巨人の3軍チーフトレーナーから選手たちに伝えられるもの
2025年4月22日(火)16時0分 スポーツ報知
阿部慎之助監督(左)と村田修一コーチ
◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
人から人へ—。多くのツールから学びを得られる現代だが、直接の対話こそ、より長く記憶に刻まれるとも感じる。球界でも監督、コーチ、時には裏方からも選手へ紡がれるモノがあるだろう。06年に巨人に入り、今年で20年目の根津朋将3軍チーフトレーナー(46)に問うと、こんな言葉が返ってきた。
「3軍の選手の治療がメインですが、1軍の選手たちの体に対する意識や強さを若い選手にも伝えたいなというのはすごく強いです」
長い間1軍を、昨年からは3軍を担当。坂本ら第一線で長く働く選手を見続けたことで、7〜8年前に「伝える」役割への考えが変わった。「長くやる選手は自分の体に対するセンサーがすごい。だから(故障などが)大ごとになる前に済ませられる。そういうのを伝えていかないといけないと思いました」と語る。
肩肘の故障のリスクを持つ投手は例外だが、3軍野手には現役時代の阿部監督ら「すごく痛みに強い」選手の屈強さを伝えている。印象に残る選手の一人は、村田修一(現DeNA野手コーチ)。欠場すれば、定位置を奪われる可能性もある。だから「『意地でも出るんだ』と。若い選手にも『簡単に打席をあげるようなことはしない方がいいんじゃない?』と話をしています」と心身の成長を促す。
G球場のトレーナー室には、「選手を教育する」など「トレーナー」の語源が記されたポスターが貼ってある。昨年、桑田2軍監督が「馬車」に由来する「コーチ」の語源を紹介したことをきっかけに、役割を再認識したからだった。「一人でも多く1軍に行って、試合に出続けられたらいいなと思います」。周囲の言葉が、人生を変える大きな財産になるかもしれない。
◆田中 哲(たなか・てつ)2020年入社。楽天、日本ハムを経て23年から巨人担当。