直前にまさかのヒヤリ。危機乗り越え完勝の水野涼「レース後にスペアカーだと聞いた」/全日本ロードもてぎ2&4 JSB1000

　4月20日、2025年MFJ全日本ロード選手シリーズ 第1戦もてぎ2＆4レースでJSB1000クラスの決勝が栃木県・モビリティリゾートもてぎで行われた。決勝を前にあるトラブルが発生する危機的状況に見舞われるも、見事ポール・トゥ・ウインを収めた水野涼（DUCATI Team KAGAYAMA）が決勝後の会見でその時の状況を説明した。

　ドゥカティ参戦初年度となった2024年第5戦もてぎ2&4にて、水野がポール・トゥ・ウインで海外車両初優勝を飾った地、モビリティリゾートもてぎで迎えた2025年シーズンの開幕戦。得意としているサーキットなだけに、事前に行われたテストおよび金曜日のフリー走行でも首位につける好走を披露していた。

　さらに土曜日に行われた予選でも1分46秒807と圧倒的なタイムを叩き出し、2年連続のポールポジションを獲得するなど順調に進んでいたかとも思われたが、決勝レースを前にまさかの事態に見舞われてしまった。グリッドに向けてサイティングラップに出走しようと水野がマシンに跨ると、首を振る様子が映し出され、すぐさまピットにマシンを戻してしまったのだ。

　早々にメカニックたちが修理に取り掛かるも、ポールポジションのグリッドにはマシンが不在。水野は静かにグリッドで修復を待つことに。その時の状況を次のように説明した。

「クラッチを離したのですが、クラッチが切り切ったような状態になっていました。勝手に離してもバイクが進まないような状況でした。びっくりの方が大きかったですが、サイティングラップに参加しなくてもグリッドにつけることを知っていたので、そんなに焦ってはいませんでいた」

　ピリピリとした緊張感も漂うなかで彼の元にはマシンが運ばれ、なんとかスタートには間に合うことができた。そして、運ばれてきたマシンで臨んだ決勝レースではスタートでやや出遅れるも、わずか3周目でトップに浮上。みるみるうちに後続を引き離し、独走状態で見事ポール・トゥ・ウインを飾ったが、レース中にはある違和感を感じていたという。

「レースが終わってからTカー（スペアカー）だったと聞きました。本当はクラッチを変えるみたいな話を聞いてたんですけど、違うTカーが来ていたみたいです。メインカーとTカーというわけではありませんが、走り始めてからそれほどフィーリングが良くなく、グリップが悪く感じたので、なんでこんなにペース上げられないのかなと思いながら走っていました」

「結構最後まで気を引けなくて、普通にコントロールしても最終ラップあたりまで止まりきれない場面がありました。コントロールしているつもりでもリスクがあったので、最後立ち上がるまで気は抜けなかったです。それぐらいちょっとスリッピーで難しかったです。でも、やっぱり嬉しかったですね、ドゥカティの初優勝もここ（もてぎ）なので嬉しかったです」

　2輪ではメインカーとスペカーの2台が用意されており、ウイーク中はその2台を使用することできるが、比較的好調な方をメインカーとしているチームがほとんどだ。ただ、万が一の事態に備えて、全く同じセッティングにしているものの、同じ車両とはいえフィーリングの違いなどはあるようだ。

「この週末には何回か乗っています。うちは毎回両方に乗っていましたし、Tカー扱いではなく1号車、2号車という感じですね。今回みたいに何かあっても乗り換えられるように両方全く同じ（仕様）にしています。本当にちょっとした構図上の癖があるくらいなので、レース中でも割とすぐに乗り換えられたのかなと思っています」

　スペアカーとはいえ、この週末に入念に確認をしていたこと、迅速に対応したDUCATI Team KAGAYAMAのチーム力、そして決勝中に違和感を覚えながらも最後まで慎重に走り進めた水野、全ての力が合わさって導かれた結果と言えるだろう。昨年よりもさらに強くなった彼らの姿が見えた一戦となった。

　2025年シーズンはまだ始まったばかり。危機を乗り越えて勝利を掴んだ彼らが、今季もどのようにライバル勢を圧倒していくのかに注目したいところだ。