トランプ氏、経済的利益が大きい協定合意を歓迎…ウクライナへの「支援返済」要求撤回し外交成果アピール
2025年5月1日(木)23時45分 読売新聞
米国のトランプ大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=いずれもロイター
【ワシントン=池田慶太】米国とウクライナ両政府は懸案だったウクライナの資源権益に関する協定に署名し、2月末の首脳会談決裂で悪化した両国関係の改善を印象づけた。ロシアによるウクライナ侵略を巡る和平交渉で、ロシア寄りの主張が目立っていたトランプ米政権の姿勢に変化が生じるかどうかが注目される。
米国のトランプ大統領は4月30日、米新興メディアの電話インタビューで「彼らは素晴らしいレアアース(希土類)を持っている。大きな資産だ」と述べ、米国が安全保障上重視しているレアアースの安定供給を可能にする今回の協定合意を歓迎した。協定はレアアースに加え、石油や天然ガスの採掘や加工、関連のインフラ事業にも米国の参画を可能にする内容で、米国にとって経済的利益は大きい。
トランプ氏は税金が無駄遣いされているとしてウクライナ支援に一貫して否定的な見解を示し、協定交渉では過去の支援の「返済」を求めた。今回の合意ではこうした要求を取り下げ、譲歩した。先に政権発足100日の節目を迎えたトランプ氏にとり、国内向けの「外交成果」としてアピールできると判断した模様だ。
協定にはウクライナが求めてきた米国による「安全の保証」の確約は盛り込まれなかったとみられる。ただ、米国が一定の譲歩を示す中で、ウクライナは交渉をこれ以上長引かせるのは得策ではないと判断した可能性が高い。
2月の首脳会談決裂を受け、米国はウクライナへの軍事支援を一時停止した。ウクライナは、トランプ氏の怒りを再び買い、支援が停止される事態は何としても避けたい。また、米国が和平交渉の仲介から手を引くことを示唆する中、米国の関与をつなぎとめる必要に迫られていた。
和平実現を急ぐトランプ氏は、領土問題などで妥協する姿勢を見せないウクライナを和平成立の障害と見て不満を募らせてきた。しかし、最近はロシアを批判する場面も見られ、4月26日にはウォロディミル・ゼレンスキー大統領と2月以来となる対面での会談を行った。ウクライナは今回の協定締結によってトランプ氏をさらに自国に引き寄せ、少しでも有利な条件での停戦実現に向けて働きかけを強めたい考えだ。