HACHI-ICHI GR Supra GTが幸運舞い込み3位表彰台へ「今季浮上するきっかけになれば」

　4月16日、岡山国際サーキットで開催されたスーパーGT第1戦岡山の決勝レースは、2回のフルコースイエロー、3回のセーフティカー、さらに3回の赤旗と、不安定な天候のなかで近年まれにみる荒れた展開のレースとなった。そんななか、GT300クラスで3位を獲得したのは、佐藤公哉／三宅淳詞組HACHI-ICHI GR Supra GT。終盤まで11番手周辺を走っていたが、2回目の赤旗中断後のピットで、大ジャンプアップを果たしての表彰台となった。

　2022年はさまざまな出来事があり、なかなか浮上のきっかけをつかむことができなかったMax Racing。今季も佐藤と三宅のコンビを継続して臨んだチームに、荒れたレース展開の最後に大きな幸運が転がり込んでくることになった。

　序盤の強雨の後、急速に路面が乾く展開となっていた今回の第1戦では、ふたたび雨が降り出した直後の46周目、SUBARU BRZ R&D SPORTがコースアウトしてフルコースイエローが導入され、そのリスタート直後のクラッシュ発生によるセーフティカーラン、さらに近くの落雷により15時15分には赤旗中断となるが、そのタイミングではほとんどの車両がスリックを履いていた。予選12番手から佐藤がスタートドライバーを担当し、33周で三宅に交代した後、11番手前後を走っていたHACHI-ICHI GR Supra GTもこの時点でスリックだった。

　15時35分のリスタート後、セーフティカー先導のもと、各車は一斉にピットに殺到するが、ここでHACHI-ICHI GR Supra GTが一気に順位を上げた。その要因はピット位置だ。Max Racingのピットは最も最終コーナー寄りの3-Aにあった。つまり、ピットイン後ライバルに邪魔されることなく、停止位置に入ることができる場所だ。

　特にこの岡山はピットレーンが狭く、もし隣にピットイン車両がいた場合は斜め止めなどの作業が必要となり、必然的にタイムロスとなってしまう。実はこれまでも、岡山でのスーパーGTではこうしたピットに複数台が殺到する際、“隣に空きがあった”という理由で順位を上げるケースがいくつかあった。

「ピットロードで争っていたクルマがみんな渋滞にハマったんです。まわりは停止するくらいになっていましたから」というのは田中哲也監督。またドライブしていた三宅も「僕たちはピット位置がいちばん手前で、渋滞せずにピット作業を行うことができたんです。他のチームが自分たちのピットに戻る前に作業をすることができました」と振り返った。

　今回のHACHI-ICHI GR Supra GTのケースは、まさに“ラッキー”なのだが、田中監督は「ピット位置については、展開によっては逆に不運になるときもありますからね。終わってみたらあれが良かった、悪かったというのがありますし、スーパーGTはそういうところありますよ」という。

　そして、幸運を結果に結びつけるためには、それまでの過程が必要だ。「読めない展開のなかで、チームの皆さんがタイヤ交換を毎回ミスなく行ってくれたので、本当にチームのおかげだと思っています」と三宅は言う。

　今季、HACHI-ICHI GR Supra GTには笠井昭則エンジニアが加わり、4月15日の公式練習では、佐藤の気づきからスプリング交換を実施。これが奏功し、Q1では僅差のなかで突破を果たした。「そこから流れを作ることができました。チームのみんなの頑張りが繋がったと思います」と田中監督は振り返った。

　幸運を活かし、展開を味方につけるためには、その時にそれに相応しい場所にいることが必要だ。今回のHACHI-ICHI GR Supra GTは、その鉄則によりチャンスをつかんだ。「まだやることはたくさんありますが、昨年苦しかった分、今年は上向きの方向にきていると思います。こうしてラッキーで表彰台に上がれる位置につけられています」というのは佐藤だ。

「コンディションが難しいなかでチームがうまく作戦を立ててくれましたし、ミスなくいけたことが今回の結果に繋がったのではないでしょうか」

　佐藤の言葉にもあったとおり、2022年のMax Racingは流れにはまったく乗ることができていなかった。しかし今回、チーム一丸となって臨んだ頑張りが、表彰台というプレゼントをもたらしてくれた。「昨年は苦しかったですが、浮上するきっかけになって欲しいですね」と田中監督は、この表彰台が良い流れのきっかけになって欲しいと期待を込めた。