Adobe、「Firefly」大規模アップデート 画像・動画AIを強化、他社AIも選択可能に
2025年4月25日(金)9時40分 マイナビニュース
米Adobeは4月24日、英ロンドンで開催された「Adobe MAX London」において、クリエイティブAIプラットフォーム「Firefly」の大規模アップデートを発表した。
主な発表内容は以下の通り。画像生成、動画生成、ベクター生成の各分野における新モデルの投入や機能強化、サードパーティ製AIモデルを利用可能にするオプション、新たな協創ツールなどである。
画像生成AIモデル「Firefly Image Model 4」「Firefly Image Model 4 Ultra」
ベクター生成AI「Firefly Vector Model」の一般提供
動画生成AI「Firefly Video Model」の一般提供
サードパーティ製AIモデルの直接利用が可能に
「Adobe Firefly」モバイル版、近日リリース予定
「Fireflyボード」(旧称:Project Concept)のパブリックベータ版
提供開始から2年足らずで220億以上のアセット生成に利用されるなど、Fireflyはクリエイティブ分野で広く活用されている。今回のアップデートにより、同プラットフォームは包括的なクリエイティブAIソリューションとしての機能をさらに強化した。
○Firefly Image Model 4/ 4 Ultra:クリエイティブニーズに応える2モデル
新モデルは、前世代のImage Model 3から大幅な改善が施され、プロンプトに対する忠実度が向上した。これにより、人物、動物、建築物などを、より正確かつ鮮明に、高いリアリズムで描写できるようになった。
また、従来モデルと比べて生成速度と制御性が大幅に向上している。「Firefly Image Model 4」は、その特徴を特に活かし、主に日常的なクリエイティブニーズや迅速なアイデア出しに適している。シンプルなイラストやアイコン、基本的な写真オブジェクトなどを素早く効率的に生成できる。Adobeによれば、一般的なクリエイティブ要件の90%を迅速かつ低コストでカバー可能である。
一方、「Firefly Image Model 4 Ultra」は、より高レベルのディテールとリアリズムが求められるプロジェクト向けに設計された上位モデルである。フォトリアルな風景、細かい構造物や人物ポートレートをより精密に描写でき、印刷物など精密さや明瞭さが優先される高品質素材の生成に適している。
この2モデルの導入により、迅速なアイデア出しから複雑で精緻な最終アセット制作まで、用途や品質要件、プロジェクトの要求に応じてモデルを使い分ける柔軟な運用が可能となった。
○Fireflyで「テキストからベクター生成」
「Firefly Vector Model」は、簡単なテキストプロンプトから編集可能なベクターグラフィックを生成するAIである。現在、Firefly Web上で一般提供されており、アイコン、ロゴ、パターンなど、さまざまなスタイルのベクター画像を生成することが可能である。多様なスタイルやバリエーションを容易に試せる点も大きな特徴であり、ブランドイメージに沿ったカスタムパターンの開発や、ソーシャルメディア用のユニークなイラスト作成といったデザインワークフローの効率化を図れる。
○動画生成AI「Firefly Video Model」も一般提供開始
昨年ベータ版として限定的に公開された「Firefly Video Model」がFirefly Webで一般提供開始となった。
「テキストから動画生成」および「画像から動画生成」を用いて、最長5秒の動画生成を利用できる。安全に商用利用可能な動画AIモデルであり、メインコンテンツを捕捉するBロールの作成、アニメーション、テキスト効果など、様々な用途で活用できる。最大1080pの解像度。16:9、9:16、そして新たに1:1のアスペクト比に対応する。
ベータ版と比較してフォトリアリズムが向上し、より詳細でリアルな動画を生成できるようになった。「画像から動画生成」では、元の画像のディテール(複雑なテクスチャ、微妙な色のグラデーション、細かいデザイン要素など)を保持する能力が向上している。
テキストレンダリング、風景描写、視覚効果、トランジション効果なども強化されている。例えば、開始と終了のキーフレームにシンプルな黒画像を使用することで、トランジション効果を生成することも可能である。
○Adobe Creative Cloudエコシステムでサードパーティ製AIモデル利用可能に
従来のFireflyモデルに加え、Googleの「Imagen 3」(画像生成)や「Veo 2」(動画生成)、OpenAIのGPT画像生成モデル、Black Forest Labsの「Flux 1.1 Pro」(画像生成)などを直接選択して利用できるようにした。さらに今後、fal.ai、Runway、Pika、Luma、Ideogramといった他のモデルの追加も予定されている。
生成AIモデルはそれぞれ独自のデザインスタイルや表現特性を持っている。多くのクリエイターが複数のAIモデルを使い分けており、サービス間の移動が生成AIを活用した制作を煩雑にする一因となっていた。そのため、Adobeは今年3月、クリエイターのアイデア発想プロセスを支援する目的で、同社のエコシステム内で直接Adobe以外の生成AIモデルを使用するオプションを提供することを発表していた。生成されたコンテンツには「コンテンツクレデンシャル」(作成者や使用されたAIモデルなどの情報が記録された来歴情報)が付与されるため、透明性と信頼性が確保される。
○Fireflyモバイルアプリ:いつでもどこでもアイデアを形に
場所を選ばずに創造性を発揮したいというニーズに応え、「Adobe Firefly」のモバイルアプリ(iOS、Android)を近日中にリリースする。これにより、外出先でもすぐにスマートフォンやタブレットから高品質な画像や動画を生成してアイデアを形にできる。
Creative Cloudとのシームレスな連携により、モバイルで開始したプロジェクトをデスクトップで引き継ぎ、中断したところから作業を再開できる。
○協創ツール「Firefly ボード」登場、パブリックベータ開始
「Firefly ボード」は、複数人による同時編集が可能なキャンバス形式で、アイデア出しやコンセプト設計を視覚的に整理できるツールである。Firefly Webの一部として、パブリックベータ版の利用が可能となった。以下のように活用できる。
ムードボードやコンセプトプレゼンテーションの作成
ストーリーボード構築
チームやクライアントとのクリエイティブブレインストーミング
今回のアップデートでは、Fireflyの生成AIモデル強化に加え、他社AIモデルの選択肢追加、モバイル対応、共同作業ツールの導入が行われ、クリエイティブプロセス全体にわたる支援が強化された。これによりFireflyは、クリエイティブの様々な段階をAIで支援する統合的な環境へと発展しつつある。
直感的に操作可能な高度なAIツールが提供され、あらゆるプロセスに浸透することで、アイデアを迅速かつ効率的に形にするための選択肢が広がる。これにより、初心者からプロフェッショナルまで、あらゆるレベルのクリエイターが創造性を発揮しやすくなると期待される。