「他喜力」を発揮し始めた楽天・宗山 本塁打に笑顔なしはイチロースタイル
2025年4月17日(木)10時24分 スポーツニッポン
楽天のルーキー・宗山塁に待望のプロ1号が飛び出した。16日に行われたソフトバンク戦で上沢の変化球を右翼席に先制アーチ。ベースを一周する映像を見ながら「変わってないなあ」と思わず明大時代を思い出した。
大学では通算10本塁打に加え決勝打も数多く打っているが、ニコリともしないのが宗山流。プロ1号にも淡々とベースを回り、ベンチに戻ってからチームメートの祝福に少しほほ笑んだだけだった。
根底にあるのは09年のWBC決勝・韓国戦でイチロー氏が放った中前への決勝打。二塁ベース上でも笑顔すらなく、厳しい表情のままだった。この映像を見た宗山は「イチローさんってこのくらいのヒットじゃ喜ばないんだ」と感動したという。4年秋のリーグ戦ではチームメートから「喜んで」のリクエストで「ベンチが盛り上がるなら」と適時打に右手を挙げる仕草を見せたが、それも控えめだった。
15日の同カードの3打席目。モイネロから放った右飛がいい形だった。角度がもう少し上がっていればスタンドまで届いていたかもしれない。左投手から初安打を放ったのも気分的に楽になったようだ。
母校・広陵にはユニークな習慣がある。12月の末、大学で野球を続けるOBたちが母校の寮に2泊3日で寝泊まりし後輩たちと練習するのだ。
3年の時は現在西武で活躍(ケガで欠場中)し、「意識する男」という渡部聖弥と同室だった。このとき、恩師の中井哲之監督から授かった言葉が「他喜力」の三文字だった。宗山が活躍することで応援してくれる人が喜んでくれる。チームは最下位とスタートダッシュに失敗したが、宗山が打ち、守ることでファンが歓声をあげる。その回数が多くなればチームの成績も上がってくる。現在打率・263と苦しんでいるが対戦投手は初見ばかり。一回りしてデータも集まってくる。気温が上がると同時に宗山のバットも上昇曲線を描いてくるはずだ。
(落合 紳哉)