【F1第5戦予選の要点】自らを「愚か者」と罵ったノリスのクラッシュ。ピアストリの存在感が与える心理的影響
2025年4月20日(日)5時9分 AUTOSPORT web

「愚か者だよ……」と、ランド・ノリス(マクラーレン)は2025年F1第5戦サウジアラビアGPの予選Q3でクラッシュを喫した直後、そう口に出して自分自身を責めた。
予選Q3、真っ先にアタックに入ったチームメイトのオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が、1分27秒560でその時点での最速タイムを叩き出した。続けてノリスもアタックを開始する。しかし、ノリスはターン5の縁石にわずかに乗り過ぎ、コントロールを失ってウォールにマシン左側からクラッシュしてしまう。
「大丈夫か?!」と気遣う担当エンジニアのウィル・ジョゼフの無線に「まったく問題ない」と答えたノリス。続けて「愚か者だよ……」と自身を評した口調は、暗く沈んで聞こえた。
これでノリスは予選10番手に沈むことになった。初日フリー走行2回目(FP2)、予選直前のFP3と続けて首位に立ち、予選Q2でもトップタイムを叩き出していた流れが、完全に断ち切られたクラッシュだった。
実はノリス、ここサウジアラビアでピアストリに予選、レースを通じて、一度も勝てたことがない。そして今季は開幕戦以来ポールポジションから遠ざかっている。対照的にピアストリは今季2回ポールポジションを獲得し、特に前戦バーレーンGPでは圧倒的なポール・トゥ・ウィンをやってのけた。
ドライバーズランキングではまだノリスがかろうじて首位を守っているものの、前戦の勝利でランキング2位に上がったピアストリには3ポイント差まで迫られている。
今回のクラッシュは、おそらく些細なドライビングミスだった。しかしピアストリという調子を上げているチームメイトの存在も、ノリスのメンタルに対し無関係だったとは思えない。2023年のF1デビュー以来瞬く間に進化し、自らのタイトル獲得の最大の障壁となったピアストリの存在は、この週末もずっとノリスの意識下にあるはずだ。
2024年のノリスは決勝で繰り返しスタートを失敗し、メンタルの弱さを指摘された。ノリス自身「スタート前はすごく緊張してしまう」と、弱さをさらけ出すような発言をしていた。自分が世界で一番運転が上手いと信じているF1ドライバーたちのなかでは、かなり珍しい部類に入るだろう。
それでも2025年シーズンを迎えると、スタートで出遅れるミスもなく、タイトル獲得への意欲も堂々と語るようになった。しかし一方でノリスのトレードマークというべき無邪気な笑顔は、消えてしまった気がする。
日曜日の決勝レースで、愚か者と罵った自分からどこまで立ち直れるか。それがノリスのタイトル争いの今後を左右するひとつのターニングポイントとなるかもしれない。