【アジア最前線:中国 #15】厳しい状況に置かれる中国は日本戦をどう戦う?

2022年1月27日(木)17時0分 サッカーキング

[写真]=Getty Images

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モチベーション低下が危惧される帰化組
 11月に行われた直近のワールドカップ予選でオーストラリアと1ー1で引き分けた後、中国サッカー協会はリー・ティエ監督と袂を分かった。翌12月には、武漢FCで指揮を執っていたリー・シャオペンを後任に任命した。

 新政権は次のラウンドの日本戦とベトナム戦に向けて、52人の選手リストを作成。このうち、国外クラブに所属する選手をのぞいた45名が、上海での合宿に招集された。帰化組はブラジルとドバイで休暇中、ウー・レイ(エスパニョール)とリー・レイ(グラスホッパー)は所属先での活動に専念していた。

 中国スーパーリーグ(CSL)が終わった1週間後の1月11日にキャンプは始まり、東京へ向かう前日の22日に、27名の代表メンバーが発表された。帰化組では、ブラジル出身のアラン、フェルナンジーニョ、アロイージオ、イングランド出身のタイアス・ブラウニング(広州FC)が含まれている。
(編集部注:その後、フェルナンジーニョは「家族の健康上の問題」を理由に来日を取りやめた)

 ブラジル出身の3人は攻撃のカギを握る存在となりそうだが、モチベーションに問題を抱えていても不思議はない。彼らは皆、広州FCに所属していたが、親会社の恒大グループの経営不振により自らの未来を危惧し、この1月にクラブを離れた。つまり、3人とも現在は無所属の身だ。そもそも彼らに中国代表入りを促したのも恒大グループであり、高額のサラリーも、中国最大規模を誇っていた不動産会社が賄っていた。それが約束されなくなった今、選手の士気が低下していてもおかしくはない。

 加えて、彼らはW杯本大会出場の夢を実現させるために中国に帰化したわけだが、チームは今予選で6試合を戦って1勝2分け3敗の5位。すでにその目標は遠くに霞んでおり、厳しい現実だけが横たわっている。協会は彼らをつなぎとめようと必死に説得にあたっているようだが、紳士協定レベルの口約束では、何も保証されていないのが実状だ。

 また、コンディションも代表戦を戦えるレベルにあるかわからない。アランとアロイージオは11月のオーストラリア戦の後に母国へ戻り、12月以降の広州のリーグ戦には一切参戦していない。フェルナンジーニョにいたっては、最後に公式戦でプレーしたのは5月まで遡る。ブラウニングは12月のCSLに広州FCの一員として出場したが、1月に入るとリーグ戦の終了を待たずにドバイへ飛び、仲間よりひと足早くバケーションを取っている。

わずかな望みに懸ける中国が採る戦術は?
 こうした足並みのそろわない状況のなか、中国がW杯出場への望みをつなぐには、残りの4試合を全勝するしかない。戦力的にも非現実的なタスクを課されたリー・シャオペン監督は、おそらく日本とは撃ち合いを避け、一縷の望みに懸けるのではないだろうか──すなわち、前回対戦時の前半と同様に、8、9選手が引いて守り、カウンターやセットプレーでチャンスをうかがう戦術だ。

 そう考えると、前線にはスピーディーなアタッカーを置くことが予想される。チームで最も速くて得点力があるのは、クラブのサポーターから“小さなオートバイ”と呼ばれていたフェルナンジーニョと、2017ー18シーズンのCSLで得点王になったウー・レイだ。しかし、前者は先述したようにおよそ8カ月も実戦から遠ざかっており、後者も12月に入ってからラ・リーガに一度も出場していない。また、アランは2カ月以上トレーニングができておらず、アロイージオは累積警告により日本戦を欠場する。

 ならば、よりフィットネスが整っているはずのウェイ・シーハオ(広州FC)とジャン・ユーニン(北京国安)の2トップのほうが、相手にとっては嫌かもしれない。前者は過去にアヤックスも興味を示した快速ウイングで、後者は昨季のCSLで中国人選手トップタイの10得点をマークした点取り屋だ。

 ただいずれにせよ、どのポジションのクオリティも日本には及ばない。敵地での苦戦は必至だろう。

文=Ming Zhao(趙明)
翻訳=井川洋一

サッカーキング

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