北米が誇る“レジェンド”ことトニー・スチュワートが最高峰トップフューエル部門で初優勝/NHRA

　北米モータースポーツ界を代表する“殿堂入り男”ことトニー・スチュワートが、その栄誉のリストに新たな勲章を付け加えることに。ラスベガス・モーター・スピードウェイで開催されたアメリカ最高峰NHRA（National Hot Rod Association／全米ホットロッド協会）の第4戦『the 25th NHRA 4-Wide Nationals（第25回NHRAフォーワイド・ナショナルズ）』にて、現チャンピオンのアントロン・ブラウン、ジャスミン・サリナス、ジャスティン・アシュリーを含む4人を撃破し、トップフューエル部門昇格以降で待望の自身初勝利を飾っている。

　2022年終盤よりアメリカ最高峰NHRAに殴り込みを掛け、今季も『NHRA Mission Foods Drag Racing Series』にて、最高出力1万1000PSを超える最上位クラス“Top Fuel dragsters（トップフューエル・ドラッグスター）”を操るレーシング界のレジェンドだが、参戦最終年の2023年もタイトル争いを展開した妻リア・プルーエットが「家庭を築くことに専念する」ため第一線から退くことを決め、そこまで“Top Alcohol Dragster（トップアルコール・ドラッグスター）”に挑戦していたスチュワート自身が、そのシートを引き継いでの最高峰カテゴリー昇格を果たしていた。

　NASCARカップシリーズでは“3冠”を獲得し、IRL（インディ・レーシングリーグ）の元チャンピオンで『インディアナポリス500』も制覇しているスチュワートは、昨季2024年にもNHRAルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。トップフューエル2年目となる今季も、約2週間前にポモナで行われた第3戦で最終ラウンドに進出していた。

　続くこのラスベガスの週末でも、自らの率いるトニー・スチュワート・レーシング（TSR）の『Rayce Rudeen Foundation Dodge//SRT dragster（レイス・ルディーン・ファンデーション・ダッジ//SRTドラッグスター）』を走らせたスチュワートは、ファイナルに進出すると3.870秒、時速317.42マイル（約510.4km／h）を記録。王者ブラウンをフィニッシュラインで抑え込み、トップフューエルで待望の自身初優勝を手にした。

「信じられない。NHRAに参入してまだそれほど長くは経っていないし、このシリーズでレースに勝つには長い時間がかかることは分かっていた。でも、これまでのキャリアで、レースに勝つまで1年以上待たされたことは一度もないんだ（笑）。いつも1年目には複数は勝てるようになっていたから、今回の勝利には本当に感謝している」と、自身のキャリアに栄光の新たな1ページを加えたスチュワート。

「（昇格初年度の）昨季は本当にストレスフルだった。その前年度は（妻の）リア（・プルーエット）が世界選手権を制覇する目前まで行ったのに、私がマシンに乗るとスタンドの観客は私のせいでマシンがダメになったと勘違いした。調整が下手だったわけではなく、ただ単に組み合わせが違っていたんだ」と苦心のトップフューエル初年度を振り返ったスチュワート。

「私の体重はさまざまな要因で変化し、チューブもルール変更で変化したが、それでも昨年は成長できる軌道に乗れなかったのは本当に悔しかった」

　しかし今季のチームはシーズン序盤から好調なパフォーマンスを見せ、ラスベガスでは予選5番手、そして最初の2回のクウォーターをホールショットで制するなど、さらに好調を維持した。

「今は実感が湧かないかもしれないが、リアが息子のドムを連れてステージに上がったときの感動は、想像もできないほどだった。リアが息子を連れて階段を上がってくるのを見たとき、心臓が止まりそうだったよ。それは人生で一度も感じたことのない感情だった。今夜、横になって枕に頭を置くとき、きっとその瞬間を一番深く思い出すだろうね」

　人気のFunny Car（ファニーカー）部門では、TSR配下のマット・ヘイガンは惜しくもファイナルで敗れ“ダブル優勝”はならず。チャンピオンのオースティン・プロックが勝利を挙げ、Pro Stock（プロストック）部門ではダラス・グレンが今季2勝目を飾っている。