選手の体を保護する装備品を比較。二輪用は『転倒』、四輪用は『難燃性』と設計思想の違いも/鈴鹿2&4

2024年3月29日(金)6時57分 AUTOSPORT web

 2024年のスーパーフォーミュラと全日本ロードレース選手権の開幕戦となった鈴鹿2&4レースで見つけた「裏ネタ」を、『カメラマンから見た○○』でお馴染みの「Nob.I」がお届けします。


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執筆させていただいている『カメラマンから見た全日本ロード』で取り上げようと突撃取材した『二輪と四輪の装備品比較』が意外に面白く、スピンオフとなりました!


協力していただいたのは、アルパインスターズサポート、牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。

一人2&4


二輪用と四輪用とではレーシングギアの設計思想が異なるそうです。


まずはレーシングスーツ。
二輪用は、転倒の際に怪我しないように(滑るように)が主な役割ですが、四輪は、燃えないように(難燃性)が主眼。


マシンがクラッシュした場合、二輪は選手が放り出されますが、四輪はシートにベルトで固定されており、自ら脱出しなければなりません。
意識があれば良いですが、衝撃で気を失うこともあります。
そのような状態でマシンが炎上すると……
そのため、難燃性が最も求められる性能になります。


「これ、ニキ・ラウダね?」と尋ねると、「おたく歳いくつ?」という問答があったのは内緒です。


そのようなトラブルの際、選手をコックピットから引っ張り上げるために、その肩部に工夫があります。
肩のアルパインスターズロゴの部位が、袖から少し浮いているのが分かるでしょうか?

肩のフラップ


ここを掴んで、マシンから引っ張り出すための機能です。
バブル期の「肩パッド」的な装飾ではなく、きちんと意味があったんですね……


また、ジッパーは燃えないよう金属製が採用されています。

※取材のためインナーはTシャツを着用


また、alpinestarsレーシングスーツの特徴のひとつとして、『シームレス』があります。
『縫い』が体側に出ておらず、ひっかからなくて非常に着やすいそうです。

※取材のためインナーはTシャツを着用


牧野選手曰く「以前着用していた他社と比べて、alpinestarsのスーツは非常に軽量で動きやすく、通気性が良い」そうです。


動きやすさの工夫として、ウエスト部にストレッチが採用されています。


これは、二輪のツナギの設計に起因しており、alpinestarsは縦方向の伸縮を意識してデザインされているそうです。

ウエスト部に注目


続いて説明するグローブは、左右別で牧野選手に着用してもらいました。

右手が二輪用(写真左)、左手が四輪用(写真右側)


「二輪用はボクシンググローブみたい」という感想。
余談ですが、カラーリング的には二輪用でも全く違和感がありません。このままドライビングできそうな雰囲気です。


先の通り、二輪用は「転倒の際、路面に引っかからないように滑る」を主な目的としていますが、四輪用は「難燃性」が主な機能。
また、四輪用はグリップ機能も求められます。
私も試着させてもらいましたが、モトクロス用のグローブみたいな感触でした。


もちろん、グローブもシームレスで縫い目が外側になっています(指先に注目)。

左が四輪用、右が二輪用


続いてシューズ(ブーツ)。

全景比較。言わずもがな、右足が二輪用(写真左)で左足が四輪用(写真右)


シューズ(ブーツ)は見た目があきらかに異なります。
二輪用は転倒しても足首が曲がらないようにすねまで保護しています。
四輪用はまるでランニングシューズのようです。


両方とも、ポイントはソールのかかと部。

ソール比較。写真左が二輪用で写真右が四輪用


二輪用は、ハイサイド等でかかとから着地した際、その衝撃を吸収するためにプラスチックのパーツで保護しています。ちなみに、交換可能。


四輪用は、ペダルの操作性を第一に設計されています。
自動車を運転する方は分かると思いますが、かかとを軸にアクセルペダルを踏んでいるはずです。
よって、ペダル操作の軸となるソールのかかと部は、ドライビングに大きな影響する重要な部位であり、相当に気を遣ってつくられているそうです。


残念ながら写真では分かりませんが、その重さの違いに驚愕します。
四輪用はほとんど重さを感じず、まさにランニングシューズのような軽さ。


余談ですが、私が初めてブーツを買いに行った際、「やはり憧れのaplinestarsだろう」とワクテカして用品店に行ったところ、足の形が合わず、泣く泣く他社製を購入したという苦い思い出があります。
十数年前の私にこう言ってあげたいです、「後年、alpinestarsの取材することになるぞ」と。


残念ながら全日本ロードには、alpinestarsのツナギを着用しているライダーがおりません。そのため、RSタイチにご協力いただき、比較写真を撮影させていただきました。

RSタイチ GP EVO


2023年の鈴鹿8耐で長島哲太選手が実際に着用したツナギです。

ショルダー部アップ


四輪用のレーシングスーツ肩部とは明らかに異なります。
プラスチックで覆われていて、文字通り体を「守って」います。


最も大きな違いは、エアバッグでしょう。

エアバックシステム


RSタイチもエアバッグシステムはalpinestars製を採用しています。
そのシステムは2023年のMotoGP日本GPで説明していますので、是非ご覧あれ(https://www.as-web.jp/bike/1000733


ちなみに、RSタイチの特徴を質問したところ、「革のパターン」だそうです。
これは、どのツナギメーカーでもその特徴となるそうですが、メーカー独自のパターンがあり、研究のために他社メーカーのパターンもチェックしているそうです。


尚、フルオーダーであっても、一度型紙を作成したら同じ寸法を作り続けるのではなく、シーズン毎に各パーツの寸法を変更することもあるそうです。
走行写真を観察し、選手へ「ここがつっぱっているので長くしてみましょう」的な提案するそうです。
我々が撮る写真が意外なところで役立っているようで、嬉しい限りです。
その他、いろいろなヒミツも教えていただけました。
今回は文字数の関係で書ききれませんが、面白そうなので今度は各メーカーのツナギ特集でも企画したいです。


二輪四輪共通のアイテムとして、こちらを比較しないわけにはいきません。

左が二輪用(長島哲太選手)、右が四輪用(Juju選手)


最も重要な頭部を護る、ヘルメットです。
アライヘルメットにご協力いただけました。


外観はシールドの縦幅が明らかに異なります。

シールド全開!


シールドを開けると、その差異がよくわかります。
尚、シールドの厚さは、二輪用が2mm、四輪用が3mmということです。
その理由は、四輪用は耐火に関する規格があるためシールド自体を厚くし、また火そのものからも頭部を護っています。


内側のパッドの材質も異なります。
四輪はレーシングスーツと同様に、難燃性にその主眼を置いています。

左が四輪用、右が二輪用


走行が終わると、そのメンテナンスに大忙し。
次回はじっくり取材させていただきたいです。

鈴鹿サーキット内、アライヘルメットサービスガレージ


忙しい中ご協力いただきまして、ありがとうございました。


楽しんでいただけましたでしょうか?
これからは選手の装備にも注目してみると面白いかもしれません。
皆さんの今後の観戦に役立てば幸いです。


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