前橋育英が黙ってない!夏に「ストップ・ザ・健大高崎」を誓う名将・荒井監督 昨夏は「奇跡的」名勝負
2025年4月26日(土)20時55分 スポーツニッポン
◇春季高校野球群馬県大会準々決勝 前橋育英9—3 前橋商(2025年4月26日 高崎城南)
前橋育英が9—3の逆転勝利で前橋商を下し、準決勝に駒を進めた。1点を追う7回に一挙7得点のビッグイニングで試合を決めた。13年夏の甲子園で日本一となった名将・荒井直樹監督は前橋育英らしい終盤の粘りを見せたナインを称えた。
「苦しい展開だったんですけど、何とか我慢できた。試合はいろいろなことが起きる。何でも想定内で、目の前のことを全力でやろうっていう話をした。(逆転勝利につながる)焦らない雰囲気があったと思います」
夏の甲子園に出場するために、群馬の高校には避けられない、高い、高い、壁がある。3季連続甲子園出場中で2回は4強以上と圧倒的な強さを誇っている健大高崎だ。その宿敵と次戦の準決勝で激突する。ただ、春はいくら勝っても甲子園につながらない。夏に“本番”を控える状況で、指揮官に苦手意識はみじんもない。昨夏の準決勝が荒井監督の脳裏に刻まれている。
2024年7月25日。甲子園まで残り2勝の準決勝は8—2と健大高崎が大きくリードして9回に突入した。記者席の誰もが「健大高崎が前橋育英を圧倒」の見出しが浮かんだ。9回、前橋育英の攻撃。OB・外丸東真(現慶大主将)が球場で見守る中、後輩たちは意地と真価を見せた。
止まらない猛攻。前橋育英は一挙6得点で8—8の同点に追いついた。それでも延長10回のタイブレークで奪った1点のリードを健大高崎の逸材左腕・佐藤龍月が守り、8—9で敗戦した。ただ、「群馬の夏に前橋育英あり」と球場にいた誰もが胸に刻んだ。指揮官は昨夏の伝説的試合を回想する。
「ちょっと奇跡的でしたよね。もう勝つと思っていましたが、簡単にはいかない。ですが、その試合でただで終わらなかったという意味では大きい。僕も今まで野球をやってきた中であんな試合は初めて。もうベンチで見守るというか本当に凄い、コイツら凄いなって…」
戦力的には健大高崎が圧倒的だった。それでも、荒井監督は信頼して指導してきたナインたちの底力を知った。
昨秋の群馬県大会では健大高崎に7回コールド負け。そこから「石垣、下重を打ち崩す」と努力してきた選手たちの姿を知っている。夏にナインが発揮する勝負強さを知っている。だから荒井監督は「ストップ・ザ・健大高崎」を誓える。この夏も前橋育英が黙ってない。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
◇荒井直樹(あらい・なおき)1964年(昭39)8月16日、神奈川県横浜市生まれの60歳。日大藤沢(神奈川)では投手を務め、3年夏の神奈川大会で、2試合連続ノーヒットノーランを達成した。卒業後にいすゞ自動車で投手を3年間務めた後、野手に転向。13年間プレーし、7度都市対抗野球に出場した。その後、日大藤沢で監督を3年間務め、99年に前橋育英のコーチに就任。02年から同校監督を務め、高橋光成(現西武)を擁した13年夏には全国制覇を果たした。