4軍からの逆襲「手の皮がズルむけに」努力の末に放った代打サヨナラ打 立大の苦労人が“大暴投”の神宮で輝く
2025年4月19日(土)17時24分 スポーツ報知
4軍からはい上がり、サヨナラの内野安打を放った立大・野村陸翔外野手は木村泰雄監督とガッツポーズ(カメラ・加藤弘士)
◆東京六大学野球春季リーグ戦第2週第1日▽立大2x—1法大(19日・神宮)
立大が法大との接戦をサヨナラで制し、先勝した。同点の9回2死満塁、代打の野村陸翔外野手(4年=立教池袋)が間一髪の三塁内野安打で劇勝。法大側はビデオ検証を求めたが、判定は覆らなかった。
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全ての力を振り絞り、野村は一塁へ走った。頭から突っ込む。判定はセーフだ。法大側はビデオ検証を求め、1分間の協議が行われたが、ジャッジは変わらず。苦労人の一打と全力疾走でもぎ取った白星。ナインの祝福に、最高の笑顔を見せた。
「自分はこのシーズンが初のリーグ戦。勝ちに貢献できて、すごくうれしいです。セーフという確信があったので、楽しみにしながら見ていました」
出番は最後の最後に訪れた。「お前ならできる!」。仲間の声に後押しされ、しびれる打席に向かった。2ストライクからの3球目、見逃せばボールの外角高め直球を捉えた。「やべえ、と。とにかくセーフになりたくて、無我夢中で走りました」。宝仙学園小1年で野球を始めてから、大学1年までずっと投手。ヘッドスライディングは御法度だった。「小中高大でヘッドスライディングは初めてです」。汚れたユニホームに、胸を張った。
小学時代に神宮球場で東京六大学野球を観戦。「RIKKIO」のユニホームに憧れ、中学受験を経て難関を突破。立教中に入学した。中3の春は軟式の東京都大会で優勝投手になった。そのおかげで夏の西東京大会決勝、始球式のマウンドに立ったが、捕手も捕れないほどの大暴投。「いつか神宮でリベンジしたい」と胸に秘めていた。最高の形で、15歳の自分に落とし前をつけた。
立大には投手として入学。しかし同期には小畠一心、竹中勇登、吉野蓮と強豪校出身の右腕がそろっていた。「自分が生き残る道は野手しかない」と1年の冬に野手転向。「手の皮がズルむけになりながらやっていました。D軍(4軍)からずっと上がれずに、苦しんでいた時期もありました」。流した汗はウソをつかなかった。
「左対左」にもかかわらず、野村を代打で起用した木村泰雄監督(64)は「野村で決めてもらおうと思いました。本人の努力のたまものです」と目を細めた。「リーグ戦に出られて、本当にうれしい」と野村。狙うは2017年春以来の天皇杯奪回。苦労人の一打から、セントポールの逆襲が始まる。(加藤 弘士)