「iPhone 16e」「Pixel 9a」徹底比較レビュー:カメラ、バッテリー、基本性能、AIが優秀なのはどちら?

2025年5月25日(日)10時5分 ITmedia Mobile

AppleとGoogleのミッドレンジ2機種を比較した

 2025年春、ミッドレンジのスマートフォン市場に注目すべき2つの新モデルが登場した。Appleの「iPhone 16e」とGoogleの「Pixel 9a」だ。これらは両社のフラグシップモデルの技術を受け継ぎながらも、手の届きやすい価格帯に最新のAI機能を提供することを目指している。
 特に2024年からのAI競争が激化する中、どちらのメーカーも「高度なAI機能を使える入門機」というコンセプトを打ち出している点が興味深い。本レビューでは、価格、デザイン、ディスプレイ、性能、カメラ、AI機能などの観点から両機種を徹底比較し、それぞれの特徴と使い勝手を検証していく。スマートフォンの買い替えを検討している方々の参考になれば幸いだ。
●公式ストア価格はPixel 9aの方が安い 戦略に違いも?
 まず両機種の公式価格を見てみよう。Apple StoreでのiPhone 16eは128GBモデルで9万9800円(税込み、以下同)からのスタート。一方、4月16日に発売されたPixel 9aは、Google Storeで7万9900円からとなっている。
 特にiPhone 16eについては、前モデルにあたるiPhone SE(第3世代)の5万7800円から大幅な値上げとなった。これには多くのユーザーが驚いたようだ。キャリア各社が割引キャンペーンを展開しているものの、基本価格の高さは覆いがたい。
 Appleは「AI機能が体験できるやや間口の高い入門機」という位置付けに対し、Googleは「AIを含めた最新機能が使えるコスパ端末」といったポジショニングとみられる。
 興味深いのは、両社ともにミッドレンジモデルに最新チップを搭載していることだ。iPhone 16eはA18チップを、Pixel 9aはTensor G4を採用し、いずれも上位機種に準ずる処理性能を備えている。これは、AIという計算負荷の高い機能をより低い価格帯で実現するための必須条件だ。
●iPhone 16eの方が小型で薄い Pixel 9aはカメラの出っ張りがない
 iPhone 16eはiPhone 14のデザインを踏襲しており、167g・厚さ7.8mmの薄型軽量設計となっている。一方のPixel 9aは186g・厚さ8.9mmとやや厚めだが、カメラ部が突出しない新デザインとなっている。
 側面素材はどちらもアルミフレームを採用。背面はiPhone 16eがガラス、Pixel 9aはプラスチック製で、どちらも磨りガラスのようなマットな質感となっている。手に持った感触はiPhone 16eが角張った印象を受けるのに対し、Pixel 9aは背面の継ぎ目にアールが付けられていてより手になじむように感じる。
 iPhone 16eはPixel 9aよりもコンパクトで軽量な設計となっている。iPhone 16eは167gでPixel 9aの186gより19g軽く、サイズも71.5×146.7×7.8mmとPixel 9aの73.3×154.7×8.9mmに比べて全体的にスリムだ。特に厚さが約1.1mm薄いのと、高さが約8mm低いため、ポケットに入れた際の存在感や片手での操作性はiPhone 16eに軍配が上がる。ただし、大画面を求めるユーザーにとっては、Pixel 9aの6.3型ディスプレイの方が魅力的かもしれない。
 背面のカメラ部分は、iPhone 16eはシングルレンズが実寸で約1.5mm突き出た形状となっている。Pixel 9aは本体に厚みを持たせた分、水滴型のデュアルレンズ突出を1mm以下に抑えている。机の上に置いたときの安定感はPixel 9aの方が優れており、ケースを付けずに使った印象ではPixel 9aが優れていると感じた。
 カラーバリエーションの違いも印象深い。iPhone 16eがホワイトとブラックという基本色2色のみであるのに対し、Pixel 9aはObsidian(黒)、Porcelain(白)に加え、Iris(紫)とPeony(ピンク)の計4色を展開している。カラフルな色を好むユーザーにとっては、Pixel 9aの方が魅力的だろう。
 なお、両機種ともIP68等級の防水・防塵(じん)性能を備えているため、日常使いでの耐久性に差はない。
●ディスプレイはリフレッシュレートや輝度でPixel 9aが上回る
 ディスプレイのスペックではPixelに分がある。iPhone 16eが6.1型Super Retina XDR OLEDディスプレイ(1170×2532ピクセル)を採用しているのに対し、Pixel 9aは6.3型Actua OLEDディスプレイ(1080×2424ピクセル)を搭載している。
 最大の違いはリフレッシュレートだ。iPhone 16eは60Hzの固定レートであるのに対し、Pixel 9aは120Hzの可変リフレッシュレートに対応。スクロールやアニメーションの滑らかさは明らかにPixel 9aが優れている。スマホでゲームをよくプレイするユーザーや、UI(ユーザーインタフェース)の動きの滑らかさを重視するなら、この差は大きい。
 輝度も大きく異なる。iPhone 16eが通常800ニト、HDR表示時の最大1200ニトであるのに対し、Pixel 9aは最大2700ニトの明るさを実現。直射日光の下での視認性はPixel 9aが上回っていた。
 ディスプレイの発色にも特徴がある。iPhone 16eは自然な色再現性に優れ、やや暖色系の表示傾向。一方のPixel 9aは彩度高めで、特に青色の表現が鮮やかだ。どちらがいいかは好みの問題で、写真や映像をよく見る人は実機で確認することをお勧めする。
 前面デザインはiPhone 16eがノッチを残しているのに対し、Pixel 9aはパンチホールカメラを搭載している。ディスプレイのベゼルはどちらも上位機種より太めで、iPhone 16eが実寸で約2.3mm、Pixel 9aは実寸で約2.5mmとなっている。
 生体認証はiPhone 16eはノッチ内のTrueDepthカメラによるFace ID、つまり顔認証システムを採用している。マスク着用時にも対応するなど、高い認識精度を備えている。一方のPixel 9aはディスプレイ内蔵式の光学式指紋認証センサーを主な認証方式としているが、インカメラを使った顔認証にも対応している。指紋認証は指先をディスプレイの特定位置に置くだけで素早くロック解除でき、暗所でも確実に動作する。
●ベンチマーク上はiPhone 16eが高得点
 両機種はともに2024年に発売されたフラグシップモデルと同水準のプロセッサを搭載する。iPhone 16eはApple独自設計のA18チップを採用。ただし、上位モデルと比べるとGPUは4コア構成で1コア少なくなっている。また、注目すべき点としてApple初の自社設計5Gモデム「C1」を搭載しており、通信チップの内製化が進んでいる。
 一方のPixel 9aはGoogle独自設計のTensor G4チップを搭載、Pixel 9シリーズと同じプロセッサだ。通信モデムはSamsung製のものを内包しているが、実際の通信品質や安定性において両機種間に顕著な差は見られない。
 メモリ容量はどちらも8GBを搭載している。日常的な使用では、SNSアプリやメール、Webブラウジングといった一般的な用途では両機種とも十分な性能を備えている。
 Geekbench 6.4.0によるベンチマーク測定は、以下の結果だった。
・iPhone 16e:シングルコア3294、マルチコア7968
・Pixel 9a:シングルコア1340、マルチコア2919
 GPU性能では、iPhone 16eのMetal APIで24130に対し、Pixel 9aはOpenCLで7715を記録している。
 しかし、これらの数値はピーク性能を示すもので、実際の使用感とは乖離(かいり)することがある点に注意が必要だ。ベンチマークはマイクロアーキテクチャの差、API実装の違い、短時間のバースト処理を測定しているため、実際の長時間使用では差が縮まることが多い。特にPixel 9aは画像AI処理をTensor Processing Unit(TPU)がオフロードするため、実アプリでは体感性能が数値以上に優れる場面もある。
 結論として、iPhone 16eは同世代Androidハイエンド機と比較してもCPUで約45〜60%、GPUで約70〜110%のピーク値優位性を示している。Pixel 9aは前世代Tensorチップと比べて30〜90%のパフォーマンス向上があるものの、Androidハイエンド機との差は依然として大きい。ただし、TPUを生かしたオンデバイスAI処理が強みで、実用面ではこの差が効いてくる。
●バッテリー効率はiPhone 16eが優秀な結果に
 バッテリー駆動時間いずれも普段使いでは十分な水準だ。公称値では、iPhone 16eはビデオ再生で最大26時間のバッテリー駆動時間を実現。Pixel 9aは通常使用で30時間以上、「スーパーバッテリーセーバー」使用時では最大100時間の駆動が可能としている。iPhone 16eのバッテリー容量は正確には公表されていないが、約4000mAhと推測される。一方のPixel 9aは約5100mAhの大容量バッテリーを搭載している。
 Netflixアプリで動画視聴テストを行ったところ、iPhone 16eのバッテリー効率が優れていることが判明した。
 Wi-Fi接続・内蔵スピーカー利用の標準条件では、以下の結果だった。
・iPhone 16e:1時間あたり3.8%を消費
・Pixel 9a:1時間あたり5.5%を消費
 モバイル通信・Bluetoothイヤフォン接続という高負荷条件では、以下の結果だった。
・iPhone 16e:1時間あたり6.8%を消費
・Pixel 9a:1時間あたり9.3%を消費
 両条件でiPhoneが約30%効率的であることが分かった。
 物理的なバッテリー容量ではPixel 9aが優位だが、動画ストリーミングなど高負荷状況での電力効率ではiPhone 16eの最適化が光る結果となった。
 充電性能はほぼ同等だ。iPhone 16eは最大20Wの有線充電と7.5Wのワイヤレス充電に対応。Pixel 9aはさらに高速な23Wの有線充電と7.5Wのワイヤレス充電に対応している。iPhone 16eはMagSafeに対応せず、Pixel 9aもQi2は利用できないが、サードパーティー製のマグネット内蔵ケースを装着する手段はある。
●アップデート期間はPixelが7年を保証
 ソフトウェアアップデートの面では、iPhone 16eは約5〜6年の長期サポートが期待でき、Pixel 9aも7年間のOSとセキュリティアップデートを保証している。日常的な使用感では、iOSとAndroidという基本的な違いが大きく、既存のエコシステム(Apple製品かGoogle製品か)に合わせた選択が合理的だろう。
 総合的に見ると、処理性能の違いは体感できるほどの差はないが、バッテリー持続時間と充電速度では明確な違いがある。コストパフォーマンスという観点からは、より安価で長持ちするPixel 9aが優位といえるだろう。
●カメラは超広角があるPixel 9aが優位
 iPhone 16eは4800万画素のシングルカメラに対して、Pixel 9aは4800万画素+1300万画素超広角のデュアルカメラとなっている。
 iPhone 16eのカメラはF1.6の明るいレンズと光学式手ブレ補正を備え、センサーでのクロップにより2倍までの高品質なズームに対応。最大10倍のデジタルズームが可能だ。アウトカメラの基本性能は高いが、広角撮影に対応していないのは惜しい点だ。実際に使ってみると、建物や風景を引きで撮りたいときにちょっと画角が足りないことが多く、集合写真でも全員を収めるのに苦労する場面があった。インカメラはノッチ内に12MP(F1.9)センサーを搭載している。
 Pixel 9aはF1.7のメインカメラに加え、120度の画角を持つF2.2の超広角レンズを備えることで撮影の幅が広がる。最大8倍の超解像ズームとマクロ撮影にも対応しており、近接撮影も可能だ。インカメラはパンチホール式の13MPセンサーとなっている。
 実際の撮影では、iPhone 16eは自然な色表現、Pixel 9aはやや彩度高めの鮮やかな描写が特徴。ポートレート写真ではPixel 9aのデュアルカメラによる被写体検出の精度が高く、輪郭の自然さで優位に立つ。
 両機種ともに4K 60fpsビデオ撮影に対応。iPhone 16eはDolby Vision HDR録画ができる一方、Pixel 9aは手ブレ補正性能に優れている。
●AI機能をチェック GeminiとApple Intelligenceはどう違う?
 iPhone 16eとPixel 9aはどちらも最新のAI機能を豊富に搭載しており、スマートフォンの使い勝手を大きく向上させている。詳しく見ていこう。
Apple Intelligence(iPhone 16e)はChatGPT連携も
 iPhone 16eのAI機能の中核をなすのが「Apple Intelligence」だ。iOS 18.4から日本語対応した。プライバシーを重視した設計とされており、処理はデバイス内とAppleの専用サーバ(プライベートクラウドコンピューティング)の組み合わせで行われる。個人情報が第三者に漏れることがないよう配慮されているのだ。
 作文ツールはApple Intelligenceの目玉機能だ。メール、メモ、メッセージなど文章を入力するほぼ全ての場面で利用でき、文章の校正・書き直し・要約が簡単にできる。特に実用的なのが形式変換機能で、箇条書きのテキストを表形式に変換したり、カジュアルな文章をビジネス調に書き換えたりできる。
 SiriはChatGPTとの連携により大幅に賢くなった。「コピ・ルアクとはどんなコーヒー?」といった専門的な質問にも詳しく答えられるようになり、ChatGPTアプリに遷移して追加で質問ができるようになっている。
 通知管理も強化され、重要な通知だけを選別して表示する機能が追加された。メールアプリでは受信トレイの一覧表示で各メールの内容を1行で要約表示するため、開かなくても概要を把握できる。
 画像生成機能「Image Playground」では、テキストプロンプトから画像を生成できる。アニメ調、スケッチ調、イラスト調から選択可能だが、人物の生成には制限があり、「日本アニメ風」などの指定にも対応していない。
 「ジェン文字」はメッセージやメモアプリでオリジナルの絵文字を作れる機能だが、Apple純正アプリでのみ使用可能という制約がある。
 写真編集では「クリーンアップ」を備えている。これは写真に写り込んだ人物やモノを消す機能で、Pixelの「消しゴムマジック」に相当する。
Gemini(Pixel 9a)はGoogleサービスとの連携に強み
 Pixel 9aのAI機能の中心となるのは「Gemini」だ。基本的なタスクはデバイス内の「Gemini Nano」で処理し、複雑な処理はクラウド上のモデルで行う構成になっている。
 特に「Gemini Live」というAIアシスタントが優秀だ、自然な会話ができるAIアシスタントで、Google One AIプレミアム(月額2900円)に加入すると、カメラで見ている物体について質問したり、画面を共有しながら会話したりできる。
 Google マップやカレンダーなどのサービスとも連携し、タスクを効率化できる。Google マップの駅構内案内を文章で説明したり、新幹線の予約ページのスクリーンショットを渡してGoogleカレンダーの登録リンクを作成したりといったこともできる。
 カメラAI機能がPixelの強みだ。「一緒に写る」機能では2回撮影を行い、撮影者も含めた全員が写った1枚を生成できる。「ベストテイク」機能は複数の写真から各人の最適な表情を組み合わせ、理想的な集合写真を作成できる。
 「編集マジック」を使えば、写真の不要な部分を消したり、空の色を変えたりできる。「音声消しゴムマジック」では、録画した動画の音声を「人の声」「自然の音」「風の音」に分類し、それぞれの音量を調整可能だ。
 検索機能も充実しており、「かこって検索」では画面上の気になるものを指で囲むだけで関連情報を検索できる。Googleレンズとの連携で、カメラに映るものをリアルタイムで認識し情報を表示することも可能だ。
AI機能は一長一短 上位機種から省かれた機能も
 文書作成支援ではiPhone 16eの「作文ツール」が秀逸で、特に表形式への変換や文体変更の多様さが光る。メールの要約機能も日常の情報処理を効率化してくれる。
 写真編集ではPixel 9aが優位に立っており、「一緒に写る」や「ベストテイク」など撮影から編集まで一貫したAIサポートが魅力だ。特に集合写真を撮る機会が多い人には重宝するだろう。
 アシスタント機能では一長一短だ。Siriは日本語対応が進んでおり、ChatGPTとの連携で専門的な質問にも対応できる。一方Geminiは検索との連携が強みで、情報収集に優れている。
 上位モデルと比べると、妥協点もある。価格が高い分、iPhone 16eはApple Intelligenceのフル機能を利用できる。ただし「カメラコントロールボタン」がないため、ビジュアルインテリジェンスを起動するためには、アクションボタンやロック画面をカスタマイズするか、コントロールセンターに割り当てる必要がある。
 Pixel 9aについては、メモリ容量の制約により、「Pixelスクリーンショット」や「通話メモ」といった一部機能が利用できない点は、上位モデルとの差別化要素となっている。
●まとめ:どちらも先進的なミッドレンジ、iOSかAndroidかは好みで選ぶべき
 両機種を比較検討した結果、それぞれに明確な特徴が見えてきた。iPhone 16eはシンプルで洗練されたデザインと安定した性能、Apple独自のエコシステムの利便性が魅力だ。一方のPixel 9aはカメラ機能と画面表示のクオリティー、バッテリー持続時間、そして多彩なAI機能での優位性が目立つ。
 既存の使用環境との親和性を考慮すると、現在Apple製品を多く使っているユーザーにはiPhone 16eが、Googleサービスを日常的に活用している人にはPixel 9aが自然な選択となるだろう。
 価格面ではPixel 9aが2万円ほど安く、コストパフォーマンスを重視するなら明らかに有利だ。しかし、iPhoneならではの高い品質感やApple製品特有の洗練されたUXを求めるユーザーにとっては、iPhone 16eの価格プレミアムも許容範囲といえるかもしれない。
 最終的には個人の使用スタイルによって最適な選択は異なる。写真撮影が多く、画面の大きさや滑らかさを重視するなら断然Pixel 9a。Apple製品との連携やシンプルな操作性を重視するならiPhone 16eが妥当だろう。どちらも現時点で入手できる最も先進的なミッドレンジスマートフォンであることは間違いない。
(製品協力:アップルジャパン、グーグル)

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