Jリーグ情報番組7選。何が面白い?短命に終わりそうなものは?

2025年2月26日(水)18時0分 FOOTBALL TRIBE

写真:Getty Images

2022年、第6代のJリーグチェアマンに野々村芳和氏が就任以来、「Jリーグをもっと多くの人の目に触れられる環境を整えたい」という考えの下、数々のJリーグ情報番組が放送されている。


2020年に『やべっちFC〜日本サッカー応援宣言〜』(テレビ朝日系)が、2021年に『スーパーサッカー』が放送終了となり、危機感を募らせたのがきっかけと言われているが、その結果、Jリーグ、スポーツ振興くじ(toto)、Jリーグメインスポンサーの明治安田などがバックアップする形でJリーグ情報番組が増え、ファン層の拡大に繋がっている。


スポーツ専門の動画配信サービス『DAZN』に加入していないライトファンも、試合のダイジェスト映像などを目にできる機会が増えた。欧州サッカーファンにとっても、全てを網羅するには『DAZN』に加え『U-NEXT』や『WOWOW』、『スカパー!』に加入する必要があり、その全てに加入したとすれば月2万円ほどになってしまうことで、ダイジェスト番組は貴重な存在だ。


ここでは、そうしたサッカー情報番組を挙げ、番組の色から解説の質、さらには長寿番組になりえるか否かを検証したい。※ペイチャンネルやサブスクで配信されている『やべっちスタジアム』(DAZN)、『チャンピオンズリーグダイジェスト!』(WOWOW)、見逃し無料配信動画サービスTVer限定配信の『MONDAY FOOTBALL』は除外する。




小野伸二氏 写真:Getty Images

『MONDAY FOOTBALL みんなのJ』(フジテレビ系)


2024年4月からJリーグ情報番組として放送されている『MONDAY FOOTBALL みんなのJ』。J1のみならず、J2、J3までを扱う。元日本代表MFの小野伸二氏をメイン解説者に迎え、彼の豊富な経験を通じ好プレーをピックアップ。Jリーグの楽しさを伝えるスタイルが好評を博している。


一方、番組そのものは小野氏が好プレーをセレクションするなど、正統派ダイジェスト番組の枠に収まりすぎてエンタメ色が不足している感もあり、他との差別化といった面で一歩、後れを取っている感は否めない。


同番組の源流は、元日本代表FW三浦知良(現アトレチコ鈴鹿クラブ)が1994年、セリエAジェノアに移籍したことで始まった『セリエAダイジェスト』だ。その際の実況を担当したジョン・カビラ氏がナレーションを担当しているとあって、当時を知るサッカーファンにとっては懐かしい気持ちにさせられる(ちなみにTVer限定配信の『MONDAY FOOTBALL』では、当時のメインMCであった青嶋達也アナウンサーが司会を務めている)。


『セリエAダイジェスト』はその後、ヨーロッパサッカー全般を扱う『FOOTBALL CX』『FOOTBALL DX』『MONDAY FOOTBALL R』と名前を変えながら存続していたが、2016年ついに、スポーツ総合番組『すぽると!』に吸収される形で終了した経緯がある。


『MONDAY FOOTBALL みんなのJ』は、ライトファンも含めたJリーグファンにとっては一定の支持を得られていると思われるが、良くも悪くも小野氏の主観を押し出した番組とあって、評判が上がるかどうかは今後の内容次第だろう。




りんたろー氏 写真:Getty Images

『ラブ!!Jリーグ』(テレビ朝日系)


お笑いコンビ霜降り明星のせいや氏と、EXITのりんたろー氏をメインMCに据え、「初心者でも楽しめるサッカー番組」をコンセプトに、クラブや選手のみならずサポーターやスタジアムグルメなども積極的に取り上げる『ラブ!!Jリーグ』。


関東地区では金曜深夜(土曜1:15)からの15分番組で、ネット局でも深夜に放送されていることから、オンタイムよりは、もっぱら録画あるいはTVerでの見逃し視聴で見られている番組だろう。


2021年に、メインMCに元日本代表DF内田篤人氏を迎え放送が開始された『チャント!!Jリーグ』(関東ローカル)を源流とし、2022年に『ラブ!!Jリーグ』と装いを変えた上で放送されている。


MCのせいや氏は少年時代の9年間ものサッカー経験者で、番組内での現役Jリーガーとのリフティング対決で勝利している。りんたろー氏もHonda FCジュニアユース、静岡北高校、浜松大学と14年間にわたりGKとしてプレーし、プロを目指した過去がある。かと言って、2人は中途半端な技術論に走らず芸人に徹し、バラエティーに振り切っている点では好感が持てる。


土曜昼、日曜深夜と放送時間を変えながらも続いているということは、それに見合ったニーズがあるということの証明でもある。“ガチ”のサッカーファンには受け入れられていないかも知れないが、新規ファン獲得には貢献していると言えるのではないだろうか。




ハリー杉山氏 写真:Getty Images

『WEEKLYワールドサッカー Supported by U-NEXT』(BS11)


唯一Jリーグではないが、『WEEKLYワールドサッカー Supported by U-NEXT』はU-NEXTの広報番組としての位置付けで、イングランドのプレミアリーグとスペインのラ・リーガのダイジェスト番組だ。


ハリー杉山氏をメインMCに迎え、ハイテンポで試合の模様を映し出し、そこに元日本女子代表FW岩渕真奈氏とゲスト解説者がコメントするというスタイル。U-NEXT未加入者や、フルマッチを全てカバーし切れない忙しいファンにとっては非常に有り難い番組だ。逆にダイジェストが充実し過ぎて、U-NEXTのプロモーションに繋がっているのか心配になるほどの内容の濃さを誇っている。


しかしながら、来2025/26シーズンも同番組が続く保証はどこにもない。この番組がU-NEXT加入者増に繋がっていないと判断されれば、今シーズン限りでの放送終了の可能性も高い。楽しんでおくのも今のうちとも考えられよう。


中川絵美里氏 写真:Getty Images

『Jリーグタイム』(NHK BS)


2003年に放送開始された『速報!Jリーグ』を源流に、2006年から『Jリーグタイム』の名称となり、来年には20年目を迎えようとするJリーグ情報番組の老舗と言える。


シーズン中はJ1中心だが、代表ウィークでJ1の試合がない週にはJリーグウォッチャーを自称するタレントの平畠啓史氏を迎え「J2スペシャル」「J3スペシャル」といった特集や、代表戦はもちろん、ACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)も網羅したNHKらしい編成で、安心して見ていられるダイジェスト番組だ。


オフシーズンには「ウィンタースペシャル」が放送されるのもファンとしては嬉しいポイント。週替わりの解説陣も元日本代表選手が揃い、充実した内容となっている。


2017年2月から4年10か月もの長きにわたりキャスターでタレントの中川絵美里氏がMCを務め視聴者から人気を博していたが、2021年に降板。その後、フリーアナウンサーでタレントの高階亜理沙氏を経て、昨2024年からは今井美桜氏がMCを務めている。


大人気だった中川氏の降板後ファンの間では「絵美里ロス」とも言える現象が起き、後任MCはその見えない壁に悩まされたと思われるが、当初は硬さも見られた第7代MCの今井氏も2年目を迎え、今では番組の顔となっている。


まさに保守本流を行くJリーグのダイジェスト番組として君臨し、日曜22時50分からの放送にも関わらず、日曜開催の試合もじっくりと見せてくれるところには、NHKの底力を感じさせる。




野々村芳和氏 写真:Getty Images

『KICK OFF!J』(TBS・関東ローカルなど)


JリーグとJFA(日本サッカー協会)が直接、企画・監修し、TBSのみならず地方局とも提携して2022年から放送開始されたJリーグ肝いりのサッカー情報番組。


地方ごとに『KICK OFF ○○(地域名や道県名)』として、それぞれが地元クラブの試合ダイジェストを報じている。扱うクラブが1チームであれば15分番組であることが多いが、多くのクラブを扱う場合30分番組となっている。


元々は、1986年から2014年まで静岡第一テレビで放送された『KICK OFF』をヒントに、静岡出身の野々村芳和チェアマンが復活させた形。それぞれが別内容の番組であり、関東ではTBSで放送されているが、地方では系列に関係なく独自の番組制作がなされている。「キー局」という概念すら超えて、系列を跨いだ斬新なネット番組といえる。


関東ローカルの『KICK OFF!J』は17クラブ、関西ローカルの『KICK OFF!KANSAI』は6クラブの試合を扱う必要があるため、30分という枠の中やや駆け足気味になるが、地方クラブにとっては15分番組とはいえ、サポーターやライトファンも含め、貴重な情報源となっている。


『KICK OFF!J』以外はJリーグ公式YouTubeでの配信により、出身地から離れた都市で暮らすファンも見られる仕組みを取られており、日本全国に広がった60にも及ぶJクラブ(加えてJFLのいわてグルージャ盛岡、北信越リーグの福井ユナイテッドFC)のPRに貢献。“全国47都道府県ネット”となったことで、まずは野々村チェアマンの目論見通りの効果を示しているといえるだろう。




サッカーボール 写真:Getty Images

『サタデーナイトJ』(テレビ東京系)


Jリーグ発足以前からサッカー中継に力を入れていたテレビ東京。特に1968年に放送が開始され、ワールドカップやプレミアリーグ創設前のイングランドリーグ、ドイツのブンデスリーガを放送していた『三菱ダイヤモンドサッカー』は伝説となっている。また、1992年から1994年までは、欧州主要リーグや欧州選手権などを録画中継した『ダイナミックサッカー』も放送されていた。


1993年にJリーグ情報番組として復活した『ダイヤモンドサッカー』だが、2年後にはJリーグから海外サッカーに舵を切ったものの、わずか3年で終了。その後、サッカー報道とは一線を画していたが、2023年、Jリーグのハイライト番組としてスタートしたのが『サタデーナイトJ』だ。


メイン司会には、入社わずか半年の中根舞美アナウンサーが抜擢されたものの、アナウンスに関する基本能力の不足は如何ともしがたく、噛みまくった挙げ句に笑ってごまかすシーンが頻発し、ゲスト解説者にフォローされる始末。しかも彼女の売り文句は「高校時代はサッカー部マネジャー」「大学時代にデータスタジアムでアルバイト」というもの。何かと民放テレビ局の女子アナの質の低下が叫ばれて久しいが、“ここに極まれり”といった印象だ。


今季になって、中根氏のプロフィールに「D級コーチライセンス」が加わったが、2日間の座学と実技を経て簡単な筆記試験に合格すれば手にできる程度のものだ。サッカー番組の司会者として“箔”をつけたかったのだろうが、逆にあざとさを感じさせる。しかもアナウンスの拙さは相変わらずだ。


「サッカーといえばテレ東」も今は昔だ。局側もサッカーに力を入れているところを見せたいのであれば、サッカー番組を新人アナの“研修代わり”にしている場合ではないだろう。視聴者のみならず、ゲスト出演する選手や解説者もさぞかし、ストレスを溜めているのではないだろうか。




勝村政信氏 写真:Getty Images

『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系)


多くのプロ選手を輩出している埼玉県立浦和北高等学校サッカー部OBの俳優である勝村政信氏をメインMCに据え、「サッカーをこの国の文化へ」というテーマの下、2011年の放送開始から今年1月には放送500回を迎えた長寿番組。


『やべっちFC〜日本サッカー応援宣言〜』(テレビ朝日系)や『スーパーサッカー』(TBS系)といった人気サッカー番組が次々と打ち切りになる中、同番組も一時は関東ローカルに降格するなど苦難の時期を乗り越えながらも、サッカーを軸としたトーク番組であるが故に生き残った。その思いは、ゲストに元日本代表MF中田英寿氏を迎えた際、勝村氏自身が正直に告白している。


ゲストには他スポーツの選手のみならず、学者や文化人など幅広く、様々な角度からサッカー界の発展に結びつけている。世界的に見ても、このようなアプローチでサッカーを扱う番組は少ないのではないだろうか。


決して派手さはなく、ダイジェスト番組でもないことから、単純に比較対象にはならないかも知れないが、“マンネリ化”さえ避けられれば、600回、700回と続いていく番組となるだろう。

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