「そんなに甘くない!」テスト好調で期待値爆上がりの三宅淳詞に新加入一瀬エンジニアが授けた“上位車両の感触”

2025年2月24日(月)10時10分 AUTOSPORT web

 雪の影響で2日目のセッションがキャンセルとなった全日本スーパーフォーミュラ選手権の鈴鹿公式テスト。走行できたのは2月18日の2セッションのみとなり、今シーズンの行方を占うにはデータが不十分な状況ではあるが、その中でも一瀬俊浩エンジニアが加入したThreeBond Racingの三宅淳詞の速さに注目が集まった。


 三宅の12号車は、ウエットコンディションで始まってドライコンディションに回復していったセッション1から速さをみせて1分38秒060で2番手タイムを記録。


 その流れのまま完全ドライとなった午後のセッション2でも速さを見せ、最終的に1分36秒396をマーク。3番手でテスト1日目を終えた。昨シーズンまでとは大きく異なるポジションということで、関係者の間でも一気に注目が集まった。


■予選向けセットアップに主眼を置いた理由


 今年も変わらず1台体制でドライバーは三宅で継続というThreeBond Racing。チーム体制面での変更点は、昨年までアドバイザーだった塚越広大が新たに監督に就任したこと、そして2021年と2022年に王者となった野尻智紀を担当していた一瀬エンジニアがTEAM MUGENから移籍加入したことである。


 実際にセッション直後にThreeBond Racingのピットを訪ねると、塚越監督はじめメカニックたちがニコニコしながら作業している姿が目立ち、昨年までの雰囲気とは180度近く変わった印象。塚越監督も「やっぱり、一瀬エンジニアの存在が大きいです。それでみんなのモチベーションも上がっています」と語る。


 またドライバーの三宅も「走り始めから、ここ最近にはなかったようなすごい手応えがありました」と変化を口にしていた。


 新シーズン一発目の走行から常に上位にいる三宅の12号車に「今季のダークフォースになるのではないか?」と期待が高まるなか、「皆さん、持ち上げすぎですよ(苦笑)」と冷静に現状を分析していたのが、他でもない一瀬エンジニアだった。


 テスト前日に行われた『メディアデー』の取材セッションでは「チャンピオンや優勝が最終目標だけど、(その目標を狙うのは)今ではない」と強調していた一瀬エンジニア。今季の走り出しに向けては、意識していたコンセプトがあるという。


「まずはチームとして昨年あまり結果が出なかったというところで、みんな苦しい思いをしていたので『早めに良いところを見せたいよね』という話はしていました。とはいえ、いきなりポールポジション争いや優勝争いができると現実的に思っていないので『まずは5番〜10番くらいを現実的な目標にしていきましょう』ということで、そこに向けてメカニックの連携やエンジニア同士の連携などをやっていくことを主題にして取り組みました」

三宅淳詞と塚越広大監督(ThreeBond Racing)


 他にも体制を変更したチームはあり、昨年末の合同テストから新体制で動き出している陣営もあるなか、ThreeBond Racingにとっては一瀬エンジニアを含めた体制でセッションに臨むのはこの2月のテストが初めて。チャンピオン経験のあるエンジニアは、タイムよりもシーズンに向けた土台作りを重視した。


「クルマやドライビング関係で行くと、昨年までの淳詞は上位に入るクルマを知らないというところがあったので、まずはそこの感触をドライバーにも理解してもらうところから始まりました。そうしないと予選でタイムを上げていくときに、ドライバー側がクルマをどう動かしたらいいか分からないので、なるべくそこにフォーカスして、予選向けのセットアップを注力してやりました」と一瀬エンジニア。


「1日目でけっこう走れたので、お互いの要望のすり合わせとか細かいところをセッション終わりに話すことができました。そこそこチームとしてはうまく回る体制はできたのかなと思います。ただ、レースとテストはやることのスピード感は全然違うので、まだまだレスポンスは上げないといけないなと思っています」


「あとはクルマの個体差とかもあるので、前のチームとまったく同じようにはいかないです。そのあたりも(1日目のテストで)ある程度把握はできました」と、この日の収穫について語った。


■“一瀬流”オペレーションの導入。1台体制は「今は気にしていない」


 チームには早くも“一瀬流”が導入されており、それによってメカニックたちもスムーズに作業を進められていた様子。それが、雰囲気が良くなっている要因のひとつでもある模様だ。


「そこはコミュニケーションを密にやっていくだけですね」と一瀬エンジニア。


「たとえばクルマが走っている時も『(メカニックに対して)次に何をやるか分からないけど、多分この3パターンのどれかになると思うから、この工具用意しておいて!』という話はしています。そういうオペレーションに関しては(自分が所属する)チームが変わったからどうということはなくて、先を読んで動いているエンジニアは、だいたいみんなやっていることです」と何か特別なことをしているわけではなく、先手を打つ指示出しをしていたという。


 昨年までのTEAM MUGENとは異なり、ThreeBond Racingは1台体制のチーム。よく「2台体制だとデータの比較ができる」「1台の方がチームのリソースをすべて集約させられる」と、体制の違いについてはこれまでも比較・議論されてきた。


 今回、初めて1台体制のチームに携わることになる一瀬エンジニアは、どう思っているのだろうか。


「1台体制の難しさは、アグレッシブなことをやるときにバックアップになる号車がいないとか。もし何かあってクルマが壊れたときにデータがまったく取れないとか。Q1のAグループ・Bグループで(路面コンディションが)どうなっているか分からないとか。あとは2台でセットアップを分担して試すことができないとか……諸々ありますね」


 そう語る一瀬エンジニアだが「でも、それってどういう場面で効いてくるかというと、ポールポジション争いをするような時に効いてくる話。ただ、今の12号車はその次元にいないので、気にしていないです。まずはQ1を安定して通るというところがこのチームの課題なので」と、チームの現場を分析し“将来トップ争いに加わるために通過しなければならない目先の目標”をしっかりと見定めていた。


 その目標について聞くと「開幕戦では5〜10位に入れれば御の字かなと思います」と明言。テスト1日目でトップ3圏内に入れた理由も、こう分析する。


「実際に午前のセッションでみると、有力チームはほとんどタイヤを使っていなかったですし、午後も坪井選手とかがめちゃくちゃトラフィックの中でアタックしていました。みんなそういう(本来のパフォーマンスを引き出せていない)感じだったと思います。だから、ちゃんとした勢力図は見えていないので、この順位が僕たちの本当の順位ではないと思っています」


 おそらくファンの間でも、三宅の12号車が好タイムを連発する姿をみて、今季に対して期待を寄せている人も多いだろう。しかし、一瀬エンジニアは「(周りから期待してもらえるように)そう思ってもらえるようなリザルトだったのは嬉しいところではありますけど……そんなに甘くないですよ!」とキッパリ。


 それでも、“これまでトップチームに在籍して後方から迫ってくるライバルを警戒するポジション”から、“昨年ノーポイントだったチームに移籍して先行するライバルに追いつき追い越すポジション”に変わったことは、一瀬エンジニアにとっては新たな挑戦になっていることは間違いない。まさに心機一転、新たな環境を楽しんでいる表情をしていたのが印象的だった。

2025シーズンより三宅淳詞(ThreeBond Racing)を担当する一瀬俊浩エンジニア


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