“最低の時期”を乗り越え選手権7位に上がったハース。小松代表は「チームメンバーを信じていた」と復活の過程を振り返る

2025年1月17日(金)7時0分 AUTOSPORT web

 ハースF1チームの2024年シーズンは、新チーム代表の小松礼雄氏のもとで目覚ましい好転を見せた。小松代表は、ハースを2023年の惨憺たるシーズンのどん底から導き出した。


 ハースは、F1コンストラクターズ選手権で最下位から7位まで順位を上げ、前年の苦戦とは対照的に、新たな結束力と目的意識を示した。2023年シーズンは、オースティンで開催されたアメリカGPで導入された大規模アップグレードによってパフォーマンスを改善できず、ハースにとって苦い結果で終わった。むしろ新しいパッケージはマシンの速度を落とし、チームの苦戦を浮き彫りにした。


 2024年初めにギュンター・シュタイナーの後任となった小松代表は、チーム史上“最低の時期”から、楽観主義と進歩のシーズンに至るまでの道のりを詳しく語った。


「昨年(2023年)のオースティンは最低の時期で、このチームにとって最低の時期のひとつでした」と、小松代表はレースウェブサイト『Epartrade』に語った。


「19(18)のアップデートをひとつのレースで行うことに意味はありませんでした。私たちはそうしましたが、もちろんマシンは速くならず、むしろ遅くなりました」


 その痛みを伴う出来事は、変化の必要性を象徴していた。小松氏が代表に昇格したことで、ハースは挽回の道を模索し始めた。

2024年F1第5戦中国GPスプリント予選 ケビン・マグヌッセン(ハース)


■どん底から復活へ


 小松代表のリーダーシップの下、ハースは2024年に着実に進歩したが、僅差でアルピーヌに6位を奪われた。チームがわずか1年前にいた場所を考えると、この結果は多くの人々の予想を超えるものだった。


「あの最低の状態から抜け出して、チーム内にポジティブな雰囲気が生まれ、チームとしてうまく機能するようになりました。私たちは長い道のりを歩んできたと思います」と小松代表は語った。


「誰もが前を向いていると思いますし、それは素晴らしいことです」


 チームはシーズン終盤にアルピーヌに敗れて残念がっていたが、小松代表は接戦のなかに希望の光を見出した。


「アルピーヌに6位を奪われて、私たちはかなり落胆していました。しかし、ある意味では6位から7位に落ちたのはいいことです。我々はそこで戦っているということだからです」

2024年F1第24戦アブダビGP ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)


■チームのポテンシャルを信じる


 小松代表は、ハースの長い歴史とその人材に対する理解が、チームの復活の鍵になったと評価した。2016年の最初のシーズンからチームに所属していた小松代表は、チームの強みと弱みの両方を認識していた。


「ギュンターはチームに多大な貢献をしました。彼はチーム設立の立役者でした。ギュンターがいなければ、このチームは存在しなかったでしょう。私はそのことに対して大きな敬意を抱いています」


「私は2016年のレースイヤー初日からチームに所属しています。もちろんギュンターは、チームを編成するために以前からそこにいました」


「それでも、私は2016年1月に加入したので、チームのことをよく知っていますし、スタッフのことも知っています。組織の強みと弱みも知っています」

小松礼雄とギュンター・シュタイナー(ハース)


 小松代表は自身の昇進を、パフォーマンス不振の分野に対処し、チームに成功するためのツールを与える機会と捉えた。


「過去5年間、私たちはパフォーマンスを発揮していませんでした。ある程度の不満はありましたが、あちらこちらで特定のことを実行すればもっとよくなるのではないかと思っていました」


「ですから、私にとっては、実際にそうしたことを見たり実践したりして、自分の仮説が正しいのか間違っているのかを確認する機会となりました」


「正直に言うと、さっき言ったように私はチームのメンバーを信じていましたし、彼らは私の考えが正しかったことを証明してくれました。彼らがパフォーマンスを発揮できる環境を提供し、機能するアップグレードをマシンに施すよう最善を尽くしました。そして素晴らしいことですが、彼らは結果を出してくれました」


■トヨタとのコラボレーション:ハースの未来への鍵


 2024年シーズンに小松代表はハースをより強力なチームへと導くことができたが、チームが現在の能力の限界に近づいていたことを認めた。次のステップとして、ハースはトヨタとの技術提携を締結したが、小松代表はこれを長期的な成長に不可欠なものだと考えている。


「いくつかのことをすぐにやらなければなりませんでした。リソースや施設については、さらなる投資をしなくても、チームとしてよりよいパフォーマンスを発揮できると確信していました。そのため、すぐに進めなければならなかったのです」


「しかし、舞台裏ではチームの限界を引き上げなければなりませんでした。そうするには、何が最善のやり方なのかと考えていました。そして、かなり早い時期ですが、バーレーンの頃から、私はトヨタと話をし始めました」


「もちろん最初のアイデアは、言ってみれば少々ぼんやりししたものでした。しかし、話し合えば話し合うほど、これは完璧な組み合わせであり、このコラボレーションを行えばチームの絶対的な能力を高めることができるということがはっきりとわかりました。小規模なチームとして効率的に作業でき、そのベースラインの能力を徐々に高められれば、より素晴らしいことを達成できます」


 小松代表は、外部からの支援がなければチームの上限が限定されてしまうと認めた。


「もし何も変えず、トヨタとの協力関係もなく、この規模、このビジネスモデルをそのまま続けていくのであれば、私たちが今やっていることが限界になると思います」


「これ以上よくなることはないでしょう。しかし、それでは十分ではありません」

10月11日(金)に富士モータースポーツフォレストウェルカムセンターで行われた記者会見に出席したハースF1の小松礼雄代表とトヨタ自動車の豊田章男会長


 トヨタとの提携は成立した。小松代表のハースのビジョンには、さらなる高みを目指す野心を抱きつつ、一貫して中団のトップチームになることが含まれている。2024年に達成された進歩は、チームの回復力と前進する決意を示している。


「私たちは向上していきたいのです。中団グループで常にトップに立ち、さらに先を見据えてもっと向上していきたいと考えています」


 2023年の最低の落ち込みから2024年の復活まで、ハースはどんなに小さなチームでも大きな夢を見ることができることを証明した。小松代表の指揮とトヨタの支援により、このアメリカのチームの将来は明るいものになりそうだ。


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