イロレーティングはFIFAランキングとどう違う?日本代表は14位
2025年4月7日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

FIFA(国際サッカー連盟)は4月3日、最新のFIFAランキングを発表した。日本代表のポイントは0.15ポイント減の1652.64点だったが、順位は前回と変わらず15位で、アジア最上位をキープしている。
アルゼンチン代表が首位を守った一方で、スペイン代表が3位から2位に上昇。フランス代表が3位に落ち、4位のイングランド代表、5位のブラジル代表は、その座を守った。アジア勢では、イラン代表が18位、韓国代表が23位、オーストラリア代表が26位で、いずれも変動はなし。
韓国は、2026FIFAワールドカップ(W杯)アジア最終予選で、いずれもホーム戦の第7節のオマーン代表戦、第8節のヨルダン代表戦で引き分けたことで、10.52ポイントがマイナスされ1585.45点となり、先んじてW杯本大会出場を決めた日本、イランとの差が広がってしまった。この結果、オマーンは17.24ポイントを加え80位から77位に、ヨルダンも13.24ポイントを加え64位から62位にランキングを上げた。
FIFAランキングは、W杯本大会のポッド分けに反映される。このままの順位で組み合わせ抽選会を迎えることになれば、日本とイランはポッド2に入ることになる。日本とすれば、現在のFIFAランキングを維持することが現実的な目標となるだろう。
そんなFIFAランキングとは別に、代表チームの強さをランク付けする指標がある。「イロレーティング(World Football Elo Ratings)」と呼ばれるもので、ハンガリー系アメリカ人の物理学者アルパド・エムリック・イロ氏が考案した計算式による。ここではイロレーティングとFIFAランキングの違いについて紹介する。

イロレーティングとは
イロレーティングは、元々はチェスのために作られ、チェスプレーヤーでもあったイロ氏が1960年にこの新しい計算式を開発した。米国チェス連盟で採用された後に、1970年に国際チェス連盟(FIDE)が正式に採用している。
この計算式が後にサッカーに応用された。FIFA非公認ながらも純粋にチームの実力が数値化され、そのチームの強さがより反映されていると評価されている。一部のファンや分析担当のアナリストは、FIFAランキングよりもこちらを重要視しているようだ。
FIFAランキングが重視する要素の大きさ順に「試合結果・その試合の重要度・対戦相手の強さ・大陸連盟間の強さ」から算出されているのに対し、イロレーティングは「勝利期待値・実際の結果・結果との差・“K値”と呼ばれる係数」によって求められる。
イロレーティングによれば、日本は現在FIFAランキングより1つ上の14位に位置。世界1位はFIFAランキングでは2位のスペインだ(2025年4月7日時点)。
- 1:スペイン(FIFAランク2位)
- 2:アルゼンチン(FIFAランク1位)
- 3:フランス(FIFAランク3位)
- 4:イングランド(FIFAランク4位)
- 5:ブラジル(FIFAランク5位)
- 6:ドイツ(FIFAランク10位)
- 6:ポルトガル(FIFAランク7位)
- 8:オランダ(FIFAランク6位)
- 9:コロンビア(FIFAランク14位)
- 10:ウルグアイ(FIFAランク13位)
- 11:イタリア(FIFAランク9位)
- 12:クロアチア(FIFAランク11位)
- 13:エクアドル(FIFAランク24位)
- 14:日本(FIFAランク15位)
- 15:デンマーク(FIFAランク21位)

試合ごとに即時更新のイロレーティング
イロレーティングとFIFAランキングの最も大きい違いは、その更新頻度である。
FIFAランキングは基本「月1度」の更新としているが、実際は2〜3か月に1度程度で、今回の更新も2024年12月19日以来となった。次回の更新は7月10日に予定されている。
一方、イロレーティングは試合ごとに即時に更新される。世界のどこかで国際Aマッチが開催されれば即、変動が起きる。そのため、最新の強さがすぐに反映される。
また、FIFAランキングでは過去4年間の国際親善試合やW杯本大会、大陸別大会などでポイントの重みが異なり、大陸間の強さの格差も考慮される。しかしイロレーティングでは基本的に試合結果とレーティング差が重要で、試合の種類による補正はK値で多少調整されるものの、最小限に留まる。
FIFAランキングが政治的・組織的な用途を意識し、公平性と透明性が重視される一方で、イロレーティングはあくまで“そのチームの強さ”によりフォーカスしていると言える。
2022年のカタールW杯直前、FIFAランキングで日本は24位だった。一方、イロレーティングでは20位だった。ドイツやスペインを破った後、イロレーティングでは15位にまで急上昇したが、FIFAランキングでは20位に留まった。
これはドイツとスペインを破ったものの、コスタリカに敗れたことで、ポイントが思ったほど上積みされなかったことが要因だった。FIFAランキングが過去4年間の安定した成績を重視し、親善試合やアジア勢同士の試合を軽く扱っているのに対し、イロレーティングはW杯での大番狂わせを即座に反映し、対戦相手の強さ(ドイツ、スペイン)が高ポイントに直結したのである。

双方のメリット、デメリット
1993年に導入され、2018年から「SUM式」と呼ばれる計算方法が採用されているFIFAランキング。日本は対戦相手の強さなどを全く勘案しない計算式だった1998年当時のFIFAランキングでは史上最高9位に入ったこともあるが、現行の計算式で1桁順位に入るには、欧州や南米強豪国との国際Aマッチを数多く組み、かつ勝利しなければならない。アジアではレベルの違いを見せ付けても、なかなかFIFAランキングに反映されないのは、ここに原因がある。
FIFAランキングのメリットとしては、長期的な視点で算出されていることで公平さが担保されていることだろう。一方、最新の調子が反映されにくく、計算が複雑過ぎる。
その点、イロレーティングはシンプルで、現在の強さが明確に示され、試合ごとの影響が分かりやすい。一方、安定性に欠け、短期的な調子の波に左右されやすい側面がある。
FIFAランキングが公式な基準としてW杯本大会のポッド分けに影響する以上、それに従うしかないのだが、イロレーティングは「チームの現在地」を知ることが出来る貴重な物差しとなっている。“どちらが正しいのか”という問いの答えとしては、使い方次第としか言いようがないが、日本代表の強さを多角的に見るなら両方参考にするのも面白いだろう。