米ウクライナが鉱物資源巡り協定、「対等なパートナーシップ」で復興基金設立も…「安全保証」の確約得られなかったか
2025年5月1日(木)11時28分 読売新聞
米国のトランプ大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=いずれもロイター
【ワシントン=池田慶太】米国、ウクライナ両政府は4月30日、ウクライナの鉱物資源権益に関する協定に署名したと発表した。資源開発から得られる収益を共同管理する基金を設け、ウクライナの経済復興に充てるのが柱だ。ロシアのウクライナ侵略を巡る和平交渉が停滞する中、仲介役の米国とウクライナが関係強化に踏み出した。
米国のスコット・ベッセント財務長官とウクライナのユリヤ・スビリデンコ第1副首相兼経済相は30日、ワシントンで会談し、「米国・ウクライナ復興投資基金」の設立を含む協定に合意した。両国は50%ずつ資金を拠出し、基金を管理する。スビリデンコ氏は協定署名後、基金は「対等なパートナーシップ」に基づき、両国いずれも支配権を持たないとX(旧ツイッター)で説明した。ウクライナ側は、防空システムなど将来の米国からの軍事支援も基金への拠出として計上されるとしている。
スビリデンコ氏によると、レアアース(希土類)などの重要鉱物や石油・天然ガスの新規事業から収益の50%を基金に移管する。協定には、領土・領海にある全ての資源の所有権はウクライナに属し、同国が採掘する鉱物や場所を決めると明記されたとしている。一方、米ブルームバーグ通信は、ウクライナの資源開発で米国が特権的な利用手段を得ると報じた。
スビリデンコ氏は「協定にはウクライナの対米債務に関する条項は含まれていない」と強調した。トランプ米政権はウクライナに対する過去の支援額の「返済」として基金への巨額拠出を要求していたが、最終的に米国が譲歩したとみられる。ウクライナは経済協力と引き換えに、停戦実現後にロシアの再侵略を防ぐ「安全の保証」の明記を求めていたが、米国の確約は得られなかった模様だ。
トランプ米大統領は30日、協定署名に先立って記者団に、支援の「見返り」としてウクライナにレアアースの権益を求めたと説明した。ウクライナでの米国の関与が「悪者たちを寄せ付けないことになる」と強調し、将来的にロシアの攻撃を抑止するとの認識を示した。
協定は2月末にトランプ氏とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が合意する予定だったが、ホワイトハウスで会談中に口論となり、仕切り直しとなった。両国の関係強化は今後の和平交渉でウクライナに有利に働く可能性がある。ベッセント氏は声明で「合意は、ウクライナを中心とする和平プロセスにトランプ政権が関与していることをロシアに示すものだ」と述べた。