見た目で判断するのはNG! 実は基礎体力もマインドも濃い目のスポーティ派 シトロエンC3【ベース車両一刀両断!!】

2020年4月8日(水)16時46分 AUTOSPORT web

 モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。


 今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第16回目シトロエンC3編をお届けする。近年のラリー界でも、独自路線を貫くC3。高性能グレードは存在しないが、その中身にはしっかりした濃いめのスポーティマインドが根付く1台だ。


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 この企画は「モータースポーツで活躍しているマシンのベース車両はどんなモノなのか?」を紹介するもの。


 過去15回、不定期に連載してきたが、これまではスポーティな高性能モデルばかりだった。しかし、今回は少し様相が違う。シトロエンC3には高性能版は存在せず、エンジンも1.2リッター3気筒ターボのみ。見た目はスモールSUVである。


 シトロエンというブランドは、プジョー・シトロエングループ(グループPSA)内にある。スタンダードがプジョー、上級がシトロエンという棲み分けだ。


 ただし、シトロエンは高級・高性能というわけではない。デザイン志向が強く、ユニークな存在として設定されている。


「なんだ、スポーティではないのか」という感情は理解できなくはない。しかし、オモチャのようにかわいくデザインされたクルマでも、ニッサンのキューブやジュークとは違い、C3の中身はホンモノなのだ。


 1.2リッターのダウンサイジングターボエンジンは、かなり元気だ。高回転は得意ではないが、その分低回転域でしっかりトルクを発生してくれる。

C3に搭載されるエンジンは、1.2リッター直列3気筒DOHCターボのみ。最高出力110ps、最大トルク205Nmと、カタログ上の数値は“普通”だが、その性能は国際的に高く評価されており、2015〜18年に4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザイヤーの1.0〜1.4リッター部門で最優秀賞に輝いている


 シリンダーの数は多ければ多いほど、基本的にはパワーバンドが広くなる。ただし、ダウンサイジングターボの最重要項目はターボラグの低減だ。


 基本構造として、気筒数が少ないほうがタービンまでの距離が短く、その点では有利になる。トルクを太くし、極低速からのドライバビリティを確保したほうが走りの質を高めることができる。ゆえに、C3のエンジンはドライバビリティが高い仕上がりになっており、スポーティな走りを実現しているのだ。


 前回取り上げたトヨタ・カローラスポーツ(1.2リッター直列4気筒ターボ)とは極めて対照的である。


■ キャラクターに合った程々のスポーティさと必要充分な実用性


 組み合わされるトランスミッションは6速ATのみ。スムーズでも洗練されているわけでもないが、とにかくエンジンのパワーを活かそうとする。


 エコ指向なクルマのように、あっという間にトップギヤという設定ではなく、低いギヤでホールドしようとする。そして、一度シフトアップすると、速度が下がっても簡単にはシフトダウンしない。欧州の古いAT車そのものだが、エンジンの特性とマッチしているし、明確にスロットルペダルを踏み込めばキックダウンは素早い。


 サスペンションはソフトな印象で、分かりやすく言えばフワッとしている。ただ、ダンピングはしっかりと効いていて、ロール剛性も充分にある。


 つまり、乗り心地がいい。ステアリングやペダルの操作にクルマ全体が反応してくれて、まさにクルマを操る形だ。

インテリアカラーはグレーとアーバンレッドの2種類を用意。アーバンレッドを選択すると、水平基調のダッシュボードに鮮やかな赤が差し色となり、かなりエネルギッシュな印象となる


 スポーティなクルマは大抵、ロール剛性が高く、ダンピングも強くて、姿勢変化が少ない。C3はそういうレベルにはないが、ステアリングとペダルを使って、スポーティに運転することを存分に楽しめる。姿勢変化は大きいが、ドライバーが制御しようと思えば、それもまた楽しみにつながる。


 普通に走らせていてもターボが効いてしまうため実燃費は良くはないし、元気のいい分だけエンジンの振動が強い。また、プラットフォームが古いのか、運動性能は高くない。


 それでも、斬新なデザインのコンパクトなボディは充分実用的で、荷室も最低限は確保されている。もちろん、リヤシートの乗員に乗り心地で文句を言われることもないはずだ。

必要十分な広さが確保されたC3のラゲッジルーム


 増殖し過ぎたミニのような、これ見よがしなデザインではなく、押しつけがましい雰囲気もない。


 モータースポーツのイメージは受け継いでない。しかし、基礎体力というか、体幹というか、あるいは愉しさというべきか……そういったスポーティな要素を、C3はしっかりと持っている。


 冷静に考えればホンダ・ヴェゼルRSのほうがほぼすべての面で優れているが、C3の持つ雰囲気を楽しめる方なら、充分に“スポーティ”を味わえる魅力的なコンパクトカーである。

ラリー界の最高峰であるWRC世界ラリー選手権に参戦していたシトロエンは、WRカーの規定が大幅に変更された2017年にC3 WRCを投入。C3 WRCとなってからはトヨタやヒュンダイなどの後塵を拝しているイメージもあるが、毎年しっかりと勝利を挙げた。


■シトロエン C3 主要諸元








































































































車体
車名型式ABA-B6HN01
全長×全幅×全高3995mm×1750mm×1495mm
ホイールベース2535mm
トレッド 前/後1480mm/1480mm
最低地上高160mm
車両重量1160kg
乗車定員5名
駆動方式FWD
トランスミッション6速AT
ステアリングラック&ピニオン/電動パワーステアリング
サスペンション前/後マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ 205/55R16
エンジン
型式HN01
形式直列3気筒DOHCターボ
排気量1199cc
内径×行程75.0mm×90.5mm
圧縮比10.5
最高出力81kW(110ps)/5500rpm
最大トルク205Nm/1500rpm
使用燃料プレミアムガソリン
タンク容量45L


auto sport 2019年11月1日号 No.1517より転載


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