に姿を見せる教皇フランシスコ=AP
【ローマ=倉茂由美子】21日に死去したローマ教皇フランシスコは、宗教の枠を超えて世界の共存と共生を目指して様々な取り組みを行い、宗教界に新風を吹き込んだ。質素な生活を貫き、厳かな教皇のイメージを刷新して、カトリックの人気回復に貢献した。
コロンビアから観光で訪れたヒメナ・ガリンドさん(20)も「悲しみにうちひしがれた。彼は若者に近い存在だった」と嘆いた。
イタリア系移民の中流階級の家庭で生まれ育ったアルゼンチン出身の教皇は、途上国の貧困問題を重視。歴代教皇があまり足を向けなかったアフリカやアジアの途上国に赴き、社会的弱者と直接触れ合った。
宗教を問わず、世界各地の難民に寄り添う発言を繰り返した。2016年4月には、中東や北アフリカからの難民が多く滞在するギリシャ東部レスボス島を訪問。イスラム教徒のシリア人12人をバチカンに連れて帰り、移住させた。
14年にイスラエルのシモン・ペレス大統領(当時)とパレスチナ自治政府のアッバス議長をバチカンに招いた際は、カトリック、ユダヤ、イスラムの3宗教の指導者が共に祈りをささげる姿を通じ、他宗教との対話に積極的な姿勢を世界に印象づけた。
キリスト教徒の結束も目指した。16年2月、キリスト教会が1054年、東西に分裂して以降初めて、ロシア正教会のトップであるキリル総主教と会談した。
途上国歴訪や宗教融和の取り組みは、欧米諸国の深刻なカトリック離れを背景に、新たな信者獲得を模索するためでもあった。
カトリック離れを食い止めるため、離婚や人工妊娠中絶を認めないカトリックの教義を守りつつも、社会の変化に歩み寄る方策を模索した。聖職者不足の地域で、本来は認められない既婚司祭の就任や女性の活用を検討。教皇庁での勤務経験がなく、しがらみのなさを武器に官僚機構の改革にも着手した。枢機卿と呼ばれる教皇に次ぐ地位の聖職者の選任について、「欧州偏重」を変え、途上国出身者を多く登用した。
教皇となった後も宮殿への入居を拒み、聖職者用の宿舎で暮らした。親しみやすい言葉遣いで大衆に語りかけ、サッカーに熱狂した。
一連の改革は、威厳や伝統を重んじる保守派から攻撃を受けた。聖職者による児童への性的虐待問題なども各地で尾を引いており、改革の行方が注目される。