ドジャースの「2025年ローテーション」を改めて検証してみた 今季も求められるのは“固定”よりも”柔軟性”か
2025年3月9日(日)18時0分 ココカラネクスト

スネル、山本、グラスノーが軸になるのは間違いない(C)Getty Images
ドジャースは今季も、先発ローテ—ションの柔軟性が求められる。3月18日から始まる東京開催の開幕シリーズで、カブスとの開幕戦に先発するのは2年目の山本由伸。順調にいけば、第2戦には佐々木朗希のメジャーデビューが期待されている。約1週間後、本拠地ロサンゼルスでの開幕は右腕タイラー・グラスノーと、サイ・ヤング賞2度の左腕ブレイク・スネルが登板するとみられる。
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現状で、5人目以降の先発候補に挙がるのが右肘のトミー・ジョン手術から復帰を目指すトニー・ゴンソリンとダスティン・メイだが、故障明けの両右腕がどれだけ計算できるかは不透明だ。1年目に11勝を挙げたボビー・ミラーは、2年目の昨季は不振にあえぎ、今季は出直しとなる。
メジャー各球団との争奪戦の末に獲得し、1年目から期待される佐々木にしても、生活リズムなど環境が激変する中で、シーズン162試合をフル稼働させれば、故障のリスクが高まってもおかしくない。登板間隔や蓄積疲労をマネジメントしながら先発ローテーションに“組み込んでいく”ことが、予想される。
安定して先発ローテーションを回りながら、勝ち星を計算できる投手は現状で山本、グラスノー、スネルの3本柱。一方で、グラスノーは昨季、メジャー9年目で自己最多の投球回134イニングをマークしたが、8月中旬頃から右肘を故障し、シーズン終了となった。ポストシーズンでは登板できず、シーズン終盤まで投げ続ける耐久性にやや不安がある。スネルは18年と23年にともに180イニング以上を投げ、両シーズンでサイ・ヤング賞を獲得したが、昨年は故障がちで104イニングにとどまった。連覇を目指すドジャースにおいて、ポストシーズンを見据えながらいかにシーズンを乗り切るかが、今季の投手陣の課題でもある。
その上で、先発陣を含めた選手層の厚さと起用の柔軟性が、チームの強みとも言える。昨年はメジャー30球団で2番目に多い40人の投手を起用。大敗の展開で登板した野手も含めてだが、球団記録だった。また、先発で短いイニングを投げる「オープナー」も含め、17投手が先発マウンドに上がった。主力投手の相次ぐ故障に見舞われたシーズンだったが、先発ローテーションの谷間で適宜、若手投手を組み込んだ。ポストシーズンでは、先発から盤石の救援陣をつないで勝ちにつなげる戦い方が功を奏すなど、投手起用の柔軟性が際立った。
5月前後で二刀流復帰を期待されていた大谷翔平は、予定よりやや遅れているが、今シーズン途中で先発ローテーションに加わることが見込まれる。また、左足の手術で出遅れていたレジェンド左腕クレイトン・カーショウも順調なら前半戦のうちに復帰できそうだ。大谷は投打で出場する上に、2度目の右肘手術明けを考慮すれば、中6日を基本軸にローテーションを回っていくと考えられる。場合によっては、多少登板間隔を空けることもあるかもしれない。一方で、カーショウは万全の状態で復帰すれば、従来通り中4〜5日で回ることも可能。シーズンの戦いが進むにつれて先発ローテーション候補が増えることは、チームにとっては大きなプラスになる。
先発6人を固定し、ローテーションを回していく従来の形ではなく、3〜4人を軸に5人目、6人目を必要に応じてミックスさせていく柔軟な形が、今季も必要となってくるだろう。ドジャースは昨季、先発の枚数が足りず、他球団と比べて不利とみられていたポストシーズンでも、救援投手を先発マウンドに送る「オープナー」でしのいできた。むしろ、その戦略で結果が出たことで今後、積極活用していく可能性もある。
いずれにしても、ドジャースは故障者が続出してもカバーできる選手層の厚さが強豪たる由縁だ。仮に、先発ローテーションのメンバーに故障者が出た場合に、どう対処していくか。昨年同様の戦略を立てるのか、また新たな形が生まれるのか。連覇を目指すチームの柔軟なメンバー構成が注目される。
[文:斎藤庸裕]
【著者プロフィール】
ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『 大谷翔平〜偉業への軌跡〜【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。