「互いに避けられた接触」「ずっと2速がない状態で」「原因がまだ分からない」【SF Mix Voices第1戦“事件簿”(2)】
2025年3月8日(土)23時17分 AUTOSPORT web

3月8日、全日本スーパーフォーミュラ選手権は三重県の鈴鹿サーキットで2025年の開幕戦を終えた。セーフティカーが3度出場する荒れた展開となったレースでは太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が勝利を挙げたが、その後方では数々の接触やコースアウト、トラブルが起きていた。
レース後に全ドライバーが参加して行われる“メディアミックスゾーン”でのコメントから、第1戦で発生した“事件”の数々に、2回に分けて迫る(前編はこちら)。
■福住仁嶺(Kids com Team KCMG):Astemoシケインで平良と接触
KCMGで2年目のシーズンを迎えた福住。昨季2024年に見せたスピードを引き継ぐように午前中の予選では3列目5番手につけ、トヨタ勢のトップに。決勝では上位を占めたホンダ勢に割って入っていくことが期待されたが、オーバーテイクシステムの効果を見誤ったことで序盤に3つポジションを落とし、その後のダブルピットストップの影響でさらに順位を下げたことに続き、2度目のリスタート直後に致命傷を負うアクシデントに見舞われた。
ポイント圏外に下がったあとも「諦めていなかった」という福住は、13番手からの巻き返しを狙い2度目のセーフティカー明け直後、平良響(KDDI TGMGP TGR-DC)に近づいていった。
「ペースは悪くなさそうでした」と福住。「2回目にリスタートした後、平良選手をかわそうとしたところでシケインで当てられてしまい、右リヤのタイヤがパンクしたようなかたちでそのままクルッと回ってしまって、おまけにイゴール選手がやってきてしまいました」とアクシデントの状況を説明した。
レーシングアクシデントと判定されたこの事故により開幕戦をリタイアで終えることとなった福住は、「本当にチームのみんなに申し訳ないです。ここまで頑張っていろいろと考えながらやってきたのですが……」と肩を落としたが、「明日もあるので、持ち切り替えて頑張ろうかなと思います」とすぐに前を向いた。

■平良響(KDDI TGMGP TGR-DC):Astemoシケインで福住と接触
12番手を争うバトルのなか、福住との接触があった平良は当時の状況をさらに詳しく語った。
「お互いに避けられた接触なんだろうな、という感じはしています」
「僕が結果的にイン側の縁石に乗って跳ねて、ドンとぶつかったかたちでした。もちろん、福住選手が(2台が並べる)スペースにゆとりをもって、僕も僕でイン側で縁石に乗りすぎずに走ることができていれば、お互いに接触せずに済んだな、という印象です」
このアクシデントの前、平良は別の事件にも巻き込まれていた。それは19台全車が同時にピットインした際に発生。チームメイトの小高一斗が大湯都史樹との接触によってリタイアとなったことでダブルストップの影響を受けなかった平良だったが、思わぬタイムロスに見舞われた。「タイヤを替えて出発するタイミングで野中選手が僕の目の前にギュッと入ってくるかたちになり、ピットから出ることができませんでした」と語った平良。
「これがかなりの痛手で……それがなければ大嶋選手よりも前ですし、阪口選手とかそのあたりまでいけていたはずでトップ10圏内でレースができていたのかなと思います」と悔しさを滲ませた。

■小出峻(San-Ei Gen with B-Max):2速ギヤに入らない
7番グリッドからデビューレースを迎えた小出だが、フォーメーションラップ中に2速が使えなくなるトラブルが発生。満足にスタートダッシュを決められず、一時は最後尾に下がった。レース中もトラブルと格闘しながらのドライビングとなったが、最後まで走り抜いて14位完走を果たした。
「フォーメーションラップの途中からおかしくなって、2速が入らなくて1速から3速に飛んでしまう状況でした。スタートも2速に入れようとした瞬間に空転することが分かっていたので、スタートしてすぐ左側に避けて、そこからクラッチを切って3速に入れて……そこからずっと2速がない状態で、ヘアピンとシケインは3速で走っていました」と小出。
予選ポジションが良かっただけに惜しいトラブル発生となったが「今日1日通して予選も良いところがあったし、レースペースも悪くないところがありました。結果的にはこういう形でしたけど、ちゃんと完走できましたし、明日に向けてという意味では自信になるレースだったと思います」とポジティブに捉えていた。

■牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING):ダブルピットでエンジンストール
4番手スタートの牧野は、全車一斉ピットストップとなるなか、自分より前方をチームメイトが走っていたことから、“ダブルストップ”の影響でタイムロスしたことに加え、エンジンもストールしたことで17番手まで転落。後半は必死の追い上げもあり、最終的に10位で1ポイントを獲得した。
「簡単に言うとエンジンが止まったんですけど……。原因がまだ分からないんですけど、ダブルストップで(太田格之進がピットアウトして)僕が動こうとしてクラッチをつないだ時に、すぐ(エンジンが)止まっちゃったんで……どうすることもできず、ただエンストしてしまいました」と牧野。
「いずれにせよダブルピットになった時点で、だいぶ厳しい展開になるんだろうなと思ったんですけど、それ以上に厳しい展開になりました。レースなので何を言っても結果は変わらないですし、予選で前に行けなかったのとスタートで前に出られなかったというのが、今回の敗因かなと思います」と、今回のレース結果を受け止めていた。

■坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S):レース直前にトラブル発生
9番グリッドから今季開幕戦を迎えた昨年王者の坪井。レース展開もうまく味方につけて4位フィニッシュを果たしたが、実はレース直前までトラブルを抱えており、最悪の場合はリタイアを決断しなければいけない可能性もあったという。
「グリッドに着くまでに症状が出て、(グリッド到着後に)チームに伝えました。何が原因かも分からなかったのですが、チームのみんなが頑張ってくれて(フォーメーションラップまで)直前のところで動くようになったので『よし、行こう!』という感じになりました。もしかしたらリタイアになっていたかもしれない状況のなか、それも含めての4位だったので、めちゃくちゃ大きかったです」
今回はホンダ勢にトップ3を独占されたが、「レースではトップ3との差を感じることもできたし、どこが速くてどこが遅いのかを見ることができました。タイヤの特性も変わっていろいろやれるところはあるなと思ったので、明日はそれらをトライして、しっかり攻めていきたいなと思います」と第2戦に向けた意気込みを語った。
