阪神・伊藤稜 3年近い苦難を乗り越え奮闘 変化球磨き目標の支配下へ「今は充実している」
2025年4月29日(火)5時15分 スポーツニッポン
【2軍リポート 大物から大物へ。若トラ駆ケル】
兵庫県尼崎市に開業した新ファーム施設から、1軍を目指す若虎へスポットを当てる新企画「2軍リポート 大物(だいもつ)から大物(おおもの)へ。若トラ駆ケル」がスタート。3、4月度は、故障を乗り越えた4年目・伊藤稜投手(25)とルーキー・嶋村麟士朗捕手(21)の両育成選手を取り上げる。
ためらいなく左腕を振れる。白球を奪われた3年近い苦難の月日を思えば、存分に野球へ打ち込めることは伊藤稜にとって何よりの幸せだ。今春の沖縄キャンプでは藤川監督にも高評価を受けた25歳。現在、ファームの先発として奮闘する。
「数字自体は悪いが、投げている球では良い球も出てきている」
ウエスタン・リーグでは5試合に登板して2勝3敗、防御率3・80。直近では、22日オリックス戦で5回3安打無失点。首脳陣の期待に応え、着実にステップを踏んでいる。だが、まだ育成の立場。当面の目標となる支配下登録へ、随所にさらなるレベルアップが必要だと自認している。
「投げられている分、登板後のフィードバックを練習に生かせている。直球をコースに投げ切り、変化球で空振りが取れれば、もっと数字もついてくる」
21年育成1位で入団後、左肩痛を発症。24年6月に打撃練習で登板するまで、マウンドからは遠ざかった。リハビリ組を外れたのは、3カ月後の同年9月。来る日も来る日も走るしかなかった頃と比べれば「今は充実している」と汗を拭う。
愛知県豊明市出身。名古屋や静岡で登板する際は、家族も観戦に訪れる。「リハビリ中は親も野球に触れてこなかった。僕がキツいのを分かっていて、気遣ってくれていたのかな…」。家族だけじゃない。「投げないときにずっと応援してくれるファンもいた」とこうべを垂れる。恩は快投でしか返せない。全力で2桁背番号をつかみ、夢舞台に立つ瞬間まで走り続ける。(八木 勇磨)
◇伊藤 稜(いとう・りょう)1999年(平11)11月8日生まれ、愛知県出身の25歳。中京大中京から中京大を経て21年育成ドラフト1位で阪神入り。2軍通算12試合で2勝4敗、防御率6・18。1メートル78、85キロ。左投げ左打ち。