“30分の有酸素運動”の直後は頭の働きが一時的に向上 ADHDと健常者で異なる脳反応 台湾大学などが発表
2025年2月12日(水)8時5分 ITmedia NEWS
“30分の有酸素運動”の直後は頭の働きが一時的に向上
この研究では、薬物療法を受けていないADHD成人26人と、健常者26人を対象に、30分間の有酸素運動を1回行い、その前後で大脳皮質の興奮性と認知機能を測定した。
研究で特に注目したのは、脳内の2つの重要な指標である。1つは皮質内促通(ICF)で、これは脳の興奮を高める働きを示す。もう1つは短潜時皮質内抑制 (SICI)で、これは脳の興奮を抑える働きを示している。
研究結果は、健常者とADHD患者で大きく異なることが判明した。健常者では、運動後にICFが増加しSICIが減少した。つまり、脳が全体的に活性化する方向に変化したことを示している。一方、ADHD患者では運動後にSICIが増加した。これは、普段は低下している抑制機能が改善されたことを意味している。
さらに重要な発見として、ADHD患者では運動後に認知機能の改善が見られた。特に、不適切な反応を抑える能力(抑制制御)と、新しい運動技能を習得する能力(運動学習)が向上した。この改善は、SICIの増加と強い相関関係があることが分かった。
この研究結果は、有酸素運動がADHD患者の脳に与える影響が、健常者とは異なることを示している。ADHD患者では、運動によって低下している抑制機能が改善され、それが認知機能の向上につながることが明らかになった。
Source and Image Credits: Hsiao-I Kuo, Michael A. Nitsche, Yen-Tzu Wu, Jung-Chi Chang, Li-Kuang Yang, Acute aerobic exercise modulates cognition and cortical excitability in adults with attention-deficit hyperactivity disorder(ADHD)and healthy controls, Psychiatry Research, Volume 340, 2024, 116108, ISSN 0165-1781, https://doi.org/10.1016/j.psychres.2024.116108.
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2