7日に始まる「コンクラーベ」に日本人2人が参加…教皇を選ぶ「視点」は
2025年5月6日(火)8時0分 読売新聞
まえだ・まんよう 長崎県出身。五島列島の潜伏キリシタンの子孫。広島教区司教を経て、2014年に大阪大司教。18年に枢機卿。23年から新教区設立で大阪高松大司教
【ローマ=倉茂由美子】新たなローマ教皇を選ぶ教皇選出会議(コンクラーベ)が7日、バチカンで始まる。参加する東京大司教区の菊地功枢機卿(66)、大阪高松大司教区の前田万葉枢機卿(76)の日本人2人に、カトリック教会の課題や教皇を選ぶ視点を聞いた。
教皇庁のスリム化 必須…東京大司教区 菊地功氏
教皇フランシスコの下で教会改革が進められたが、道半ばとなったものも多い。
一つは性的虐待の被害者への対応だ。教皇フランシスコの時代に、被害者保護のガイドラインを策定するなど、組織として対応する制度は進んだ。だが現場では、教区や修道会の人事権などが複雑に絡み、被害者がたらい回しになって対応が遅れがちになる実情がある。これを円滑に進めるための組織改革が不可欠だ。
バチカン(教皇庁)の財政難も切実だ。カトリック教徒は世界全体では増えているが、教皇庁の収入源である信徒からの献金は減少している。信徒数が欧州など先進国で減少し、アフリカやアジアなど途上国で増加しているためだ。バチカンがローマなどに所有する多数の不動産も、老朽化で不良資産化している。
収入増が見通せない中、教皇庁のスリム化は必須だ。内部組織の統合は進んだが、職員数は変わっていない。人員整理も含めて、財政の立て直しを急ぐ必要がある。
教会の体質改善も継続すべきだ。社会の価値観が多様化する中、「全ての人のための宗教」であり続けるには、信徒らの声を広く取り入れた「共に歩む」教会運営が求められる。
課題は山積している。次期教皇には、教皇フランシスコが着手した改革を、強いリーダーシップで実行に移していける人が適任だ。
「核廃絶」力強く発信 重要…大阪高松大司教区 前田万葉氏
教皇フランシスコは、信徒らと「共に歩む」教会への改革に取り組んできた。最も象徴的だったのが「世界代表司教会議」だ。
従来は司教のみが出席する会議だったが、修道女や一般信徒にも門戸を広げた。幅広い人々の声を反映させることで、開かれた教会を目指した。一部の聖職者を中心とした閉鎖的な教会運営が、性的虐待や汚職など、様々な不祥事の温床となったためだ。
教皇フランシスコはよく、「伝統派」に対する「革新派」と位置づけられたが、両面を兼ね備えていた。同性カップルへの対応などを巡っては、教義の考えは変えずに、これまで切り捨てられてきた人々を哀れみ深い心で包容できるようにした。
次期教皇はこうした改革を継承する人が望ましい。伝統を重んじ、改革に反発する人もいたが、イエス・キリストの時代でさえ反対勢力はあった。少々の反対はあっても、やるべき事をやる芯の強さが求められる。
教会のイメージダウンで深刻化した司祭の人材不足も、対応を急ぐ必要がある。司祭職の尊厳と魅力を回復し、自信ややりがいを持てる職業になれば、不祥事も起きないだろう。
バチカンは国家でもある。世界中に信徒を持つ影響力と非暴力の立場を生かし、核廃絶などのメッセージを力強く発することも重要だ。