「めちゃめちゃ驚いた」大手キャリアの値上げでMVNOはどう動く? mineo、イオンモバイル、メルカリモバイルの戦略

2025年5月26日(月)11時36分 ITmedia Mobile

MMD研究所が第9回MVNO勉強会を開催

 MMD研究所は2025年5月23日、都内で「第9回MVNO勉強会」を開催した。
 オプテージの松田氏(mineo)、イオンリテールの井原氏(イオンモバイル)、メルカリの永井氏(メルカリモバイル)が登壇。大手キャリア(MNO)の料金プラン改定やMVNO業界への新規参入、今後の法改正など変化が激しい市場環境下で、MVNO各社がどのように差別化を図り、どこに活路を見いだすのか? パネルディスカッション形式で率直な議論が交わされた。
●大手キャリア値上げに対するMVNO各社の見解
 最初の話題は、直近のドコモやKDDIによる新料金プランだ。これらは実質的な値上げと受け止められており、背景には電気代や人件費の高騰があるとされる。
 オプテージの松田氏は、「物価高や人件費高騰に対し、料金で吸収するのかコスト削減で吸収するのか、各社対応が分かれる」と前置きしつつ、「ユーザーが家計を見直す機会が増え、固定費である通信費に目が向く。MNOの値上げで価格差が広がれば、MVNOに改めて注目が集まる機会になる」との期待感を示した。 さらに、「MNOがセットプランなどで高付加価値化するなら、MVNOとしては明確な差が出てウエルカムな部分もある」とコメントした。
 イオンリテールの井原氏は、特にKDDIの既存ユーザーを含めた全体的な値上げに「正直、めちゃめちゃ驚いた」と率直な感想を述べた。一方で、「MNOが値上げに踏み切れたのは、MVNOが競争相手としてあまり見られていないことの現れかもしれず、反省すべき点」と厳しい自己評価も口にした。
 それでも、「接続料が現状維持である限り、MVNOは低価格を提供し続ける必要がある」と強調。 店舗運営コストに関しては、「キャリアショップはコスト増になっているかもしれないが、われわれ(イオンモバイル)は店舗を通じてお客さまとの距離の近さを強みにしたい」と述べた。
 メルカリの永井氏は「MNO、サブブランド、MVNOがより差別化され、ポジショニングが取りやすくなった。チャンスと捉えている」とポジティブな見方を示した。メルカリユーザーの価格や付加価値への意識の高さを背景に、「料金に関するコメントは非常に多い。この傾向は続くだろう」と分析した。
●新規参入相次ぐMVNO市場、既存事業者は歓迎ムード
 近年、カブアンド、メルカリ、JALなど知名度の高い企業の参入が続くMVNO市場。この動きについては、各社とも歓迎する意向を示した。
 井原氏は「大歓迎。プレイヤーが増えることでMVNO市場がまだ伸びているというメッセージになる。特に異業種からの参入は、既存サービスとの組み合わせでユーザーにお得感を提供できるのがMVNOの面白さ」と評価した。
 松田氏も、「知名度の高い事業者の参入は、MVNOそのものを知ってもらうきっかけになる。それぞれの強みを生かしたサービスが増えれば、ユーザーが自分にぴったりのものを選べるようになり、MVNO自体が盛り上がる」と期待を寄せた。
 新規参入組であるメルカリの永井氏は、「歓迎ムードのコメントを頂いてほっとしている」と述べ、「ユニークで強固な顧客基盤を持つ企業の参入は、お客さまの選択肢を広げ、業界全体の活性化につながる」との考えを示した。 自身でもメルカリのヘビーユーザーだったという永井氏は、メルカリモバイルについて「『ギガも売れるモバイル作ろう』というアイデアを聞いたとき、これはいけると思った」と参入時の手応えを語った。
●法改正、3G停波、MVNOが注目する今後の業界動向
 今後の注目点として、2026年4月からのマイナンバーカードによる本人確認の必須化、2026年3月末のドコモの3Gサービス終了、そして衛星通信といったトピックが挙げられた。
 松田氏は、マイナンバーカード利用について「利便性向上と不正利用防止の観点からはよい。しっかり対応したい」とコメント。 3G停波は「ユーザーが見直す機会であり、MVNOにとっては乗り換えのイベント」と捉えた。
 井原氏は、2026年4月のマイナンバーカードのICチップ読み取り必須化で「慣れていない方がオンライン契約で置いていかれる可能性がある」と懸念を示しつつ、「スマートフォンを入り口にした本人確認サービスが広がるいい機会」とも述べた。 ただし、「対応のための投資が必要で、このタイミングで離脱する事業者も出てくるかもしれない」と指摘。5G SAや衛星通信に関しては、「MVNOとしても使えるように国にも伝えていく必要がある」とした。
 メルカリモバイルでは、既に本人確認をマイナンバーカード一本に絞ってサービスを提供している。 永井氏は「マイナンバーカード認証のどこでお客さまがつまずくかが分かってきており、来年4月に向けて対応策を考えていきたい」と語った。
●各社の競争戦略 MNOに対する優位性をどう打ち出すか?
 最後に、各社の競争戦略について語られた。
mineo(オプテージ) 松田氏 ファンあってのmineo。ユーザーの皆さまとサービスを一緒に作っていく『マイネオらしさ』を大切にしたい。コミュニティーサイトを通じて長く使ってもらえる安心感を提供することが、リテンションにつながっている。
イオンモバイル(イオンリテール)井原氏 「安くないとイオンモバイルじゃない」という価格へのこだわりと、店舗を通じた安心安全の提供。イオングループの経済圏を生かし、「イオンを使っているならイオンモバイル」と相互理解いただけるサービスを目指す。他社にはまねできない競争戦略だ。
メルカリモバイル(メルカリ) 永井氏 プロダクトとしては、まだ完成形ではない。「Move Fast」の精神で、お客さまの声を吸い上げて改善し続ける。メルカリユーザーなら「やらない理由がない」ところまで高めていくことが一番の競争戦略。
 パネルディスカッション後の質疑応答で、MNOの低容量プランの廃止とMVNOの商機について問われると、松田氏は「直接的なキャンペーンは考えていないが、パケット放題Plusのような使い方提案を強化したい」と回答。井原氏は「チャンスだが、MNOから乗り換えない層へのアプローチが重要。店頭での比較提案を強化する」とした。永井氏は「チャンスと捉え、2GBプランの入会キャンペーンを実施中。価格以外の訴求も模索する」と述べた。
 また、各MNOでは金融提携サービスが伸びているが、経済圏という意味でこのあたりをどの程度重視しているかという質問に対して、イオンモバイルの井原氏は「イオンフィナンシャルとの連携は最重要課題の1つで、差別化の核」と強調。メルカリモバイルの永井氏は「既に決済でメルペイやメルカードが利用可能だが、さらにロイヤリティープログラムなど連携を強化していく」と語った。
 MVNO各社は、MNOの動向や市場の変化を注視しつつ、それぞれの強みを生かした独自の戦略でユーザー獲得と満足度向上を目指している。今後も、価格競争だけでなく、ユニークなサービスや顧客体験の提供がMVNO市場の発展の鍵となりそうだ。

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